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つかの間の停泊者

現在、銀座メゾンエルメスフォーラムでは、“つかの間の停泊者”という展覧会が開催されています。

こちらは、アートにおけるエコロジーの実践を問う展覧会、“エコロジー:循環をめぐるダイアローグ”の第2弾に当たるそうで、

「自然と人間のエネルギーの循環や対話」をテーマに4人の作家を紹介するものです。
⭐️

まず1人目は、ニコラ・フロック。

パリを拠点に活動するアーティストです。

本展で出展されていたのは、どこか幻想的で、『ロマンシング サ・ガ』感(?)のある作品の数々でした。

実は、ニコラ・フロックはダイバーでもあり、自らダイビングをして制作をしているのだとか。

これらは実際に水中で繁殖している海藻の姿なのだそうです。

本展ではフランス・ブルターニュ地方だけでなく、日本の海で撮影されたものも紹介されていました。


また、こちらの《La couleur de l’eau(水の色)》も、フロックによる作品。

さすがに、こちらは絵画作品かと思いきや、こちらもダイビングして撮影された写真作品とのこと。

フランスのとある海岸沿いを一定の距離ごとに、さらに、水深5mずつ撮影したものなのだそうです。

水が青から緑色に変わっているのは、都市部からの排水の影響なのだとか。

グラデーションの美しさに目を奪われてしまいましたが、その現実は、あまり好ましいものではなかったのですね。


続いて紹介されていたのは、保良雄(やすら たけし)さん。

農業や養蜂などを営みながら、アート活動をしている作家です。

本展には全部で3つの作品を出展されていましたが、中でも一際目立っていたのが、巨大な円柱形をした《noise》という作品。

その素材は、保良さん自身によって、福島県産の稲藁から作られた和紙なのだそうです。

内部には、12個の照明が設置されているそうで、会場内に設置された太鼓の上に、時おり、水滴が落ちることで、

その音に反応して、ランダムに照明が点灯する仕組みだとか。



なお、その点灯する様子は、和紙の隙間から、あるいは上のフロアから少しだけ覗き見ることができました。

3人目に紹介されていたのは、オークランド出身のケイト・ニュービー。

本展では、現在住んでいるというテキサスと、栃木県益子市でそれぞれ制作した新作を発表しています。

テキサスで制作したのは、1000ピースあまりのウインド・チャイム。

そして、益子で制作したのは、陶土の上で身体を自在に動かして、指や肘、足の痕跡をそのまま形にした作品です。

それぞれ、《呼んでいる、呼んでいる》、《いつも、いつも、いつも》というタイトルとのこと。

『リンダリンダ』や『YAH YAH YAH』のように、同じ単語を繰り返すのが、ケイト・ニュービーのスタイルなのでしょう。



最後に紹介されていたのは、フランス人作家のラファエル・ザルカ。

彼は10年以上にわたって、「斜方立法八面体」なる形を研究しているそうで。

本展にはそれをもとにした作品が出展されています。

また、彼はスケボーにも関心があるそうで、

《ライディング・モダンアート》という作品も制作しています。

実は本展の関連企画として、東京日仏学院において、

“ライディング・モダンアート ラファエル・ザルカ展”が開催中です。

《ライディング・モダンアート》とは、街中のパブリックアートを使って、スケートボーダーがアクロバティックな滑りを見せる姿を収めた写真シリーズ。

もちろん、スケートボーダーは、パブリックアートの作者に許可など取っていません。

スケートボーダーの好感度が、ただただ下がるだけの作品です(笑)。

一部のスケートボーダーにとっては、世界的なアーティストの作品も、ただのパークに過ぎないのでしょう。

リチャード・セラの作品も、ご覧の通り↓

ついでに、落書きもされています。

これからパブリックアートを作る作家の皆様、くれぐれも、スケボーしたくならない形状のものをお考え下さい。

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