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サビオ?

「痛たたたっ、ちょっと、指切っちゃったから“サビオ”ちょうだい?」

などと誰かから言われたとして、あなたは対応ができますか?

僕がまだ20歳そこそこの、田舎から東京に出てきたばかりの頃の話だが、バイト先の仲間に「サビオ買ってくるわ」と言ったら、

「は?なにそれ?サビオ?」

一同唖然。そこで自分の使っていた「サビオ」が、ある種の“方言”のようなものだと初めて知った。その時の衝撃ったら…!!

ちなみに、サビオって、なんだと思います?

冒頭の文章がヒントで「指を切った」時に使うといえば?

そう、絆創膏です。

正解した人は今日はとても良いことが起きるでしょう!
ちなみに不正解だった人は、今日はそこそこ良いことが起こるでしょう(笑)

北海道では、絆創膏を「サビオ」と呼びます。

絆創膏のことをバンドエイド🩹、なんて言い方も一般的ですね。北海道でもそれで通じます。しかし、正式名称としては絆創膏なのです。

なぜならバンドエイドとは、医療、ヘルスケアの世界的企業である“ジョンソン・エンド・ジョンソン”の『商品名』だからです。

絆創膏、という名称を、商品名の認知度が凌駕してしまったという実例です。

じゃあ、だったらサビオってなんなのさ?ってことですが、実はこれも商品名だそうです。

ライオン(株)で製造していた絆創膏で、北海道ではメジャーだったようです。だから商品名が実名を凌駕したのです。

ただ、僕は生まれて、物心ついた時からそれ(絆創膏)を「サビオ」と呼んでいたので、何の疑問も抱いていませんでした。コップとか、ライターとか、リモコン、と同じように、サビオという物が存在していると思ってました。

それが「北海道独自の呼び名」と知ったときは、本当に驚いたものです。

ちなみに、調べてみるとこんなものがありました。

https://www.aso-pharm.co.jp/map/

驚いた…。これ、まじで?カットバンとか、リバテープとか言うの???? (誰か教えて、すげえ気になる)

サビオの話に戻るけど、サビオが北海道独自のものだと知った時は、東京に出てきて、一丁前に都会っ子を気取ってた僕にとってショックでしたね。

ちなみに、もし尋ねられても「サビ“オ”」なのか「サビ“ヨ”」だか、正式な言葉も分かってなかった。早口で言うと「サビョォ」って聞こえるからだ。誰かの小説のワンシーンで、小さい子供が“「ゴマシオ」とうまく言えず「ゴマシヨ」と発音した”、というくだりを読んだ時、僕は真っ先にサビオとサビヨを思い出した。

さて、日本全国、さまざまな方言、訛りがあるけど、北海道って、少ない方だと思います。系統的には東北に近いイントネーションやアクセントあるけど、基本的にはいわゆる『標準語に近い』とか『ほぼ標準語』と言われてるし、そう思う。

なぜなら明治以降の開拓民などの、全国からの寄せ集めによって成り立っているので(我が大島家も、ひいじいちゃんの頃の京都からやってきた)、結局共通認識の言葉になったのだと思う。

しかし、それでも一部は方言があるし、サビオとかザンギとか、商品名なのか名称なのかよくわからなくなってしまったもの多い。

ちなみにザンギは、昨今は「北海道居酒屋」とか「北海道物産展」のようなものが増えたからメジャーになってきたが、知らない人のために書いておくと、いわゆる「鳥の唐揚げ」だ。
(これは諸説があって、鳥からとザンギはレシピが違う!という人もいるが、ザンギのレシピ事態が家庭やお店によって違う)

これも僕が東京に来た頃、居酒屋でパッとメニューを開いて、写真だけ見て、

「すいません、生ビールと“ザンギ”ください。あ、お前もザンギ食う?」

と言ったら、店員にも仲間にも「???」とされて、大恥をかいた記憶がある。

初めから、自分が「方言がある」と知っていれば、気を付けることができたのだけど、北海道の人は、親の世代からみんな「北海道はほとんど方言がなく、標準語です」みたいに教えられるから、まさか自分の言語が訛ってると思わなかったので、けっこう若い頃はそれで恥ずかしい目にあった。

今の時代は、方言とか、訛ってても気にしないというか、むしろそれが「個性」につながるような風潮があるけど、当時は東京で関西弁以外の言語を使うと、あからさまに嘲笑されることが多かった。(関西弁はテレビで関西芸人がしゃべるおかげか、認知度は高いし、むしり重宝がられ、それだけで「面白い人」と思われる節があった)

