見出し画像

作業をする事で心を癒す方法とは?作業療法士の小林さんにインタビュー!

小林さんのプロフィール

昭和大学付属烏山病院の精神科で作業療法士として働いている小林崇志さんです!

小中高生のためにインタビューにご協力いただきました。本記事は、小林さん個人の見解です。

画像1

作業療法士とは?

作業療法士は、日常生活をスムーズにするためのリハビリテーションを行います。「食事をする」「顔を洗う」「料理をする」「字を書く」など生活する上で必要な手や指を使った細かい動作のプログラムを通じて心と体の回復をサポートします。作業療法士は、患者さんの生きがいを支援する専門家です。

理学療法士との違いは?
理学療法士は、「立ち上がる」「起き上がる」「歩く」 などの体の大きな動きのリハビリテーションを行います。理学療法士は、できないことをできるようになるよう支援します。筋肉・骨・関節の専門家としてスポーツトレーナーなどとして活躍する人もいます。

精神科の作業療法士と整形外科の作業療法士の違い

作業療法士として大事にしている事はどの診療科でも同じです。精神科の作業療法士は、患者さんと一緒に作業(楽器演奏、絵を描く、手芸、植物を育てる、卓球など)をやります。個々の患者さんの好きな作業を通して、「こういう生活がしたい!」というゴールに辿り着けるよう支えます。患者さんのできることを活かして、使える物はなんでも使って「自分はできることがあるんだ!」と自信をつけてもらいます。
整形外科では、手芸などのほか洋服を着る、お茶碗をもつなど自宅での生活を想定した練習などをします。

PT・OTって何?
理学療法士はPT(Physical Therapist)、作業療法士はOT (Occupational Therapist)と呼ばれています。

作業療法室

小林さんが働いている作業療法室(撮影者:Anri*)

画像6

作業療法プログラムの例:OT美術部 (撮影者:Anri*)

(美術部もプログラムの1つで、入院患者さんと外来患者さんが所属しています。絵を描いたり、物を作るのが好きな人はそれだけで元気になります。また、定期的に展示会を開催し、スタッフや他の患者さんをお客さんとして招待するようなこともあります。部活動のような雰囲気と展示会というイベントを活用して、人付き合いの練習や、仕事的な体験をしてもらい、様々な能力を身につけています。) 

作業療法士と災害医療

作業療法士は、災害が起こった直後の救急の場面で召集がかかることはないですが、リハビリの専門家として災害医療に関わることはあります。作業療法士は災害発生後、生活が少し落ち着いて「これからの生活をどうしよう?」などと考え始めるタイミングで、被災者の方の支援に入るのがベストかもしれません。

作業療法士の毎日

画像2

小林

作業療法士のユニフォームを着ている小林さん(撮影者:Anri*)

小林さんが作業療法士として大事にしていること

「患者さんが生きがいを取り戻して、社会に戻っていくには?」と毎日考えながら仕事をしています。作業療法士は、作業を通して患者さんと喜怒哀楽を経験し、ともに生きている喜びを感じられる仕事です。

モチベーションアップ&ダウンするとき

作業療法士をやっていて嬉しいのは、患者さんと一緒に喜べることです。「こういう生き方がしたい」というところに働きかけながら、患者さんの人生の喜びを共有できます。

特に嬉しかったエピソード
10代からひきこもっていて、入退院を繰り返している患者さんを担当しました。部活の経験や、友達と遊んだり喧嘩をした経験がないまま大人になってしまい、周りに全く関心がない状態の人でした。

時間をかけて、一緒に映画をみたり、ポスターを作ったりしました。園芸プログラムをした時に、「花が育つ過程が楽しみになってきた」と言ってくれたり、一度花が枯れてしまったときは「悲しい」と気持ちを伝えてもらいました。その時は周りに関心が出てきていることが見えて、とても嬉しかったです。枯れても、「次はどうしよう?、花をキレイに咲かせるにはどうしよう?」と考える様になりました。作業を通して喜怒哀楽が生まれてきたんです。その患者さんは今は一人暮らしできるまでになりました。患者さんの良い変化をみれて、患者さん自身が社会に参加できるようになって本当に嬉しかったです。

悲しかったエピソード
反対に悲しかったのは、朝のプログラム中はなんともなかった患者さんが、突然夕方に「電車に飛び込んだ」と伝えられた時です。「普通に見えたのに、どこにサインがあったのか?どこを見落としていたのか?」と悩み、悲しかったです。サインに気づけなくて悔しい気持ちもあります。

小林さんの子供時代
小学校&
中学校
5〜6歳のころと小学5年生の時に入院した経験があります。(病気の原因はよくわかっていません。1ヶ月くらい入院しました。)その経験から、病院の仕事に興味がありました。あとは、よく喋る、うるさい子供でした。
高校:
高校が男子校で、「ドラムかっこいい!」と思って吹奏楽部に入りました。入院経験を思いだして、病院に携わる仕事をしたいと思い、調べて「これからの時代は、リハビリ必要だよねー」という軽い気持ちで理学療法士(!?)の道に進んでしまいした(笑)。

なぜ作業療法士になったの?

