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国際開発コンサルタントのプロジェクト・マネジメント

コーエイ総合研究所(日本工営グループ) 『国際開発コンサルタントのプロジェクト・マネジメント』 国際開発ジャーナル社 2003

お薦め度: ★★★☆☆、 

一言コメント: 業界内部の人間にとっても難しいです。かなり理想的というか行間に込められたエッセンスは非常に濃ゆいものがあります。

実は最近、「開発援助と開発コンサルタント」ということで日本NGOの方や学生さんの前で話す機会がありました。でも、まあ「開発コンサルタント」って、非常に説明に難しい職業です。以前、つかささんとの対話で、いい本がでたよって紹介していますが、やはりこの本はプロのコンサルタント(同業他社)の現役バリバリのそれぞれの専門家が分担執筆していますので浅く広くなぞっているようでいて、かなり行間に込められたメッセージが濃ゆいです。

その面では、開発業界やコンサルタントの予備知識がない人には、かなりとっつきづらいと考えられるでしょう。逆に、実際にコンサルタントやNGOとして現場をもっている人にとってはリトマス紙というかチェックリスト的な読み方もできましょう。でも、基本的な立場が、伝統的な社会基盤整備、すわなちハードのインフラ整備の調査・計画・実施(施工管理)をおこなってきたコンサルティング・エンジニアの観点からかかれていますので、社会開発というか、ソフト系のコンサルタントを目指す人には、ちょっとなじみがわかないだろうなと思います。

ところで、私のプレゼンでは、「コンサルタントは、川上から風下までトータル・コーディネイトを目指し、調査・研究にとどまるのでなく、事業の実施までを見据えて活動するものだ。」「プロとして、クライアント、ドナー、施工業者などから公正中立の立場で、専門家の立場で最適案を追及する倫理規範が重要である。」ことを特に強調しましたが、そのラインから言っても、この本は、‘伝統的な’コンサルタントのあり方を示したひとつの教科書の位置づけが与えられるでしょう。

少なくとも、日本語では、この類書は少ないというか、わたしは知りません。今までにも英語の教科書の和訳本はいくらかありましたが。

でも、このグローバリゼーションの世の中、開発コンサルタントのあり方自体が難しくなってきているなあと思います。当然、民間企業なので利益もあげなければならない、しかしながら金儲けだけではなく、その仕事で得た知見は、国益を越えたものまで見えてしまうというか政策提言にまでつながるものを経験として日々学習しているのに、結果というか実態としては、ひとつの民間(下請)業者の立場にとどまることを余儀なくされている。

最終章(第18章 プロジェクト・マネジメントの将来)の「18.3 パートナーシップの促進」の項で、「地球益のため」とか、「コンサルタントの社会還元」とか、コンサルタントとして「ロマンを追いつづけていく」ことにふれられていますが、果たしてどこまで社会的に認められていくものでしょうか。

だからこそ、‘パートナーシップ’ということが謳われているのでしょうが。 まだまだこの日本社会の中で、的確に認知されるまで「Long Way to Go」という気がしています。まあ、地道に共感できる・してもらえる‘仲間’を増やしていくしかないのでしょうね。できる範囲で。

おっと、結局、「歩く仲間」という落ちになってしまいました^^?

おあとがよろしいようで^^!

P.S.

開発コンサルタントに関心のある方は、こちらも参照ください。↓

対談 開発コンサルタントとは:

開発援助に関心のある方へ

2007年7月 4日 (水)

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