52.カササギ殺人事件(アンソニー・ホロヴィッツ)感想・考察

アンソニー・ホロヴィッツさんの『カササギ殺人事件』上下巻を読みました。
2016年刊行。
海外部門で4冠を取っている作品です
このミステリーがすごい!、週刊文春ミステリーベスト10、本格ミステリ・ベスト10、ミステリが読みたい!
2019年本屋大賞翻訳小説部門第1位も獲得しているようです。
アンソニー・ホロヴィッツさんは元々、イギリスで推理・サスペンスドラマの脚本をしている実績がありますが、
カササギ殺人事件は同氏の初のオリジナルミステリ作品です。
海外作品は読むのに一苦労するところがありますが、かなり話題になっていたので読み進めていきたいと思います。

こっからネタバレ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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完成度高すぎでは?
本作は作中劇の形式を取っていますが、その完成度が非常に高かったです。

上巻では、"わたし"が何だか意味ありげに『カササギ殺人事件』を読むことで人生が変わったという導入で始まります。
劇中ではアガサクリスティ作品の名探偵ポワロシリーズのような構成を取っています。
一昔前の片田舎で起きた殺人をアティカス・ピュントが調査していくという形式です。
登場人物はどれも腹に一物を抱えているようで、まるで『アクロイド殺し』を読んでいるようでした。
誰が犯人でも成立するけど、どう伏線回収するのだろうと期待に読み進めていました。
そして、上巻の部分を読み切り、事件はどう解決されるのか気になっていたところ衝撃の下巻の始まり。
「えっ急に現代での調査始まったんだけど」という、2層構造に驚きます。

スーザンが作者のアラン・コンウェイの死と、消えた最終章を謎を探し回ります。
アランの取り巻く環境は『カササギ殺人事件』になぞらえて調査されていき、容疑者の小説との類似点やアランの考えが解き明かされていきます。
私自身の推理は、手紙の謎が隠されていると提示された瞬間にこれ3P目、アティカスピュントが書いた手紙だろって一発で気づきました。
そこから逆算すると、原稿を知ってて細工できるチャールズが犯人なんだろうなと思いながら読んでました。

しかし、動機の部分の納得性がすごい。
散々作中でアランの歪んだ性格が強調されて、作中にアナグラムがしかけてあることがわかると、アランのアティカス・ピュント作品に向けたメッセージが読み取れるという構成が面白すぎる。

そして回収された最終章。
アランとそれを取り巻く環境を知っていると、登場人物に重ねた感情が読み取れるの面白い。
助手のジェイムズに向けた感情が、ジェイムズテイラーにリンクするのエモい。

そして怒涛の伏線回収
牧師の見られた写真
泉に投げ捨てられた銀製品
燃やされた手紙
メアリはマシューに殺されたの意味。
マグナスの「お前か!」の意味。
病が娘の家族を蝕む
トムと犬の死

様々な伏線が回収されていくのはお見事でした。
ただの作中作品としても面白いのに、現実の事件と上手く絡めていくという構想を実現できているのが凄まじい。
現実世界のアランを知ってから思い出すと、作中でジョニーホワイトヘッドを窃盗犯として登場させてるのも面白い。
レディフランシスパイとジャックダートフォートの恋もすぐ別れるだろうって言って、
恋は困難がなくなると、燃え上がらないって言ってるの明らかに現実でのアランとジェイムズの関係値から言ってるだろうと思えるのも面白い。

ここまでの大きな風呂敷を違和感なく、全て回収していく様はお見事でした。
構想から完成まで15年かかったらしいですが、それはそうなるよなと納得します。

海外ミステリ系は、人の名前を覚えるのが大変なのですが、めちゃくちゃ多い登場人物の割にはすんなり読めました。
上巻で既にそこそこ面白いのに、下巻で最終章をじらす構成も斬新で面白かった。
今まで読んだ海外作品の中でも最高傑作だと言えるでしょう。

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