北海道の方言で有名なのが「なまら」だろう。これは「とても」とか「すごい」「超」「めっちゃ」と同じ意味だ。

しかし、実は他にもたくさんあるが、僕自身はそれが「方言」だと自覚せずに使ってちょっと恥ずかしい思いをした言葉。

例えば「いずい」。
意味は、いごこちが良くない、状態が良くない、という、絶妙な感じだ。決して「悪い」わけではない。「良くない」のだ。わかる?この感じ。

「しゃっこい」
 意味は、冷たい、なんだけど、冷えたジュースとか麦茶のような温度ではなく、明らかに「氷点下以下」の温度に使われる。雪とか、氷とかを触った時に使う。

「ちょっきり」
意味は“ちょうど”だ。Just。「5000円ちょっきりね」みたいな使い方をする。これも、居酒屋なんかで割り勘の際に使ってしまい、周りから「はぁ?」とされた。

「なげる」
 意味は、もちろんボールなどを投げる、という意味にも使うけど、「ゴミを捨てる」際に、北海道は「ゴミ、投げといて」というのだ。「ゴミ捨て」ではなく「ゴミ投げ」と言う。

まだまだある。

疲れた時に「こわい」って言ったり、交換するときに「ばくる」と言ったりする。「俺のプリッツとお前のパイの実、一つバクらない?」みたいな。

他にも「みったくない」「はんかくさい」「めんこい」「しったけ」etc。こうして書いてみると、実にいろんな方言があるのだと思う。

あと、これは当時の若者言葉かもしれないけど、同い年、つまり「タメ」を、“ドンパ”って言ったりしてた。「え?〇〇年生まれ?しったけ俺らドンパだね」って感じで。

なんでこんなことを書いたかと言うと、出先でちょっと足の爪が割れて痛くて、絆創膏を買おうと思って、コンビニに行くと、そこには「バンドエイド」が売ってた。

なんだか漠然とだけど「あ、サビオじゃないんだよな…」と、もやっとして、その後妙にしんみりした気持ちになったのだ。

なんでサビオを思い出してしんみりしてしまったのかはわからない。

ただ、サビオをきっかけに、方言とか訛りに関していろんなことを思い出した。そして自分が東京に出てきたばかりの頃は、微妙な方言を気にしていた時期があったなぁと、懐かしくなった。

ちなみに今での時々、妻や息子から「なんかイントネーションおかしくない?」と、ちょいちょい言われる。自分ではなかなかわからないが、指摘されて初めて「そういえばちょっと違うかも?」となる。まあ、今はそれで恥ずかしくなったり、治そうと言う気持ちもない。

どうして昔はあんなに嫌だったのだろう?多分、僕は自分の全部が嫌いだったからだろう。自分の顔も、体型も、髪も、声も、名前も、そして、自分に付随するあらゆる情報を否定していた。そこには僕を育んだ北海道とか、自分の生まれ育った街とかも入っていて、言葉の訛りはコンプレックスだったのだ。

今、自分が好きか?と聞かれたら、正直「ようわからん」と答える。ただ、確実に嫌いではないし、たぶんそれは「好き」にウェイトが寄っていると思う。

無理に「自分を好きになる」必要なんてないだろうけど、それでも「自分を嫌い」ってのは、やはり悲しいことだと思う。

もちろん、自己否定があったから、行動力が生まれたし、負けん気が生まれたから、結果として全部オーライだ。

今、自分のことが嫌いだって人は、急がないでいいよと言いたい。

自分を好きになろう、やりたいことやろう、好きなことやって生きていこう、みたいなメッセージが多いけど、そんな外の言葉に踊らされず、目の前のことを丁寧にやっていけば、だんだんと自分のことを許せるようになる。

最後に余談だけど、「北海道限定」の商品ってのが実はけっこうある。これはご当地グルメとかなじゃくて、大手のメーカーが販売しているもの。

例えばサッポロビールの「サッポロ・クラシック」とか、丸ちゃん「焼きそば弁当」。キリン「メッツガラナ、メッツグレープフルーツ」など。

こういうのって面白いと思う。西日本(名古屋以西)ならどこでも売ってる清涼飲料水の「愛のスコール」なんてのも、あちこち行くようになってから知ったけど、「そこに行かないと買えない!」みたいなやつって、僕は好きだ。

だから当然ご当地グルメなんて大好きだし、旅の醍醐味だと思う。

でも最近は、東京にいても北海道物産展とかならまだしも、コンビニでもサッポロクラシックが買えたり、焼きそば弁当が買えたりするので、なんだか便利なようで、どこか物足りないというか…、そこでしか味わえない「付加価値」が失われるのは、ちょっと寂しいなぁと思う。

そこに行くから味わえる。そこに行くから体験できる。便利な世の中だから、流通のおかげでどこでもいつでも味わえて、スマホの動画で疑似体験できるけど、やっぱなんだかなぁ…。

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2023年 1月15日  東京 、20日 京都 「静寂の会」

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