20-21 ブラックバーンローヴァーズ選手名鑑-GK&DF編

さて、今季からプレミア挑戦でもない、ルーニーのような有名選手が加入したわけでもない、昨季プレミアから降格したわけでもない、10年近くチャンピオンシップという黒く深い森を彷徨い続けている古豪のことを誰が知りたいのでしょうか。そして、読んでなんの得になるのでしょうか。無責任ながら、この文章を読んだ時間が何に還元されるかはわからないが、大量放出、大量加入したチームの状況を整理することは俺にとっても有意義だと思ったので備忘録的に書き残しておく。

夏の移籍市場の概要

OUT
ジェイソン・ロイトヴィラー(フリートウッド)
ダニー・グラハム(サンダーランド)
リチャード・スモールウッド(ハルシティ)
ドミニク・サミュエル(ジリンガム)
チャーリー・マルグリュー(フリートウッド)
サム・ハート(未定)
アンドリュー・フィッシャー(MKドンズ)
スチュワート・ダウニング(交渉中、残留可能性あり)

IN
タイリース・ドーラン(プレストンU-18)
コナー・マクブライデ(セルティック)
トーマス・カミンスキ(KAAヘント)
ダニエル・アジャラ(ミドルズブラ)
アントニス・スターリアキス(スラヴィアソフィア)
バリー・ダグラス(リーズユナイテッド)
トム・トリブル(ノリッジシティ)
エインズレイ・ピアーズ(ミドルズブラ)
ハーヴェイ・エリオット(リバプール)

注目はGKを2人放出し、2人獲得した点。監督のトニー・モウブレイ(以下、TM)は足元の安定感があり、ビルドアップに参加できるGKによってチームのレベルアップができると考えており、その結果としてのGKの大幅な入れ替えであったと言える。(ではなぜ、ダビドラヤをブレントフォードに放出したんだという批判もある。)ここ数年間ローヴァーズは正守護神不在が続いていた。粋な言い方をするならばNo.1が不在だった。満を辞して今季は待望のNo.1として£500thでヘントから実力のあるGKを完全で獲得し、2ndキーパーとしてミドルズブラの若いピアーズ、ギリシャの年代別代表GKのアントニスを獲得し、ようやくGKの陣容が盤石になった。ユースアカデミーでは最近、シティ、バイエルンのユースを渡り歩いた16歳のGK(Felix Goddard)を獲得したしね。
 GKの話が長くなったが選手層の薄かったCB、LSBをはじめとして、開幕直後に長期離脱となってしまったCDMトラヴィスの代役など、新型コロナウイルスによる影響で財政危機に陥っているクラブが多い中、しかも英2部であるにもかかわらず、これだけ強気に戦力補強をできたのは本当にすごい。これも、今季からメインスポンサーになったオーストラリアのRecoverite Compressionと、このご時世にもかかわらず追加出資をしてくれたオーナー企業のVenkeysのお陰である。他のEFLクラブは厳しい財政状況にあって補強も思うようにできていない中でこの充実度のある補強は今季のリーグ優勝、昇格に向けて大きなアドバンテージになる。これだけ出し抜いた形で補強をしたのに昇格できなかったら悲惨だが、シーズン始まって間もないのでまだネガティブなことは考えないようにしたい。TMも納得のいく補強ができたようなので「もう言い訳はできないよ」という感じ。
 移籍市場の感想が長くなってしまった。この先は選手名鑑。後戻りはできない。

GK

 1 トーマス カミンスキ/Thomas Kaminski
待望のNo.1、正守護神がブラックバーンに。加入後はもちろん開幕からスタメンで出場し、期待されていたビルドアップはもちろんのこと、シュートストップなど基礎的な技術レベルも高く文句なしの出来。事前情報にはなかったがロングフィードの精度も思ったより高く、現地ファンらも「EFLのエデルソン」と評している。ブラックバーンでの活躍が認められてか、ネーションズリーグにてクルトワが離脱をした際にはFIFAランク1位のベルギー代表に追加招集もされた(なお出場なし)。市場価値に対してお買い得に買えた割に良い意味で期待を裏切る好パフォーマンスを披露している。Kaminskiという姓からも推測できる通り、父親がポーランド人で母親がベルギー人であり、トーマス自身はどちらの代表を選択するか悩んでいたがベルギー代表を選択。

