一人で箱根駅伝を歩く


上のような言葉をキーワードに検索してみても実は私のしたようなことはあまりヒットしない。 
だから、もし私がここでノートを書いたらちょっと先駆者になれる気がして筆をとる。

箱根駅伝は東京大手町から箱根芦ノ湖までの往路とその反対復路からなる。片道107.5km(復路は109.6km)が5つの区間に分けられており、おおよそ20kmずつ。とはいえ各区ごとに特徴がありそこがまた見所だったりする。

では、なんてことない早稲田大学の女子が箱根をめざしたら?

2020年3月4日、あの日は箱根をめざそうと言うよりも、歩いて実家へ帰宅できるか挑戦してみたかったというのがメインであった。ルートを考えるのが面倒だったので箱根駅伝の1区、2区のそれにしたがったにすぎない。
午後10時前、早稲田大学を出発し、地下鉄東西線に沿って大手町へ向かう。読売新聞社前で箱根駅伝の記念モニュメントなんかの写真を撮りながらスタートした。夜に出発した理由は特にない。このころにはメトロ歩き潰しの経験により、都内のルートは特に苦労することなく進めることができた。それにしても、手もとの地図より頭上の青看板の方が勝手がいいというか、スケールは車移動なんですよね。
午前4時ごろ、東京から神奈川県へ。だいたいここで20キロくらいなイメージ。橋を渡るころが、一番眠かった。夜に出発するなら昼寝はしておくべきだ。午前5時前、鶴見中継所到着。ここまで一人で走っているというのが信じられない。ここに、鶴見線の国道駅というのがあり、ノスタルジックというか古いまんまの駅がそのまま使われている。いちど覗いてみては?
午前7時ごろ、横浜駅に到着。海沿いなので風が強かった。これでだいたい30キロ。横浜駅は大きいため、どこをどう渡ったら向こうに行けるのか難しいところだ。箱根駅伝は車道を走るが、一般人は歩道を歩くしかないため余計に階段を登ったり渡ったりが発生する。
横浜駅を出るまでは道が平坦なのだが、その先に権太坂が待ち構えている。40kmを越えると私は足が痛くなってくる。思うように一歩が踏み出せないのに上り坂という苦痛。
そんなこんなで戸塚駅近くまでは行ける。戸塚には東海道五十三次の絵を模したマンホール(しかもカラー)がある。しかし実は戸塚中継所というのは歩行者がふだん歩けない場所にある。ので、ここはルートを変更して大船駅まで出てしまうのでいかがでしょう?


