おじさんのガン
久しぶりに出張となった。出張先は地元。とったホテルのすぐ近くが親戚のうちなもんだから、ご挨拶に行った。
「おじさんね、今、大変なのよ」
おばさんはそういった。ガンで通院治療をしているらしい。おじさんは通院のため、今は留守。僕は元上司と打ち合わせをする予定があったので、挨拶だけしてその場を去った。
「また、あとで」
僕の母親もガンで亡くなった。親戚のおばさんもガンでなくなった。そういえば90歳近くまで生きたおばあちゃんも最後はガンじゃなかったっけ?
僕は元上司との打ち合わせを終え、再び親戚の家を訪れた。
「やあ、いらっしゃい」
誰だかわからなかった。かっぷくのよかったダンディなイメージのあったおじさん。僕の目の前にいるひとりの老人。
戸惑っちゃいけない。驚いた表情を見せてはいけない。そう思えば思うほど、言葉は出てこなかった。そんな僕の心境などおじさんはお見通しだっただろう。
さいわいにも自力で通院できているようだし、副作用も出てないらしい。僕の母は副作用が酷かった。
病気というのはいろんなことを考えさせられます。現に僕がそう。こうやって、この思いを記しているのだから。
ぱっと見は変わっても、目だけは変わることないですね。目を見て「あ、おじさんだ」って思いましたから。
目の表情はそのひとそのものです。いい生き方をしているとか自分勝手な行き方をしているとか、すべて目に出ますね。
さて、僕はどうだろうか。
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