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超能力・決意

『そう言えば逢羽さん…逢羽さんって姫様達の乳母だったのはわかるんですけど…年齢ってかなり…』
『あはは。そうなるよね…確かに私は何百歳も生きているのは事実だよ?実はね…私は地上の人間ではないのよ。天上に住む者…うーん…天女って言えばわかるかな、天の羽衣って言う伝説があるじゃない。アレ!
羽衣を最初の旦那に取られた私はその人と暮らすハメになった…私は旦那に羽衣を返せ!と何回も言ったのに旦那は返してくれなくてね、旦那がいない時を狙って家中を探してやっと見つけた羽衣を取り返して家を出たんだけどね。そんな中、私は彼、“萬屋金兵衛”に出会ったんだけど彼の懐の太さや心行きに惚れちゃってね。私は彼と一緒に旅をしていた訳。あとは話した通り。』

逢羽さんは自分の身の上話を聞いていた私達。

『…母上って随分とやり手じゃったんじゃな。』
『本当じゃな、妾達よりも長生きしてて色々な体験をして色々な物を見て来たのじゃな…』

…と姫様方は真剣になって聞いている。

『んまぁ…今では旅館の女将だけどね。さて…麻也ちゃん、美月ちゃん!貴女達が通う大学の地下深くに封印されている魔物について話すね。 
その魔物はこの馬鹿娘達の更に遡った時代の時に大陸から日本に押し寄せた魔物で、ある人物が封印に成功したんだけど、馬鹿娘達の時代に封印に綻びが生まれ、そこから邪気が漏れ出したのよ。そこで魔物はまず戦をしていた、徳川と石田の軍勢に目をつけ、彼らを財宝というエサで誘き出し、彼らの血で封印を解こうしたのを馬鹿娘達が結界を張った事で綻びの穴埋めに成功したわけね。その封印を守っているのが、私、逢羽の子供達の子孫…って訳なのよ。あの子達は同時に麻也ちゃんと美月ちゃんがチャレンジしようとしている“最後の試練”の場所の鍵も守っているの。大学の“魔法学”って学部の本当の理由は“破邪の御子”を育成し、試練に打ち勝つ人間を育てようって言うのが真の目的ね。』

『破邪の御子?』

『貴女達馬鹿娘は誘い込まれた徳川と石田の軍勢と戦っていて、疲弊していた…貴女達の時代の力では破邪の御子を探していては間に合わない…だから結界を張る事で未来に現れる破邪の御子の存在を待つことにしたんでしょ?』

『母上の申す通りです…私達は来世に託すべく封印を施したんです。』
『妾達はひたすら破邪の御子を待つべく封印の巫女として封印を監視する事になったんじゃ。』

逢羽さんの言う事は大体理解できた。異形なる者…魔物は遥か昔に日本に現れ、禍いと災厄をもたらしていたがある人物が地下深くに封印をした。ただ長い年月を経て封印に綻びが生じ、それを姫様達が更に封印を施した。ただ姫様達は疲弊しており、封印を施すのがやっと…私達に“破邪の御子”の可能性を託したわけだ。

『麻也よ、私達は其方らに宿命という枷を着けてしまった…このまま事実を知らせぬまま、乙女として天寿を全うするの良かったのかも知れんな…許しておくれ、私の大切な末裔の子よ…』
『そうじゃな…麻の言う通りなのかもしれんな。美月…其方は妾にとって其方はかけがえのない存在…妾らは戦国の世に生を受け、ひたすら戦ばかりしておったからの…乙女の人生を知らずに、妾達は其方らに同じ宿命を背負わせようとしている。私も麻も人の心を持たぬ地獄の修羅なのかも知れぬな…』

私と美月は何も言えなかった。

『麻也、美月…二人でどうするか、これからの事とかを考えるといい…一晩やる、よく考えると良い。』

麻姫様が言う。

『ただ忘れないで欲しいのじゃが、妾達は其方らの決めた答えに反論はせん。どう進むかで…違う未来となるのだからな。』

と、月姫。そう言うと二人はスッと消えた。

『逢羽さん、私達は…どうすれば…?』
『私達の出した答えが未来を変える…?そんな事言われても…』

私と美月は狼狽えた。そんな私達を見ていた逢羽さんは…肩をガシっと掴み、

『麻也ちゃん、美月ちゃん…あの子達もやりたい事があったはず、女の子としてもっと遊びたかったはず。幸せの形って決して一つじゃないのよ。だから私からは貴女達に対して何も言えない…あの子達が出した答えがが今のあの子達の存在なのよ。未来を託し、己の御霊を超えて見せろ、ってね。それがあの子達の出した“答え”なの。』

