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クリエーター(トレーダー)様と遊ぶ企画 わらしべ長者・第五章 “閑話休題”

私は訳あってある人の家で居候している女だ。

居候しているのにも理由がある。この間、私はある人から斧を貰ったのだが、今のご時世この斧を持ち歩くには警察が発行する登録所持許可証なる物が必要で私はあれから岡山県警に行き、斧の所持許可を申請したのだった。ただ許可が降りるのに時間がかかる…というのだ。ホームレスの私にとって長期滞在できる余裕がなく、申請が降りるまで住まわせてもらっている訳だ。

私は居候なのでだらける訳にもいかず、居候先の主人がいない間家事をするのが条件だ。
主人…テルというのだが、県警で働く婦警さんではあるが仕事とプライベートでは全然違う。部屋に帰ればだらしなくボリボリとお腹を掻いていたり、洗濯物も乱雑にポイ、みたいな感じだ。最初案内された時は酷かった…食器は洗ってない、洗濯は溜め込む、さらにゴミは分別してない…とにかく片付けが大変だった。1日かけて彼女の部屋を掃除して綺麗にした。一応私だって一人暮らししてたから家事スキルはあった…はず。

ある日岡山は雨ばっかり降っていてやむ様子もなかった。私は傘をさし、近くにある商店街に立ち寄り色々買い込んだ。今日の晩御飯、何にしようかな…とか考えながら。ふと河川敷を見ると川辺の近くでもがいている一羽の鶴を見つけた。どうやら脚がゴミ屑に挟まってしまい、動けない様子だった。しかも雨で川は増水していて危ない。

私は鶴のところに急いで降りて行ったのだが鶴は私に対してかなり警戒をしているようで威嚇してくる。私はそれでも落ち着かせてゴミ屑から鶴の脚を抜く事に成功した。鶴は鳴いてバサバサと飛んで行った。
そんな雨の日から一週間経ったある日部屋のインターホンが鳴ったので、はーい!と慌ただしく玄関に出た。
すると…和服姿の可愛い女の子が立っていた。

hinao様、有難う御座います!

『突然の訪問、お許し下さいませ、先日は助けて頂き、有難う御座いました。』

と彼女と謝ってきた。助けた?私が?女の子を?訳がわからなかった。

『一週間前の大雨の日、貴女は私を助けてくれたじゃないですか。あの時はお礼を言えず、私自身も怖かったのですぐ逃げてしまったんですけど…申し訳ありませんでした。あ、申し遅れましたが…hinaoと言います。』

あの時の鶴!私は思い出した。

『はい、あの時の鶴です。実は私…お詫びの品としてこれをお持ちしました。私達鶴の羽を束ねて編んだ羽衣です。鶴の羽は見た目は白いのですが、編み込むと透きとおったシルクのようになるんですよ。今と違って昔は私達の羽を狙って捕まえようとする欲深な人間が多かったんですよ。どうかお納めください。』

私は羽衣を受け取ると彼女、hinaoは鶴の姿になり空に飛んで行った…

『ただいまー!相変わらず手際がいいね。今日の晩御飯は?カレーライス?私、カレーライスが一番好きなんだよね。あれ?それなぁに?』

部屋の主人、テルはキラキラと光る反物を指差した。

『え?鶴から貰った羽衣なの?綺麗…キラキラしてるし、透き通ってる…せっかくアンタが活躍して得た報酬なんだからさ、もらっておきなよ。あ、そうだ!この間の斧と刀、申請が降りたよ。明後日、登録証が発行されるから県警に来てね。』

私はいよいよここを離れる時が来たようだ…
今回は羽衣を提供してくれたhinao様のイラストを掲載しました。有難う御座いました!

・鶴の恩返し→透き通った羽衣

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