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クリエーター(トレーダー)様と遊ぶ企画 わらしべ長者・第七章 “伝説”

岡山を出た私は鳥取に着いた。

鳥取も岡山に負けじと色々な伝説がある。有名なのは“天女の話”で一人住む百姓の男が、一人の天女と出会った話が伝承となって今でも語り継がれている。
私はふとしたきっかけで羽衣を手に入れたのだが…これは私が持っているべきではない。真の所有者に返すべきだ…と考えたわけだ。

私は鳥取の駅に着いたのは夕方に近かったので、近くのホテルに泊まる事に。
室内は殺風景ではあったが、鳥取の静かな風景が窓の外に映し出さされている。しばらく見惚れていたが旅の疲れがピークにあった私はすぐに睡魔に襲われてしまい、そのまま深い眠りについてしまった。

“打吹山…打吹山に来て…”

夢の中で誰かが囁いている…打吹山?“うつぶきやま”と読むらしい。誰かに呼ばれるのは2度目だ…朝、私は鬼の涙の光で目が覚めた。誰かが私の事を呼んでいる…打吹山で誰かが私を待っている。私は打吹山にハイキングする事にした。

私は駅でレンタカーを借り、山の駐車場まで来た。打吹山は標高204mくらいの低い山できちんと整備されているのでハイキングにはとても良いスポットだ。
ただ…運動不足はあったようで、山頂に着いた時には汗だくになっていた。

『ふぅ…暑いですね。頂上から見る景色も素敵で…。』

食事をしようと大風呂敷を広げていた私は同じハイカーらしき女性に声をかけられた。

『あ、初めまして…私は粋蒼って言います。中国からの留学生です。貴女も天女伝説に興味があって?』

粋蒼様、有難う御座いました。

私は正直に話した。この山である人物に呼ばれたことを。

『え?そうなんですか?私もなんですよ。頂上である人がいるからその人に会え…って。確か天女はこの山で天に登って行ったんですよね。あ、あったあった…これだ!』

と、彼女は祠?墓碑?らしきものを見つけた。

『あの…貴女、確か羽衣をお持ちでしたよね。夢の中の人が言ってましたから。』

私は鶴が織った反物を渡すと粋蒼さんに渡した。彼女はそれを祠にキュッと結んだ。すると祠からボゥ…と女の人が現れた。

“あぁ…やっと天に帰る事ができます、有難う御座いました、私の子孫の子達。”

天女は話を続けた。

“夫に羽衣をとられてしまった私は帰る術もなく夫と暮らす事になってしまったんです。私は夫に羽衣を返すよう何回も言ったんですが、夫は言葉をはぐらかしては適当な事を言って誤魔化すような事ばっかり。ある日私は隠してあった羽衣を家のすみで見つけ急いでこの山に来てやっと帰ることができ、天に登る事に成功しました。しかし私自身心残りな事もあったんです。それは地上に残して来た二人の子の事…私は再び地上に降りて子供達を探していたのですが結局見つけられずに…私も力尽きてしまい…でもやっと二人を見つける事ができました、一人は貴女…粋蒼、もう一人は貴女です。私はずっと待っていたんです。”

私は無作為に呼ばれた訳でなく彼女の波長が合っていたからだったからだと思った…血縁という波長で。 

“さて貴女…萬屋金兵衛は藁を持って旅に出た訳ですが旅の途中で私の子と知り合い、結婚した。私の子は金兵衛と一緒に旅をしたんですよ。”

今明かされる!私の血筋…ゴシップ雑誌だとそんな見出しがつきそうな瞬間だった。金兵衛は旅の途中で天女の子と知り合った…二人は意気投合し、結婚した訳か。

“さて粋蒼…貴女は金兵衛の子孫に渡すべき物を持ってきましたか?”
『はい、私の家にあるものですけどね…』

粋蒼さんは石の塊と…食べ物を持ってきた。

『これは月光石と言ってこの世では採れない鉱石でその原石。もう一つは兵糧丸…昔の非常食で桃太郎がおばあさんから持たされた食べ物がこの兵糧丸…とも言われているけど吉備団子って言う方が有名かもね。貴女は羽衣を、私は石と吉備団子をここに運ぶのが使命だったわけだよ。これでご先祖様も天に帰れるね。』

“我が子の子孫達、本当に感謝します…私に心残りはありません。有難う…有難う…”

と天女は天に登って行った…。

さて私は…金兵衛の子孫であり、また天女が産んだ二人の子供のうちの一人の子孫でもあったとは!私達は天をボーっと最後まで眺めていた…

粋蒼様のイラストを掲載します、有難う御座いました!

・鶴の羽の羽衣→天女へ返却
・粋蒼さんとの出会い→月光石の原石と兵糧丸(吉備団子)三個

・銘刀 吉備津の片割れ(雄刀)

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