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41 アントニス スターリアキス/Antonis Stergiakis
非アルファベット言語というのは往々にして我々を悩ませるものである。アルファベットならば発音記号に即して読めば良いわけで、スペイン語やドイツ語であっても、多少の読み方のルールを大方理解しさえすれば読めるわけだが、そもそもアルファベットではない言語を使用している国の選手の読み方は意見が分かれるところである。ノルウェーの新星Haalandにしてもそうである。「ハーランドだ」「いや、ホラントだ」「いやいや、ホーランだよ」となかなか決定打がなく界隈の中でも表記揺れが激しい。話がそれた。このアントニスについても同様で、Stergiakisは「スタージアキスだ」「いや、gは無声音だからスターリアキスだ」と悩みの種になっている。ローヴァーズのキャプテン、エリオットベネットでさえも読み方がわかっていなかったのでこれはもう誰も責められない。動画を見る限りは、スターリアキスと呼ばれていたのでここではこのように表記することにする。(そもそもチームメイトからはアントニーと呼ばれていた)
ギリシャU-21代表、ブルガリアの強豪、スラヴィアソフィアでプレーしていたが本人もステップアップを望み、移籍が成立。番記者の予想ではU-23の方での出場がメインになりそうだと。面白そうな素材ではあるので大切に育てて欲しい。

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エイズレイ ピアーズ/Aynsley Pears
ミドルズブラから完全移籍で獲得した22歳の若きGK。ミドルズブラで正守護神として400試合以上出場した父のステフェンピアーズはTMの現役時代(ミドルズブラ)の同僚。昨季はスタメンとして頑張っていたが終盤に2ndGKとしてベンチを温めていた。おそらくブラックバーンでも2ndGKだと思うが良いのかね。U-23の方でも出場できるのもしかしたらそっちでバリバリ出場する気なのかもしれない。不本意かもしれないが。

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45 ジョーダン イーストハム/Jordan Eastham
ブラックバーンアカデミー育ちの19歳。トップチーム登録こそされているもののU-23が主戦場。プレーは見たことがない。なんとなくムチムチしている。

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DF

2 ライアン ナイアンべ/Ryan Nyambe
アカデミー育ち、ナミビア代表のRSB。ナミビアってどこやねんって感じだが、元祖多国籍チームらしい、ニッチな外国人枠。基本はRSBだけどCBもできる。が、ペナルティエリアを単騎ドリブル突破でえぐれるのでSBで使いたい。個人的には今オフにもプレミアのチームから引き抜かれるのではと戦々恐々としていたが、火もなければ煙すら立たなかった。いいんだいいんだ。気にするな。ブラックバーンの選手としてプレミアデビューしような。
若くて身体能力も高く、戦術理解にも長けているのであと5年はうちで頑張って欲しい。マンUのファンでリオファーディナンドのプレーを真似してるくらい大好きらしいので、万が一マンUからオファーが届いたらあっさり移籍するはず。
小ネタを挟むとすればチャントがひどいのでなんとかしてあげてほしい。
以下チャントの歌詞。あえて俺は訳さない。

Ryan Nyambe Ryan Nyambe
He drinks the vodka
He drinks the Jaeger
His d*cks  f*cking massive

現地ファン鬼畜かよ。

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3 Derrick Williams/デリック ウィリアム
常に陽気なナイスガイ。クラスに1人いたら楽しいけど、友達だと暑苦しくて面倒なタイプ。CBだがLSBが足りなくてLSBとして出場する機会もあった。確かに足は遅いわけではないので悪くはなかったが逆サイドのナイアンべに比べて攻撃性能が乏しく、左サイドの停滞感がすごかった。食いつきすぎてワンタッチのターンでさらっとかわされる。昨季はアダラバイヨがいたので出番が少なく、やっとの出場機会でも失点に絡むシーンがあり、昨季を通したパフォーマンスは決して良くはなかったがとにかく明るくいい奴なので憎めない。今オフにはMLSのチームから関心が寄せられたが残留し、開幕からスタメンで出場。あと口がデカい。

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5 ダニエル アジャラ/Daniel Ayala
ミドルズブラからフリーで加入。さすがスペイン人という足元の技術とパスの安定感で、プレスがこなければボールを運び、こなければ最後列から前線へ楔の縦パスをズバズバと挿し、相手の守備網を溶かしている。これだけビルドアップに長けた選手はいなかったし、TMが欲しかったタイプのCBなので、ベテランとはいえこのチームでの活躍が楽しみである。プレミアリーグを観ている人にわかりやすく例えるなら、全体的に鈍臭くしたラポルトという風味がある。

