妥協
だから僕はだんまりを決めていたのに。
「あなたもこの際だから言いたいこといえば?」なんてそそのかすもんだから、余計なこと言っちゃったじゃないか。
僕は理不尽男に対して明確に敵意を持つようになっていた。
どう考えたって、彼のほうがおかしい。
打開策を見いだせないまま今日の会議を迎えた。今日も理不尽に責められるに違いない。
課題報告をする今日の会合。僕はもちろん宿題を終えている。しかし、理不尽男は宿題を終えた様子はない。そして、彼はやらなかった理由を僕のせいにする。
僕はそれでもだんまりを決めていた。口を開けば、暴走してしまうことはわかっていたから。僕はギリギリの状態なのだ。
「あなたもこの際だから言いたいこと言えば?」
僕はその一言を待っていたように不満をぶちまけた。
「僕はあなたの態度が許せない。あなたのせいで現状は無茶苦茶だ!」
こういうときに限ってしおらしい顔をしていやがる。
言いたいことを言ってすっきりした僕は、あとできちんとあやまろうと思った。
過去にも何度か同じようなことをやらかしたことがある。そんなときはちっぽけなプライドなど捨て、とりあえず謝るようにしていた。
「いやいや、こちらこそ少し言い過ぎた」と譲歩してきて、それ以降はスムーズに事が運ぶことを僕は知っていたから。
しかし、今回の相手は違った。
「さっきのがお前の本音だろ」
僕とは一切目を合わせようとせず、いつもの口調で彼はそう言い放ったのだ。
「やはりこの人とは無理だ」と思った。本音で話をすることができない相手。弱さを見せれば、ここぞとばかりに牙を向いてくる相手。
もう僕は遠慮をしない。とことんまで戦ってやる。
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