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手しごとのはなし①a.e.(エードットイードット)さん【キルト・籐編み作家/長野県松本市】

こんにちは!雑貨屋 あるくらし 店主の絢音です。
雑貨屋 あるくらし は、現在実店舗を持たず、イベント出店やオンラインストアを期間限定でスタートしはじめました。
こちらのnoteでは、お店の歩みを記録中です!
(雑貨屋 あるくらし についてご興味のある方は、マガジン「雑貨屋 あるくらし を開くまで」にまとめておりますので、良ければそちらをご覧ください!)

手しごとのはなしって?

雑貨屋 あるくらし で取り扱いをさせていただく作家さんに取材し、
作品や作家さんにまつわる、ひとつひとつのとある物語をお伺いします。

初回は、キルト/籐編み作家のa.e.(エードットイードット)さんについてのお話です。

私が初めてa.e.(エードットイードット)さんの作品を手にしたのは、オーダーで作っていただいたウェディングの衣装でした。(その時の話は、良ければこちらをご覧ください。)

あるようで、ないような、シンプルだけど遊び心のあるデザインが素敵です。

彼女が作る、シンプルな中にも思わず微笑んでしまうような遊び心が入った作品が好きで、「いつか雑貨屋さんを始めたら商品を取り扱わせてほしいです!」とお話をしていて、今回、初めてのイベント開催を機に、お取り扱いをさせていただくことになりました。

a.e.(エードットイードット)さんのプロフィール
1995年 和歌山県生まれ。大学にてファッションデザインを学ぶ。卒業後は園芸店のECサイト運営、転職後はWebサイト等のディレクションの仕事を経験し、2021年に長野県松本市に移住し制作を始める。
a.e.は、「almost everywhere」のこと。無くてもいいけど、「あったほうがごきげんにいきていけるもの」をコンセプトに、どこにでもあるような、ないようなアート雑貨を制作する。代表作はキルトのラグや籐編みのインテリア雑貨。(Instagramはこちら

a.e.さんのはなし

ー大学では、ファッションデザインを勉強されていたとのことですが、どういった経緯で大学を選択されたんでしょうか?ー

a.e.さん:小学生の頃は毎週工作教室に通っていたり、作る事が好きではありましたが、ずっと芸術系の学校を目指していたという訳ではありませんでした。高校生の時、特に「これがしたい!」と思う事が無くて、これからの進路をどうしようかと考えて学校案内を見ていく中で、一番にときめいたのがファッション関係の専門学校や芸術大学でした。当時田舎で暮らす高校生だった自分が、一番身近でイメージが湧きやすく、好きだと感じるモノがファッションだったという事が大きかったです。

ーそうだったんですね。迷ったときに、ときめきを大事に判断されたんですね。とても面白い視点です!それでは、大学ではどのようなことを勉強されたり、経験されたのでしょうか?ー

a.e.さん:1年生の頃は基礎的な授業が多く、基本的なシャツを作ったり、自分の世界観を表現するZINEを作ったりしていましたが、この頃はまだ、自分が何を好きなのか、はっきりと分からず、作る楽しさもあまり感じられていなかったんです。
ですが、自分の学科以外の生徒と一緒に授業以外のプロジェクトに参加して、実際にアパレル店舗のディスプレイを企画したり、集団でいろんな角度からアイデアを出してモノを作っていくと、段々と自分がどういうモノが好きなのかが分かってきて、作っていく事が楽しいと感じはじめました。
大学時代は、ある地方のカフェで案をだして、学生の仲間と数日お試し営業をさせていただいたり。お土産を考案して実際に地方で販売していただいたり。チェコのポスターの展示を見たことがきっかけで、チェコに興味を持ち、語学研修に行きました。当時、絵本にもはまっていて、チェコの古書店や本屋さん巡りもしていたなぁ。

ーちなみに、作る楽しさがだんだんと分かりはじめた頃、どんなモノが好きだな、表現したいな、と感じはじめたのでしょうか?ー

a.e.さん:日常で起こるちょっとした幸せや景色を抽出して、立体物に仕上げていく事が好きなんだと思いました。
そういえば、少人数でブランドを制作する授業があって、日常に起こる通常“ダサい”と思われる事をファッションに落とし込んで、見方が変われば長所に見える、というような表現を経験したり、日常の何気ない出来事に対して、ちょっと視点を変えたり、自分の気持ち次第で、世界の見え方が変わる。生活に必要ないと思えるモノが、実は生活をより豊かにしてくれている。という事が自分の中で大切なテーマに感じていたな、と振り返って思います。
大学時代の後半からは、アイデアを形に落とし込んで、誰かに共有する事の楽しさにはまっていきました。作品を発表する事も、ワクワクと楽しかったです。

