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行きたいのに、行きたくない

沢木耕太郎の名著「深夜特急」。この話は僕もnoteに何度か書いてるけど、とても影響を受けた本の一つ。

今と違い、どこにも行ったことのない僕に、本の中で世界の景色や匂いを感じさせてくれた。

しかし、メインの深夜特急のシリーズとは別に、前後談などを書いた書籍がある。

「旅する力 ー 深夜特急ノート ー」。

これを読んだのはもう数年前だけど、これを読んで非常に感銘というか、共感を得た部分がある。

それは旅の直前になると「行きたくなくなる」という話だ。

あの名著「深夜特急」の旅の他にも、沢木耕太郎さんは日本中、世界中を旅してるのだが、出発の直前になると、なんとなく「行きたくない」という感覚になるのだという。

「事故でも起きて飛行機がキャンセルにならないかな?」とか、そんなことすら思うのだという。

こんなおかしな話はない。

なぜなら「旅」というものは、誰かに無理強いされたとか、会社の出張命令ではないのだから、「行きたいから行く」はずなのだ。

自分で決め、自分で企画して(取材依頼ならば、企画や手配は依頼主の手配だろうけど、最終決定は自分だ)、自分で手配する旅。

なのに、行きたくなくなる?

この感覚は、わかる人にはわかるだろうけど、わからない人にはまったく想像つかないというか、意味がわからないかもしれない。

しかし僕はわかる。沢木耕太郎さんの旅と比べるのはおこがましいが、僕も日本全国、世界も、旅をしているのだけど、実は毎回そんな気持ちになるのだ。

行きたくないというか、途端に激しく「めんどくさい」という気持ちになるのだ。

必ずそうなる、とは限らないけど、結構な頻度で起こる。

例えば、僕は去年数年ぶりに海外旅行へイタリアへ行ったが、実は三日くらい前から、なんだか「行きたくない」ような、奇妙な気だるさの中にいて、そのせいでパッキングの準備とかは前日にあわててやった。

海外だと特にそうかもしれない。長期で、大掛かりなほど、「めんどくさい」という気持ちがむくむくと出てくる。

もちろん「ワクワク」しているし、まだ見ぬ世界への「ドキドキ」感のスリルや緊張感はある。なのに、「めんどくさい」「行きたくない」が湧いてくるのだ。

10日くらい前から、心の中に僅かに芽生えたそんな感覚は、前々日くらいにピークになって、これくらいになる。

頭の中の割合をグラフにしてみた。

楽しい旅のはずが、かなりネガティブな気持ちに傾いている。不安や緊張感は、国内と国外、期間などでも変わるけど、それもネガティブ感情と捉えると、気持ちの半分以上は「行きたくない」という状態だ。

しかし、そうはいっても宿の手配、交通の手配、仕事の都合などが諸々とついているので、今更キャンセルなどできない。だから、

「行くしかない」

という状態になる。まるで何かに追い詰められるようだ。

僕の場合だと、例えば「関西でワークショップを開催する」とか「地方でリトリートイベント」など、何らかの仕事を交えると、こういう気持ちはほぼほぼない。

これも変な話で、「出張」だとストレスになっても良いものだけど、逆に「仕事がある」とか「待ってる人がいる」という方が、ほとんどネガティブな感覚にはならず、「おし!行くか!」となる。

でも、純粋に「旅」の時だ。「行くしかないなぁ」という、緩慢なスロースタートを切ることになる。

どうしてだろう?といつも自分が不思議だったし、そんな自分がなんだか「おかしいのかな?」とすら思っていた。

本当はさして行きたくもないのに、現実からの逃避とか、何か特別なものを得ようとしているとか、自己価値が低いから、旅で自分探ししようとか、そんなつもりなのかと内観した。

しかし、沢木耕太郎さんもそうだと読んで、とてもホッとしたというか、「そんなもんなんだな」と安心した。

あ、今日のnoteにはなんの答えも結論もないです(笑)。ただ、そういうことってあるんだよね?わかる人にはわかるでしょ?ってだけです。

どうしてそうなのか?はわからない。僕自身、自己分析を何度も試みたけど、単純に「恐れ」としか出ない。

その恐れは、旅でのトラブルなどの恐れではない。それは「不安、緊張感」として明白。

そうではない、漠然とした恐れ。ひょっとすると、「自分が変わること」への恐れなのかもしれない、と思ったりもする。

旅は人を変える。新しい人、土地、そして自分自身との出会い。

ひとり旅の間は、当たり前だけどずっと一人だ。お店の人とか、そういうくらいの会話はあれど、基本的に話し相手は「自分」しかいない。だから嫌がおうにも自己が深まる。

レンタカーを借りて、山奥の巨石の古墳とかを目指す2時間。ずっと考え事してたり、自分と語らっているのだ。

変化への恐れ。毎回、密かに僕は潜在的に感じているからこそ、「行きたくない」と思っているのかも知れなし、まったく違う理由かも知れない。

でもこれからも僕は、旅に行く時はいつも「はぁ〜、めんどくせぇな」という気持ちを感じながら、旅に出るのだろう。

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