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15 バリー ダグラス/Barry Douglas
ウルヴズとリーズで昇格を経験したベテランがローヴァーズを昇格させるべくEwoodに到着。本職LSBは今までベルしかいなかったため、ベルのコンディションの如何に問わず、スタメンで出場できてしまっていたがダグラスの加入によって競争を促進し、スタメン争いに緊張感をもたらすのが目的らしい。
ウルヴズが昇格した年にはシーズン14アシストを記録したし、年月が経っていたとはいえ、実力は確かなので今季も2桁アシストは(密かに)期待している。

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17 アマーリー ベル/Amari'i Bell
昨季はほぼ全試合でLSBとして出場していた。むしろこのポジションにバックアップの選手がいなかったので割とやりたい放題だった感がある。プレーが良くないなと思っても、疲れてんなと思っても控えがいないからスタメンでしたね。しつこく、粘着質な対人守備が売りであれだけしつこくマークにつかれたら俺だったらついぶん殴ってしまうと思う。でもいい守備なんよね。課題は戦術理解力が乏しい点で、今季のローヴァーズはSBがハーフスペースに突撃したり、インパーテッドしてIHのように振る舞ったりすることが戦術的に求められている中でRSBのナイアンべはシーズン開幕からすんなりと内と外のスペースを賢く使い分けていたのに対し、彼はひたすら縦に爆走していたのでわかっていない感が満載だった。
ダグラスとの競争を通してもう一皮向けてほしい。もしかしたら今までのように試合に出られなくてグレるかもしれないが。

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26 ダラー レニハン/Darrah Lenihan
責任感が強く、誠実で頼れるイケメン副キャプテン(キャプテンのベネットがひたすらベンチなのでほぼキャプテンみたいなものだが)。ビルドアップも問題なくこなし、競り合いの場面でも闘志を剥き出しにして果敢に戦う、まさにBlue&White armyを体現する漢である。ターンして前を向かれないように少し距離を開けて対応したり、相方のCBが抜かれることも想定したポジショニングなど、ハートは熱いが、非常にクレバーで冷静な状況判断ができる、少なくともデリックよりは危機管理に優れたCBである。しかも、ダラーの何がいいって、チームが苦しい試合運びをしているときや大事な局面でセットプレーを決めてくれるところなんですよね。抱いてほしい。
90分通して、声を出し続け叱咤激励を繰り返す頼もしいディフェンスリーダー。
ただ、クラブのHPに載っている身長178cmは絶対嘘だと思う。(もっとあるはず)

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28 スコット ウォートン/Scott Wharton
昨季はリーグ2のノーサンプトンにローンで武者修行し、37試合中33試合に出場しリーグ1昇格に大貢献。その活躍が認められやっとローヴァーズに復帰。アカデミー育ちのCBなだけあって現地ファンの中でも期待度が高く、CBの補強としてアジャラ獲得の報道があった際には「そんなんいらないからウォートンを戻せ」みたいな意見はかなり多かった。
しかしながら、レニハンは鉄板だし、デリックも開幕からかなりいいパフォーマンスを見せているし、アジャラのビルドアップやパスセンスはスペシャルワンなので、彼に出番があるかは怪しい。23歳といい年なのでそろそろしっかりとした実績をつみあげたい。
しなやかで視野が広く、もっさり感がないのは他のCBにはない強みだとは思うけどね。

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31 エリオット ベネット/Elliott Bennett
MF登録なのだがほぼMFとして出場しておらず、SBとしての出場の方が多かったのでこちらに書く。ブラックバーンローヴァーズの現キャプテン。元の本職はボランチだが求めがあればどこでもプレーする万能MF。しかし、年齢を重ねるとともにプレーのクオリティが低下しつつあり、SBで出場したときも実際はかなり微妙だった。ボランチは強力なタレントが揃っているのでよほどのことがない限りは本職のボランチで出場することはないだろう。というか、そんなことがあってほしくない。
現地ファンのTwitterに「結局ベネットの最適のポジションはMF?いや、CB...?いやSB...?、ベンチかwww」というネタがあったのでおそらくベネットの微妙さを感じているのは俺だけじゃなかったらしい。
とはいえ、「俺は試合に出られなくてもチームのために自分にできる最善を尽くすよ」という旨の発言をしていたので素晴らしい人間性を持っていることは確かである。今季は若手が多いので教育係としてピッチ外で頑張ってほしい。

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