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副業公務員、「両利きの経営」を読んでみた。

はじめに

私が2015年に参加した経済産業省によるイノベーター人材育成プログラム「始動Next Innovator」(大企業の新規事業担当者、スタートアップ起業家など120名が参加。自治体職員も少数が参加)は、一流の講師陣による講演やワークショップの受講や、仲間たちと切磋琢磨する時間を通じて、各自がそれぞれ考えるビジネスプランを磨き上げ、見直しながら、「ThinkerからDoer」(考えるだけでなく、実行する人材)へと変貌を遂げていくためのプログラムであった。
当時、このプログラムを運営するWill・伊佐山元さんのプレゼンの中だったと記憶しているが(他の講師の方だったら、すみません笑)、イノベーターとして「知の探索」(=自身にとって新しい知を探っていく行動)と「知の深化」(=自身にとっての既存の知を深めていく行動)の両方が大事、という話があったのを覚えている。(ちなみに、「知の探索」「知の深化」「両利きの経営」という日本語訳を生み出し、日本のビジネス界に紹介・普及された入山章栄先生(早稲田大学大学院ビジネススクール教授。ベストセラーも多数)も、このプログラムの勉強会のゲスト講師としていらっしゃってました。私は都合合わず参加できなかったですが)

先日、GW後半の突入前日に仕事帰りに立ち寄った地元図書館で、その時からしばらくの時を経て「両利きの経営」というキーワードの背表紙が目に止まったので、借りて読んでみることにした。(※2022年に出版された増補改訂版)
ざっと読んで印象に残ったことなどをメモ的な意味も込めて書いてみたい。

両利きの経営とは?

経営環境が大きく変化しており、アメリカのスタンダード&プアーズの500社の平均寿命は、50年前は50年もあったのに、今や、たったの12年とのこと(短か!)。
誰もが知っているような大企業であっても、他社による破壊的イノベーションにより、ある時、市場から退場させられる(or事業を縮小させられる)ということが、起きている。
その原因は、それらの大企業が様々な事情によって既存事業に囚われていて、時代にあった新規事業にうまく踏み出せずスケールできない間に、新たな競合製品やサービス、ビジネスモデルに市場を奪われるため。
その一方で、急激で大きな環境変化の中でも成長を遂げている企業は、「知の探索」(=新規事業のタネを見つけ芽を出させ、事業化していく取組み)と「知の深化」(=既存事業における売上増・利益増・利益率増を目指す改善型の取組み)のバランスが取れていて、「両利きの経営」(=新規事業と既存事業のどちらにも注力できる経営・組織体制)が実現できている。(本書の中では、amazonなどが、そのバランスの取れた企業として例示されていた)

両利きの経営を成功させるためのポイント

ポイントになるのは、イノベーションのプロセスに関連する以下の仕組みがうまく機能すること。

1.新たなアイデアを生み出す仕掛け(アイディエーション)

例えば、他社・他者とのオープンイノベーション、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)によるスタートアップ等との共創、デザイン思考、従業員参加型イベントの開催(ハッカソンなど)など。

2.新たなビジネスコンセプトを検証する仕掛け(インキュベーション)

仮説検証のためにMVP(実用最小限の製品)を開発・投入・評価するリーン・スタートアップや、ビジネスモデルキャンバスによってビジネスモデルを体系的に考え抜くなど。

3.新規事業を成長させる(スケーリング)

文字どおり、新規事業を立上げ成長させるための様々な取組み。
これが一番重要だが、一番難しい。その理由は、新規事業を成長させるためには資金や人材が必要である一方、それはつまり、既存事業から(or新規事業がなければ既存事業に充てられる)資金や人材を新規事業に分配する必要があるため。そのため、既存事業に関わるマネジメント層から現場の従業員からすると、どうしても抵抗感が出る(全社最適の視点を持つのは難しい)。
なお、場合によっては、新規事業が既存事業とカニバる(カニバリゼーションを起こす)こともあり、結局、新規事業に軸足を移せないまま、企業が沈んだ、などの例もある。

結局、新規事業(=中長期目線で、今自社に関わりのない分野も対象とした上で、失敗も当然あり得るチャレンジを行う必要がある)と既存事業(=比較的短期目線で、事業を安定的に運用できるような仕組みを整えつつ、改善を続けていくことが大事であり、それが評価される)はほぼ別物であり、それを踏まえた組織設計、評価制度設計を行うことが重要であるとともに、新規事業・既存事業のそれぞれに関わる当事者(従業員)では立場上難しい部分を経営者がしっかり認識し、自社の未来に向けた意思決定をしていくことがポイントになると感じた。

最後に

両利きの経営を読んで思ったことに触れておきたい。
・大企業にて両利きの経営が求められる背景には、急激な環境変化と、それに伴う既存事業の急激な衰退の可能性がある。これはつまり、従来、大企業と取引のある地方の中小企業であっても、ある日突然、受注がストップする可能性があるということ。そうなっても生き残れるように、中小企業であっても、既存事業の改善だけでなく、新規事業を生み出すための取組み・準備をしておかなくてはならないと改めて思いました。
私も日本の中小企業様の新規事業支援サービス「Something New」を副業で実施していますので、ご関心あればご連絡ください。

Something New 代表 井田広之(副業公務員/中小企業診断士)



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