Z世代のコミュニケーションって?【会期終了】『新川玄規 長澤花咲 2人展』について
こんにちは。アーツトンネルのタカキです。
今回は、先日、福岡県田川市にあるいいかねPalette内アーツトンネルギャラリーで行われた展覧会『新川玄規 長澤花咲 2人展』を通じてZ世代のコミュニケーションについて感じたことを書いていきます。
2人展の2人はZ世代
京都芸術大学大学院に在学中のアーティスト新川玄規さんと、筑豊の広告代理店で働きつつアーティスト活動を続けている長澤花咲さん。2人は大学時代からのパートナーです。
2人はまだ20代前半。そう、Z世代です。
新川さんは「作品としての肉体」をテーマに、肉体や身体の一部などをモチーフにした絵画や立体作品を制作します。
一方で、長澤さんは社会の中に溶け込んだ商品やサービスのデザインを引用し、広告とは全く異なる視点によって、作品に落とし込んでいきます。
人そのものを構成している肉体。
そして、距離に関わらず人に情報を伝えるツールである広告。
一見、2人の作品はお互いに全く関係しないように思えます。しかし、2人にお話を伺うと「コミュニケーション」という共通のキーワードがあることに気づきました。
作品に共通する「コミュニケーション」というテーマ
肉のようなものを捏ねて作ったような形、遺体のような色。新川さんの立体作品は「生きているのか、死んでいるのかわからない、人間の肉体」を表現しています。
それは、新川さんが人と話をしている時に、コミュニケーションが一方的になっている状態、つまり、相手がどう思ってもお構いなしに話し続けたりする状態を経験した時に、インスピレーションを得て作られたそうです。
一方で、長澤さんの作品は、就職活動の時に生まれました。エントリーした会社は、履歴書をもとに面接を行います。長澤さんは「一体、履歴書で私の何がわかるのだろう?」と感じたそうです。
そこで、履歴書に書かれていない自分のことを伝えるため、よく配られているポケットティッシュのデザインで自分のことを書いた作品を作り、面接官に配ったそうです。
Z世代のコミュニケーションって?
僕が2人から感じたのは、コミュニケーションに対する真摯な姿勢でした。
新川さんも長澤さんも、自分たちの周りに溢れるコミュニケーションに対しての違和感や葛藤から、インスピレーションを受け、作品が作られています。
SNSでのコミュニケーションが普通になった今、「炎上」「バズる」「フォロー」「いいね」など、会話の形式や他者との関係性の在り方が乱立していると僕は感じます。
デジタルネイティブであり、学生時代からSNSに慣れ親しんでいるZ世代の人たちは、乱立したこれらの中で育ってきました。
しかし、彼らは、それらのコミュニケーションや関係性に違和感を感じ、葛藤しているのだと、僕は感じました。そして、僕も同じようにコミュニケーションに違和感を感じ、葛藤を感じ、今まで生きてきています。
価値観が違う、相手が使う語彙が理解できない、それでも続けられるコミュニケーションによって、人は何を伝え合い、理解し合うのか。そもそも、伝えることも、理解することも放棄しているのかもしれません。
ただ、環境や社会状況が違うだけ
この展覧会を通じて、感じた作品のおもしろさは、作品を通じて垣間見える2人の視点と、その視点に共通したコミュニケーションに対する違和感や葛藤でした。
そして、その違和感や葛藤は、世代に関わらず、誰もが感じ得ることです。どの世代でも、コミュニケーションに対する違和感や葛藤はあります。
僕には2人が作品制作を通して、その普遍的な課題と向き合っているように感じました。
どの作品も見応えがあって、良い展覧会でした。
新川さんの過去作品、長澤さんの新作も展示されていて、テーマやアプローチが変化していることも感じられてよかったです。
これからの2人の活動が楽しみです。
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写真提供:長野聡史(長野聡史写真事務所/アーツトンネル)