最初は理学療法士のほうが人気だったので、そちらを目指していました。しかし、一緒に目指す友達の成績がとてもよかったので、「あ、これ負けるわ」と思い、別の道を探し始めました。調べていた中で作業療法士について知り、喜怒哀楽をともにしながらプログラムをやる作業療法士のほうが自分に向いていると思いました。

また吹奏楽部やバンドでドラムをやっていたので、音楽は好きです。一緒に演奏するのが治療の一部になると知り、自分の好きなことが人の役に立てることがわかって作業療法士を目指した部分もあります。

ドラム叩いてる

バンドで演奏中の小林さん(撮影者:Anri*)

作業療法士になる方法と働く場所

「作業療法学科」がある学校で勉強して、国家試験を受けて合格すれば「作業療法士」になれます。精神科のリハビリに関して特別な免許はないです。病院で作業療法士として働く以外では市役所・区役所の保健福祉課、訪問看護ステーションに勤めて看護師さんと一緒に患者さんの自宅へ行ったり、退院したばかりの患者さんが集まるグループホームの管理人になることもできます。

人が好きなら作業療法士に向いている?!

作業療法士に向いているのは、活動することが好きな人や人と話すのが好きな人です。あと人と一緒に何かするのが好きな人も作業療法士に向いています。

作業療法士になるなら、まず自分がいろいろなことを経験しておくといいでしょう。自分が身につけたスキルや技術が、他の人を助けるのに役立ちます。中高生の今は気になったことは全部経験してみてください!

作業療法士”あるある”
「仕事してないで遊んでばかり」、「レクリレーション(お楽しみ)担当」と言われ患者さんの治療に関わっていると理解してもらえないでいる。
さらに、理学療法士との違いがわからないと言われる。

現在の挑戦

作業療法プログラムの成果が簡単に目に見える形にならないので、成果を確認するのが難しいことです。今は、作業療法士の観察記録や、患者さんへの紙のアンケートで評価したりしています。しかし、これからの時代だとAppleウォッチとスマホのアプリなどを使って、患者さんの心身の変化を把握できて、効果を評価できるようになるかもしれないですね。今のこの記事を読んでいる中高生の中から、精神科の作業療法の効果を測定する方法を開発してくれる人が出るのを期待しています!!

モットー

為せば成る。なんとかなるさ。反骨精神で頑張ろう!

中高生の皆さんへ:授業中眠くなったら

オススメの作業はありませんが(笑)、作業療法士的な考え方が役に立つかもしれません。例えば、自分の目指す姿を思い浮かべて、「この英語の授業のフレーズは使えるぞ!」と自分のやりたい・なりたい事と授業を紐付けるとやる気がでるかもしれません。中高生は成長期なので、本当は生活リズムを見直すのが一番ですね。(笑)

心の声
良い方法があれば自分だけ聞いておくつもりでしたが、都合のいい方法はなさそうです…

作業療法士の活躍する場所はたくさんある!

今の新型コロナウイルスの状況下でこそ、作業療法士が活躍するべきだと思います。テーマは「その人ができるようになりたいこと」です。新型コロナウイルス、経済的な問題、世間の偏見などのせいで「したいことが出来くなった人」の「できない」を「できる!」にすることが作業療法士の仕事です。特に高齢者、病気や障害を持つ人たちは「あなたはできない」という目で家族や世間から見られ、「社会に居場所がなくなる」という状況に追いやられることもあります。「できなくなったこと」ではなく、その人の「できること」「やりたいこと」にフォーカスして、「生きがいを持って生きる」「社会参加できる」よう支援するために作業療法士は、病院以外の場所でも活躍するチャンスは多くあります。

理学療法士は現在約9万人、理学療法士は約18万人で、医師(約32万人)より少ないです。活躍する場は広がっていますが、作業療法士が足りていない状況です。

作業療法士に興味がある方はこちら!

一般社団法人 日本作業療法士協会のホームページはこちら

精神科の作業療法士の活動についてもっと知りたい方はこちら

(小林さんは出演していません)

ここから先は

0字

¥ 500

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?