ー大学時代を通して、次第に作ることにのめり込んでいかれたんですね。卒業後は、園芸の会社に勤められて、その後、webサイトのディレクション等の職種に転職されたんですね。それはどういった経緯があったのでしょうか?ー

a.e.さん:就職活動の時も、絶対にこれがしたい!という事はまだ定まっていなくて。ただ、人とのつながりで仕事がしたいなぁと考えていて、大きな会社に面接に行く、という事はせず、知人の紹介でご縁があった園芸店に入社しました。そこでは、ECサイトの運営を中心に仕事を行っていましたが、バナーやチラシの制作等も任せていただけた事は良い経験でした。
大学時代は京都に住んでいたのですが、就職を機に、別の県に移り住んで暮らしていた所、自分にとって京都がとても住みやすい街だったと気づき、戻りたいという気持ちが湧いてきました。そこで、2社目は、京都の会社で転職活動を行って、webサイトのディレクション等を行う企業に就職しました。

ーそういった経緯があったんですね。京都がa.e.さんにとって住みやすい街だったんですね。2社目の会社ではどのような事を経験されていたのでしょうか。ー

a.e.さん:2社目の会社を選んだ時、webサイトのディレクションやイベント企画、商品開発等、挑戦できる業務が多かったことも魅力的だったのですが、企画力や提案力を鍛えていきたいなとも思っていました。
実は、言葉で自分の考えや思いを伝えて相手に納得してもらう事に苦手意識があり、密に、今後モノづくりをしたときに、自分の言葉で作品の魅力を伝えていけるようにしたいなぁと頭の中で考えてもいました。
有難い事にこれまでの経験が活かしつつ、大学や和菓子屋さんのwebサイトの企画を行ったり、地方のお土産制作の他、パンフレットの制作やトークイベントの企画も経験させていただけました。

ー「モノづくりをするまでには、どんな経験が必要なんだろう?」という視点が、ずっと頭の中にあったんですね。それでは、企業に勤められてから、モノづくりをスタートされるまでのお話を、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?ー

a.e.さん:ずっとモノづくりをしたいと思っていましたが、モノづくりをスタートさせようと思ったのは、企業で仕事をしている時の自分に対して、違和感を感じ始めた事がきっかけかもしれません。
勤めていた頃、クライアント様の悩みを解決するために何かしらの
「答え」を導き出し提案していましたが、
「なぜ、そのような答えを導いたのか」という理由をお伝えして納得していただけるよう商談を進めていると、
感覚や直観的といった、言葉では説明し難い、心を打つダイレクトな魅力が後回しになっているような感覚に、少しずつ違和感を感じるようになりました。
もちろん、問題や目的に沿うデザインや提案をすることは重要ですし、私自身、仕事をする上で大切にしている部分でもありました。
そんな時、O' Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)さんの作品を一目見た時に、心がグッと惹きつけられました。見る人に解釈がゆだねられているような、直観的で自由な作品の魅力に感動し、こういった理由のない、直観的に「良い」と思えるモノづくりが好きだった事を思い出して、こういうモノを作りたいという気持ちが強くなりました。

a.e.さん:この作品を見たときマリアさまよのうな神秘的なものに見え、
このような、見る人によって連想するものが変わるものを作りたい、と思いました。

そういった出来事が重なって、今後自分がしたい事、続けていきたい事を考えていたある日、
企画や提案の仕事に対して、「私ではない人がもっと上手くできる。」と吹っ切れたんです。
ディレクションの業務が、各分野に長けた方に仕事を依頼して企画を形にしていく内容で、いろんな方の“得意”を活かしていくにはどうすればいいのかという事を考えていました。
そうすると次第に、自分が苦手意識をもっていた企画や提案のスキルを克服して、自分自身が上手く仕事を進めていくのではなく、得意な方にお願いして、自分が一番挑戦したい、好きだなと思い続けていたモノづくりをスタートさせてもいいんじゃないか、と決心ができたんです。
そこから、直観的に「良い」と感じるモノや、見る人に解釈がゆだねられているようなアート雑貨を制作していこうと、方針を決め、現在制作をしています。そう方針を決めた時、夫と自分たちが暮らしやすいと思える場所を探す旅に出て、現在は居心地が良いと直感的に感じた松本に移住しました。