後編
2021年3月13日
今度は明確に「箱根駅伝を歩く」という目標があった。残りの3.4.5区をまとめてやってしまおうと。結論からいうと、できるにはできるがとてもしんどい。
昼寝をし、白米を平らげスタート地点に選んだのは横浜市戸塚区原宿交差点。ここは戸塚中継所より西側に進んだ箇所にあたり、歩道があるためここから午後10時すぎに再開することにした。というのも、箱根の山を夜間に登るわけにはいかないため、逆算するとこうなるのだ。途中で30号線にうつり南下していくことさえ間違えなければ後半はとくに道に迷うことはない。相変わらずずっと青看板を見ていた。今回はなんとなく旅の安全を祈願したく、通り道にある神社にすべて挨拶しながら歩いていた。だからかもしれないが、やはり街道沿いには神社が多い。旧東海道についての解説板もあちらこちらにあった。すぐ藤沢市に入り、午後11時湯行寺。
茅ヶ崎で134号線にうつる。午前0時半、恐怖はここから始まった。ひたすら防風林に挟まれながら進むのだが、ああ星がよく見えるなどと呑気に構えていたのも束の間。13日の嵐の影響だろうか、激しくうちつける波の音だけが響く道をただひたすらに歩く。街頭や信号がなく、暗いから星が見えるのだ。車のヘッドライトでようやく足元がみえる。懐中電灯をなんとなく荷物に加えていた自分を称賛したい。暗さと海に恐怖心を抱いてしまう私なので、この区間でとても精神的に疲れてしまった。とはいえ、西の方へ進むと街頭がちらほら灯るようになるので耐えることができた。相模川を境に午前1時半、平塚市だ。花水川橋を渡れば平塚中継所があるはずなのだが、モニュメントのような目立ったものは見当たらなかった。暗くてみつけられないのかもしれない。
午前3時ごろ、大磯に入ると一本内陸の道を歩くことになる。ここは電線が地中化され建物にも統一感があり、「街道らしさ」がある。ここから先は1号を進んでいくわけだが、特筆することがなく、時間だけ記しておく。
午前5時前、小田原市突入。マンホールから東海道らしさを感じる。午前5時20分ごろ日が登り始める。
酒匂川を越える手前、富士山が右手奥に大きく見える。午前6時ごろその手前にそびえる山々に驚くが、おそらくこれはこれから登らなければならない山。
午前7時小田原宿到着。私はここで朝食をとりました。小田原駅前だとカフェベローチェが土日7:30~開いております。午前8時再出発。そろそろ足が痛い。
早川に沿って進んでいくと箱根登山鉄道かロマンスカーかともかく小田急が走っていく姿を確認できる。
午前9時箱根町突入。自動車専用道路などがあり少々慌てるがその下を潜れるようになっているので安心されたし。
小田原中継所も店舗を借りて置いているためかモニュメントなどは見当たらず。
午前9時半、箱根湯本駅到着。箱根湯本駅を過ぎると歩道が狭くなり消えていくので、自動車の邪魔になりにくいように臨機応変に対応しなければならない。
午前9時半すぎ、函嶺洞門近くにトイレ発見。コロナの関係で、コンビニで必ずしもお手洗いを借りられない状況なのでこういうのは大切。
さすがに足が痛いしお腹がすいているので山登りの前に箱根湯寮さんで入浴&食事。午前10時から空いていました。睡眠か水分か体力かなにかわかりませんが、不足していたみたいでひどい貧血を起こしました。注意しましょう。自己責任です。
正午に再出発。ここからは本当に歩道はないし山道。景色も変わらずカーブをいくつも登り続ける。下手なところで立ち止まると車の迷惑になる。この5区だが、山をおりてくる人たちとは何度もすれ違うが登る歩行者は誰一人として会わなかった。つまり、そういうことです。それから気がつくと電波が届かなくなっており、これは元箱根まで続いた。あらかじめ周りの人に連絡取れない旨を伝えておくべきだった。100mか500mごとに(おそらく)距離表示が出ている。あらかじめ地図で確認しておけばよかったのにも関わらず、その場で地図を見ようとして電波が届かず、いったい自分は全体のどれだけを登ってきたのかわからないという状態になってしまった。ただ、時速何キロかという確認はできる。参考までに、最初の1時間は5キロ登れたが、体力が続かずそれ以降は4キロで精一杯であむた。ときどき側溝をのぞくと湯気があがっていることがある。温泉かな。12時45分前大平台到着、宮ノ下午後1時10分、小涌園前午後2時、芦之湯午後3時。ここまで一度も下りはなかった。永遠に登り続ける。最高点874m地点午後3時15分。これで登りが終わりだと知り、泣いてしまった。下り始めると右手に湖がある。その手前によくみるとお地蔵さまがいらした。手を合わせておく。午後3時半ごろ、芦ノ湖のきらめきが見える。ようやくゴールか!と思いきや、車道を渡れず苦労する。そして元箱根の交差点からさらに左折し1.5キロほど直進する。もうこの時の体力はなく、一歩一歩なんとか進めていた。いびつな石畳が足裏を痛めつける。
午後4時半、無事箱根駅伝往路ゴール地点に到着。ちなみに箱根駅伝ミュージアムがすぐ近くにあるが入館時間をちょうどすぎてしまい入館できず。

(帰り)
ゴール地点のすぐ近くから小田原駅までバスが出ているので這ってでもバスにのれば帰ることができるので安心だ。私は箱根湯本までバスでおり、ロマンスカーに乗った。たまの贅沢。ちなみに箱根湯本までは渋滞もあり50分はかかるものとして見た方がよい。わからなければバス停にいらっしゃる乗務員さんにたずねれば最適解をくれる。なにも考えられなくても大丈夫。ネットも繋がらないので調べようもなかった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?