雨宿り

 サンフランシスコは、霧がよく出る気候なので雨もよく降る。特に十二月から二月ぐらいにかけての冬の間はrainy season(雨期)と言われ、雨がよく降って寒かった。来たばかりの時は、そういう気候のこともよく知らずに、急に雨に降られてうろたえていた。

 ある時、学校の帰りだったか、あまりテンダーロインのポークストリートのあまり治安の良くないエリアを歩いていると雨が降って来た。アラブ系の店の鉄格子の入り口の前に少しスペースが空いていたので、雨宿りをしようと立ち止まった。すると、中から(どんどん!)と音がしたのでびっくりして一歩下がったら、中から声がして、(英語で)「何をしてる! 出て行け!」と叫ぶ声がした。声だけで姿は見えない。その頑丈な鉄の引き戸は、来る物を拒む感じがあった。アメリカ人=フレンドリーというイメージがあったが、エリアによってはそうではない。エリアによってアパートや店の入り口に鉄格子がかかっているところと、かかっていないところがある。危険な所かどうかはそれをみれば何となく察知出来る。何年も住んだ後で、その辺りはドラックディーラーやホームレスがいるエリアで、歩いている時も多少警戒しなくてはいけないことがわかった。だからそこで商売をしている人も見知らぬ人を警戒していたのだろう。だが、住み始めた当初はどのエリアが危険とかがわからなかっので、「出て行け!」と言われた意味がわからず、(ただ雨宿りさせてもらおうと思っただけなのに…)、と思っていた。

 「警戒している」、という意味では、マクドナルドなどのファーストフード店のトイレは、エリアによって鍵がかかっていて、レジで頼んで鍵をもらうか、トイレにクオーターコインを入れてドアを開けないと入れない所もある。また、本屋や服屋では、バックパックを持っていると、入り口でバックを預けて、引き換えに番号札をもらって買い物するシステムの所もある。バックパックに商品を入れて万引きする人がいるためだが、店によっては人や持っている鞄をみて、「そのまま行っていいよ。」と言ってくれるところもある。

#cakesコンテスト


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