スマホにも写らない

音楽を聴くのが好きな人は特によく分かると思うのだが、不定期にマイ・ブームが訪れる曲というのがないだろうか。
僕にはそういう曲がいくつかある。そしてそれらがひとつずつ、年に少なくとも一度は僕の耳に予兆も報せもなく居座りにやってくるのだ。
そんな具合で、現在、二日ほど前から耳に居座っている曲というのが、THE BLUE HEARTS「リンダ リンダ」である。

言わずと知れた80年代を代表する一曲であり、日本のロック史においても欠かすことが出来ない一曲でもある。その知名度は勿論のこと、「ブルーハーツを知らない」という若い世代にも、タイトルであったり或いは『ドブネズミみたいに…』のフレイズを口ずさめば大抵はピンとくるほどである。バンドの代表曲であり、代名詞といっても過言ではない。
バカ(おれ)でも分かる名曲、というのはまさにこの曲を指すのだろう。
その「リンダ リンダ」が、先述した様に二日ほど前からマイ・ブームを迎えているのである。何度目かは定かではないが。
現に今も聴きながらこれをポチポチ打っているのだが、いやあ…名曲だ。
メロディも歌詞もインパクトも全てが素晴らしい。こんなラブソングを甲本ヒロト以外の人間には一生かけても作ることができないのだと思うと、文明の、文化面での人類のある種の敗北を痛感せざるをえない。しかしその敗北は清々しさを孕んでおり、やがて彼と同じ時代に我々が生きていることの貴さのようなものに形を変える。
彼のその才能も然ることながら、それがフルに輝きを増すのは甲本ヒロト以外の、マーシー、河ちゃん、梶くんという素晴らしいメンバーが音を鳴らし、共にリンダ!リンダ!と叫んでいるからというのも忘れてはならない。この四人で「リンダ リンダ」なんであり、この四人を越える「リンダ リンダ」というのは未来永劫ないのである。
ただ、唯一の例外として越えられるものがあるとすれば、例えばあなたに想うひとがいて、そのひとを胸にした時にふと、こぼれおちるように口ずさむ「リンダ リンダ」のみだろう。

カラオケで歌う際に公式映像がでるのだが、いつも四人が真ん中に収まらんとするこのシーンで涙腺が緩む。

そもそもぼくがTHE BLUE HEARTSの大ファンというのもあり、熱く語ってしまった。
はてさていったい「リンダ リンダ」は、その誕生から今日に至るまでどれくらいの人を写真には写らない人間に変えてしまったのだろうか。その数はねずみ算式に増え、きっとこれからも増えつづけるに違いない。もちろん僕も変えられてしまったひとりである。
尤も、美しいか否かは未だに胸をはって答えられないのだけれど…。

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