ーなるほど。モノづくりではない道に進んだからこそ、今後ご自身がやっていきたい方針が見つかったのかもしれないですね!そして、a.e.さんにとって、暮らしやすいと感じる土地で生活する事も重要なポイントなんですね!
a.e.さんの作品は、お家のインテリアとして、ただそこに置いているだけでも魅力的な佇まいですよね。
今度は作品についてお伺いしていきます!Instagramの写真では、籐編みのカゴを植物の鉢カバーとして使用しておられたり、キルト作品をタペストリーのように飾っているのが印象的でした。
籐編み作品やキルト作品を作り始めた事は、どういったきっかけがあったのでしょうか?ー

a.e.さん
新卒で入った1社目が園芸関係の会社でした。そこではECサイトを運営する仕事を中心に業務を行っていましたが、日常的に植物や植物にまつわる雑貨を手にする機会が増えました。
その際、植物の種類は豊富で見飽きる事がないのに、植物を入れる鉢や鉢カバーは似たようなデザインのモノが多くて選択肢が少ないなという印象で、自分が欲しい!と思う鉢カバーになかなか出会えなかったんです。
そこからずっと、自分が欲しいと思える鉢カバーを作ってみたいな、という事を考えていました。そこでまずは、モノづくりの第一歩として、鉢カバーとしても利用できるカゴのようなモノを作り始めようと思いました。
早速、自分の好きな素材や形をイメージしていったとき、陶器やガラス以外の素材って、あまり目にした事がないなと思いました。そこでキルト素材で鉢カバーとして使える雑貨を作ったら面白いんじゃないのかな?とひらめいたんです。
なのですが…
デザインを考え、手を動かして作っていくうちに、
カゴのような立体ではなく、平面で作るキルトのそれ自体が可愛い。と
いう事に気づいたんです。

a.e.さん:キルトの大部分は手縫いで制作しています。

そこでキルト素材では、タペストリーとしても使えるし、マットのようにも
使える、そんなデザインにしていこう!と方向転換しました(笑)

ーそうなんですね!この素敵なキルトは偶然の産物だったんですね!キルトの温かみのある縫い目が愛らしいですよね。これはどのように作られているのでしょうか?

a.e.さん:キルトの大部分は手縫いで作っています。1m以上の作品もほとんどが手縫いなんです。キルトの中綿が歪まないようにする事とモチーフを自由に配置していくためにもミシンではなく、手縫いで作っています。まっすぐ過ぎない線も気に入っていて。

温もりのある手縫の風合いが、空間に程よく、柔らかなアクセントをつけてくれます。

ーほとんどが手縫いなんですね!私だったら気が遠くなる作業だなぁ…。
すごいです!温かな印象は手縫いならではですね。ちなみにキルトの柄は、何かをイメージして作られているのでしょうか?ー

a.e.さん:見た人の捉え方で意見が分かれるような「ありそうで、ないもの」を、太陽や月といった自然物や幾何学模様から着想を得て作っています。

代表的なキルトのタペストリー。
どこかでみたことがある景色のような、全く違うもののような…絶妙なバランスが魅力的です。

ー確かに。私自身a.e.さんのキルトを見ていると、その時々の気分や近々に見た景色等で見え方が変わる印象があります。見ていて飽きがこないデザインが良いですね!
籐でできたカゴも素敵です。こちらは鉢カバーとしても使用できますよね。ー

a.e.さん:そうなんです。鉢カバーに使えるものも、やっぱり欲しい…という事が諦められなくて(笑)形を自由にデザインできる別の素材をずっと考えていました。そんな時、「籐ならできるんじゃないのかな!?」とひらめいたんです。ただ、籐だけで作るんじゃなくて、まったく別の素材も組み合わせてみたいなと思い、モールをアクセントに入れました。
以前、モールで花瓶を作った事があって、その素材の自由な面白さに惹かれていたんです。

モール素材には自由な面白さがあって、現在も作品に使用しています。

籐とモールで作っているカゴは、鉢カバーとしても使っていただけますし、
使っていただける人が考える用途で自由に楽しんでいただければ嬉しいです。

鉢カバーとしても使えるし、雑多になりがちなリモコン類の収納にも良さそう!何に使おうかな〜と考えるのも楽しい!

私の意図を超えて、手に取ってくださる方の自由な使い方やモチーフの捉え方を知ると私自身も新しい発見で、楽しいんです!

ーa.e.さん、インタビューにお付き合いいただきありがとうございました!これからのご活躍も、とても楽しみにしています!ー

オーダー制作もされているa.e.さん。雑貨屋あるくらしをイメージしてキルトのタペストリーを作っていただきました。

「手しごとのはなし」第1回目をお読みいただきありがとうございます。
作品を見て愛でる楽しさはもちろん、その裏にある物語を知る楽しさが加わると、モノへの愛着がさらに増していくように感じます。
直観も、そのモノを手にしたときのシチュエーションも、裏側に潜むストーリーも、どんな些細なことだって、どれも対等に、モノを好きになった心に潜む、ひとつひとつの要素なんだと思います。
そういった要素を味わい、より深くモノを好きになるきっかけのひとつとして、この「手しごとのはなし」がモノのそばにあると嬉しいです。

はじめましての方も引き続き読んでくださっている方も、お付き合いいただきありがとうございます。今後も焦らずゆっくり続けていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

店主 絢音










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