逢羽さんは私達に言った。私達はそれから床に入ったものの、姫様達の事とか考えていたら結局、寝付けなかった。
朝起きるといつの間にか寝ていたのだが、姫様達に叩き起こされた。

『起きろ!麻也、美月!』

いつものお二方だ。昨日の神妙な表情とは打って変わって、ニコニコしている。逢羽さんも普段の営業モードになっている。

『お客様、お早う御座います…朝食の準備ができております…』

姫様達も逢羽さんも昨日の事について敢えて触れず、淡々と話しかけてくる。…のだが、正直言って答えが出ていない。私達はふと思い立ち、ふらっと出かけた。姫様達はついて来なかった…

秩父神社…

秩父市内に鎮座する由緒ある神社で縁結びの神様がいて女の子が集まるスポットと言う事で私が提案したのだ。

秩父神社。女の子達が結構参拝に来るのだとか。

鳥居をくぐり、本殿へ向かう。パンパンッ!と柏手を打つ。私は清らかな気分で参拝で来たし、それは美月も同じようだ。そのあとすぐに旅館に戻り、温泉に入った。部屋に戻ると室内は静かで誰もいない。
私達は…
ボゥっと現れる麻姫様と月姫様が現れた。会話もせず、お互いに黙っている中、私は口火を切った。

『麻姫様、月姫様…お願いがあります。』
『私と麻也、姫様達と一戦交えたくて。』

私達は続けた。

『正直私達は昨夜の答えをまだだせていません。』
『ですから二人で姫様達と勝負をして答えを出してみようと思ってます。』

姫様達はただただ話を聞いている。

『…わかった。』
『では妾達の秘密の場所で…良いか?』

瞬間、部屋の景色がグニャと捻れ背景が変わった。コスモスの花が咲き乱れる…不思議な草原。風で花が揺れていて居心地がいい…

花が咲き乱れ、空気も澄んでいる。

『ここで良いな?』
『妾達に勝負を挑んでくるとはな…妾達、一切手を抜かぬぞ?』

姫様達はニコニコしながら準備をしている。

『はい、勿論です。本気でかかってきてくださいね。』
『私達も全力で行きますから。』

私達は服を脱ぎ、サッと構えた。
私達の間の空間で勢いよく念が燻り出す…バチッ、バチッと…大きくなる…

『くっ…』

まだ燻っている…念はどんどんと大きくなり…勢いが止まらない。 

『麻也!』
『美月!』

私達はお互いの名前を叫んだ!そして手を繋ぎながら…お互いの唇に…
その時、念は一気に大きくなり、

『こんな大きい念を…私達じゃ支えきれん!』
『妾も…これ以上は…』

姫様方は念を空中に放り投げた。ボン!と言う大きな破裂した音がした途端、私達四人は吹き飛ばされた。

『はぁ…はぁ…麻姫様、月姫様…大丈夫ですか?立てます?』

私は姫様方に手を差し伸べた。

『あぁ、大丈夫じゃ。自分で立てるから…』

麻姫は強がりを言ったがフラフラとしてまたペタンと座り込んでしまった。 

『しかし、驚いたの…其方らはいつの間に?こんな念を作れるなんての。妾達にはこんなに大きな念を練れんよ。』

月姫は動けないようだ。

『月姫様、これが私達の考えです。』

『…』

私は…

『私達は姫様方に比べたら私達なんて小さい存在。だけどね、そんな小さい存在でも負けないものは持っているつもりです。それは、“お互いの事を信じる事、それが絆であって愛でもあるんです。』
『私は“長篠麻也”の事を愛しています、そして麻也も私…“安岡美月”の事を愛しています。』

『なるほどな…私と月はその愛の力で負けたのじゃな。』
『其方らには教えらてしまったの…妾達の完敗じゃ。』

『麻姫様、月姫様…私達、長篠麻也と…』
『…安岡美月は、二人で自分の未来を築いていこうと思います。私達に力をお貸しください…私達に道を…導いてください!』

『うむ、わかった…私、麻姫は約束しよう!長篠麻也と共にすると…』
『そして妾、月姫は安岡美月…妾は其方の糧となろう…』

野山に咲き乱れるコスモスの花は風に吹かれて揺らいでいるのだった。

目指すは私達の学舎…逢羽女子大学へ!


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