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京都、絵に描きたい情景〜その3  「祇園さんの頃に」



京都の夏はクソ暑い。
猫は暑さに強い、そない言われるけど、例外もあるんや。
猫もそれぞれ、
人間とおんなじや。

ぼくが芸妓のまめねえさんに拾われて花街に暮らすようになって もう随分と長い日が過ぎた。
今年は梅雨やのに雨も少ないし、
元桜猫やったぼくにはこの暑さがえろう堪えるんや。
できたらエアコンの効いた涼しい部屋とこで猫想いにふけっていたい。

けど、京都人は
ほたるの季節が終わると、
祇園さん(祇園祭のこと)にまっしぐらや。

7月に入ると、1ヶ月間もの長い祭りが始まる。
なんでも、今年は3年ぶりに念願の鉾巡行ほこじゅんこうがあるそうやから、
みなさんの思い入れも特別や。

コロナのことはやっぱり気になるけど、
心配ばかりしてても
詮ないことや。

(なんとか最後まで無事に終えられますように)て
まめ多姐さんも、この間、お座敷に上がらはる折りに、
角のお地蔵さんに手を合わせたはった。
そやから、暑さが苦手な猫のぼくやけど、思いは姐さんとおんなじや。
きっと大丈夫やて。

こんちきちん
こんこんちきちん こんちきちん

ぼくの耳の奥でもう響いてるわ、
独りで聞いた懐かしいあの鐘の音が。

今年はまめ多姐さんの腕の中や。
鉢巻締めて連れてってもらうんや。

祇園さんの頃に

        ぼくとまめ多姐さんの京都譜譚(無良寿作・未刊)より


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