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詩集

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詩を綴っていくマガジンです。
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2022年8月の記事一覧

兄妹(詩)

兄妹(詩)

嵐は過ぎ去った。
後には大きな爪痕が残った。
そこに二人の小さな兄妹が佇んでいた。

嵐は、兄の大切にしていた名誉を奪い、妹の大切にしていた聖書を燃やした。

優しかったおじいさんは、戦地に赴いて、仕立て屋の友人に銃を向けた。

おばあさんは、天に召される前に、
虚空に向かって、そっと不義を告白した。

猫は、誰かのそばにいることを諦めて、大きな伸びをした後、屋根から飛び去った。

兄妹

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夕日

夕日

かつて、母の車椅子を押しながら見た夕日。もう残された時間はわずかだった。目の前には鮮やかな真紅の光があった。その光は僕と母を照らしていた。
僕は、同じく支え合う群像を見た。それぞれに夕日に向かって歩き続ける。それぞれの人生。 

「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです」
遠藤周作は、沈黙の碑にこう記した。

1人で歩く。
2人で歩く。
3人で歩く。
1匹と歩く。
2匹と歩く。
3

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