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美しさとは

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美しさの定義って、難しい。その時代に生きた人の価値観とともに、変わるのかもしれない。いや、まったく変わらないものなのかもしれない。美しさってなんだろう。自分に問いかけて、考えたこ…
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#旅

教会と光と夏至。

夏至の日は、たまたま海方面へ行っていて、サンミニアートアルモンテ教会のような夏至のスペクタクルが観れるところないか、探してみた。 あったあった! 場所は、バディア・サン・ピエトロ教会。 建立は700年代で、いまの姿は12世紀のもの。 巡礼の路といえば、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路が有名ですが、ローマへ向かう、フランチージェナと呼ばれる巡礼路がイタリアにもあります。 余談ですが、コロナ以降、イタリアは、ちょっとした巡礼路ブーム。数日かけて、巡礼地

空間の美しさとは? Part.1

空間を知るって、どういうことなんでしょう。 紙面に縦線と横線を引けば、水平と垂直はすぐに描けるけど、奥行きはどう表現する? まずは、絵画から探ってみよう。古代ローマや、中世時代は、数学的な根拠のないまま、なんとなく奥行きがあるっぽく、こんな感じかなーと、表現していた。 なんとなくの奥行きでも、ぐっと、深みがでてくる、1300年代の絵。 マリア様と幼子キリストが座っている玉座の後ろに、聖人を重ねて描くことで、二人の背後に、聖人がいるんだなぁ。と、感覚的に空間をつかめる作

空間の美しさとは? Part.2

フィリッポなくして、フィレンツェは形成せず。 フィリッポ・ブルネレスキが、遠近法を発明したのが1416年頃。2年後にクーポラのコンクールが行われ、彼の案が採用されます。 両手放しで、喜ぶことはできない条件はあるけども、とりあえず、現場監督として、1420年からクーポラの建設が始まります。 こちらが、ブルネレスキの建築記。 中世の面影を残すフィレンツェの街に、ダイナミックでシンプルな建造物が、自己主張することなく溶け込み、新しい時代へと繋いでいきます。フィリッポ・ブルネレ

ルネサンスの寵児、フィリッポ。 空間の美しさ。Part.3

天才と呼ばれる人に共通しているのは、ゼロから1を作り出せる人ではないか。彼らの作品を通して、つくづくと感じます。 吹き抜けのドゥオーモクーポラの八角系の台座、実は、中心が合わないんです。 と丸投げされてしまい、後世の人々は困った。どう建てていいのやら、どこから手を出したらいいのや、とんとわからず。 1296年から建て始め、1380年にはクーポラ以外はほぼ完成。 途中で、黒ペストが蔓延する非常事態があったのにも関わらず、100年もかけずに、ここまで建てるなんて、フィレン

ルネサンスの寵児、フィリッポ。 空間の美しさ。Part.4

やっと、ひとりで現場を仕切れるようになったフィリッポ。 一難去って、また一難。 現場作業安全対策ガイドラインクーポラの高さ、116.50メートル。見たことも聞いたこともない、超高層。 実際に請け負う現場作業員のもっともなる意見。みんなを集めて、フィリッポが話し始めます。 作業員の皆様が、いまだかつてみない大事業を前に、不安になられるお気持ちは、よくわかります。そして、いかに困難で大変な作業になるのかも、理解しています。転落死を回避し、高層でも怖がらず作業ができるように

ルネサンスの寵児、フィリッポ。 空間の美しさ。最終回。Part.5

前回からの続きです。 フィリッポは、前代未聞のクーポラを建築するために、作業員が安全に仕事ができるように、さまざまな新しい試みを具現化していきます。 前回紹介したのは、こちら。 堅固な足場を作る クレーンを作る クーポラ専用帆船バダローネ フィリッポの革新的アイデア - 24. 石積み技術 レンガを水平に積み続けると、重みが下に向いて、重量で丸屋根が崩れちゃいます。そこで、考えられたのが、矢筈やヘリンボーンと呼ばれる積み方。これがそれ。 この積み方をもってすれば

音の美しさ

目で見て、手で触れて感じることのできる石。 角が丸くなり、表面の光沢が失われ、ところどころに溝や小さな穴があり、いままで、生きてきた証を、見せてくれる、風化した石。 まったく同じように、長い時間をかけて、いままで生きてきたのに、風化という言葉が当てはまらない、音。 わたしはキリスト教徒ではないけど、たまたま訪れた教会で、ミサが開かれていると、そのまま滞在することがあります。 ミサのときどきに、賛美歌が歌われ、何世紀も前に作曲されたものが、いま、この瞬間に、歌われるって

世界は音に包まれている Part.3

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 建築と音楽の、数合わせ。ルネッサンス時代に入ると、以前に登場したブルネレスキと、彼と同時代に生きたレオン・バッティスタ・アルベルティが、フィレンツェ国の空間に手を加えます。 まずは、ブルネレスキに登場してもらいましょう。1420年に着工し、1436年にクーポラが完成。聖堂の献堂式が行われます。 献堂式に用いられる音楽は、もちろんオリジナル。ルネサンス最大の音楽家と言わ

世界は音に包まれている Part.4

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 世界は音に包まれている Part.3 音楽は、音色が流れるように続く、時のなかでの美しさ。 建築は、建物にリズム感を与える、空間のなかでの美しさ。 この二つに共通する調和。それは、算数や幾何学が出会う場でもあります。 中世時代の美しさは、床面も柱も、幾何学から割り出されていましたが、ルネッサンス時代になると「数字」が重要になってきます。 音楽と建築。ブルネレスキのあ

世界は音に包まれている ! Part.5(最終回)

連載4回のはずが、前回のレオン様が長くなってしまったので、2回に分けました。今回は、本当の最終回パート5です。 『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 世界は音に包まれている Part.3 世界は音に包まれている Part.4 音と建築。リズムや調和を感じるのは、なにも、歴史的な建築物だけじゃありません。ちょっと視点を変えて、周りを見渡せば、きっとまわりにあるはず。見てるけど、見えてないだけ。 フィレンツェ

再生

夏至と太陽と教会と。

今日は6月21日、夏至。本日13時頃に、フィレンツェのサンミニアートアルモンテ教会では、太陽の光が床面を歩きます。めざすところは、夏の始まりを示す蟹座。1000年前から続いている、イベントです。 「1000年前の美しさの定義」でも書いています↓↓↓ https://note.com/artigiana_arte/n/n316782cdded8