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黒い炎

 黒い炎が燃えている。マグマのようにたまっているのか?触れてみると、とても冷たい。泡や飛び散る液体。けれども、とてもひんやりした液体。そっと口をつけて、飲んでみる。甘い。炎を食う人に会ったのは、3年前。踊る大地で、陽射しの強い日、足長の女。裸足でかけている。丸い背中に大きな頭。駆けて行く、駆けて行く、静かにそろりそろりと駆けて行く。いざ!と、とどまる粉の中で、やはり炎は燃えている。女の腹のあたりで、ゆらゆーらと燃えている。自然の中にある大きな恵みをもたらす豊穣の女神か、と錯覚する。と、同時に幻影ではなく、そこにある物体だとわかる。触れる。炎は熱く散りばめられていた。「やあ」私は声をかける。「うん」女は答える。それで、全ての空が、白から青に変化していく。波のように雲が脈打つ。シチューの味を思い出す。少し濃いめかな?今に戻り、私は炎を食す。体の中に炎がゆーらゆらととりこまれていく。いや、すいこまれていく。体の中が、熱く熱く、寒く寒く、反転から頂点へと感覚のうねりが差し迫ってくる。目の前が、白く透けていく。触れる風の流れが温かい。見てくれたんだ。私は思った。いつでも見ているよ。炎は答えて、にこやかに笑う。空は夜を迎えて、濃く落ちていく。それとともに、あたたかなぬくもりが、体のうちから周りの大地へと伝わっていく。それでいいんだ!声が聞こえる。嬉しいな。もう、ここにあの人はいないけれども、ここには全てがあるんだ。あの人のかけらも、あの人の心も、全部この炎の中にあったんだね。私は満足して、寝息を立てる。見ている夢は、これからの至上の園。たくあんいっぱいあったね。ありがとう。

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