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「心で繋がる。心が繋がる」

ふと、なんらかの“空気感”として、それを感じることがある。きっと、誰しもあるのではないだろうか?「この人、疲れてるな」とか「なんか、嬉しそうだな」「笑ってるけど、機嫌悪そうだな…」と、直接その人から何があったかなんて聞かくても、なんとなく、その人の雰囲気から、内面を察すること。

俺は品川駅の高輪口を出て、妻と二人でホテルに向かっていた。駅の反対側のカフェで、ブランチをした後だった。長いし過ぎてしまい、チェックアウトの時刻が迫っていた。

日曜日の正午に近い時間で、駅前の大きな通りの信号には大勢の人達がいた。家族づれ、若者、そして品川という場所柄だろう、外国人も多かった。

信号が青になると、一斉に人々は歩き出し、乾いた路面を歩く靴の音が、冬の空気の中に無機質に響きながら、ビルに囲まれた空に吸い込まれていく。

信号を待つ車やバイクの音は、東京という街がそうさせるのだろうか?田舎で聞くそれよりも、どこか忙しなく、苛立ちが混じったような尖った音として、俺の耳に届く。

自分の周りにいる見知らぬ人々が話す会話の内容は聞き取れないが、その漠然とした無数に織りなされる話し声も、街そのものが放つ騒音と一体化していた。自分自身もその騒音を構成する一つのなっているくせに、俺はその騒音から逃れるべく、足早に歩いていた。

信号を渡り、ゆるい坂道を上り始めるあたりで、俺はふと、それを感じた。空気感が変わった瞬間をキャッチした。

「どうしたの?」

妻が不意に立ち止まった俺に声をかける。

俺はうまく答えられず「いや、なんでもない」と答えて、また歩き出した。

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