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詩集

31
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2023年3月の記事一覧

一週間(詩)

一週間(詩)

「一週間」

過去と未来が通り過ぎていた。

それは
誰もいないホームで
目の前を
圧倒的に通り過ぎる
長い車両の特急列車。
灰色の光の帯。
轟音。
歪んだ、時間という概念。
まだ、続く。
どこまでも走り過ぎる列車。
影を追うことさえ出来ない。

1日経ち、
2日経ち、
まだまだ列車は走っている。
3日目。
目が慣れてきたのか
窓の輪郭がなんとなく見えてくる
4日目。
人影が見える。
5日目。

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父を想う

父を想う

遥か
1万m上空から見えるのは
漆黒に染まる
故郷の大地と
汚れなき群青色の空
そして
それらを遮る
真っ直ぐな夕焼けの炎

思い起こせば
実に長い間
いつも二つの色が
心の内に在って
決して交わることがなかった

恩讐の彼方に
二十一年の歳月をかけて
洞穴を貫通させた
市九郎と実之助の
一振の槌の力は
目の前に在る
夕焼けの炎を想わせる

それは祈り
それは懺悔
それは
数奇な親子の縁

ほら

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