街で猫を見かけなくなった
少しふてぶてしげに
なにやらものをよくわかったような顔をして
そのままぷいといなくなる
あの街の猫たちに
出会うことはなくなった

街で猫を見かけなくなった
悟りすましたように
遠くを見つめて寝そべっていたのに
突然
高い壁の上に魔法のように飛び上がる
あの猫たちは
もうどこにもいない

街で猫を見かけなくなった
ときどき気まぐれに
こっちをじっと見て
にゃあと話しかけてきて
でもいつもそのまま立ち去っていく
あの猫たちは
もう夕暮れどきの幻のように
消えてしまった

またひとつ
都会から野生がなくなった

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