カエターノ・ヴェローゾ『熱帯の真実』 反響まとめ
50年以上にわたってブラジルのポピュラー音楽界をリードし続けてきた
最重要ミュージシャンのひとり、カエターノ・ヴェローゾが、類い希な知性を発揮した著書“ Verdade Tropical”の邦訳をついに刊行しました!(2020年9月28日)
1950年代から70年代にかけてのブラジルの音楽と文化、社会、政治を語った
この大著は、長く長く日本のブラジル・ファンに待たれただけあって、たくさんの反響をいただいています!
ここでは、書評や特集記事をまとめてご紹介します。読み応えありまくりの本書読破への一助にしていただければ幸いです。
●書評
『Pen』508号
評者は音楽ライターの栗本斉さん。『pen』のサイトで全文を読むことができます。書影もスタイリッシュに撮影していただけて嬉しいです。
膨大な記憶の断片が独特の筆致で語られていき、読むごとに引き込まれる。
まるで哲学書のような啓示も多々あり、ハッとさせられる。
彼の音楽を理解するには格好のテキストといえるかもしれない
などなど、盛り上がりが伝わる言葉とともに、とんでもない量の固有名詞にあふれている多面的なこの本の読みどころと魅力を端的に語ってくださっています。みなさんも
体力と時間を要することを覚悟して
ぜひブラジル音楽界きっての知性を味わいつくしてください。(*引用文太字)
『レコード・コレクターズ』1月号
評者は音楽学者・輪島裕介さん。1ページに掲載されました。
ポルトガル語版からの全訳はこの邦訳が世界初であることに始まって、選びぬかれた読みどころが紹介されていてーージョアン・ジルベルトという存在の大きさ(「“革命”の後継」)、妹ベターニアの重要な役割、音楽論の白眉としてロックやトン・ゼー、盟友ジルベルト・ジルを語ったパート2「パニス・エ・シルセンシス」(p279〜)、ヴィオラォン(ギター)演奏史を描いた続く「禁ずることを禁ずる」(p309〜)の意義ーーという具合に、ブラジル音楽の現代史を知るうえでの本書の重要性を痛感させてくれます。
98年にバイーアでカエターノの姿を見て「博士になろう」と決めたという輪島さんならではの濃密なレビュー、ありがとうございました!
『ミュージック・マガジン』12月号
評者は、洋邦ジャンル時代を問わず膨大な音楽に精通する松山晋也さん。嬉しいことに1ページを丸々使ってのレビューです。
大小さまざまなエピソードに満ちていて、「読みどころは満載」の本書。トロピカリズモ(トロピカーリア)に主眼を置きつつ、「演劇や映画や文学、政治/社会と多岐にわたる事象が複雑に絡み合ってくる」テキストを読み解いていくには、いささかエネルギーを要しますが、この独特の文体に慣れてくるにつれてそれが快感にすらなってきます。
松山さんが読み解いて下さったとおり、「カエターノ個人の半生記」として、またブラジルの社会や文化の「哲学的考察」の書として、あるいは「ブラジル現代史の貴重な記録」として、などなど多面的な魅力をもったこの『熱帯の真実』ですが、「彼の作品を古い順に聴きながら読むと、ポップ・シンガーとしての姿もより深くリアルに見えてくるのではないか」という指摘はおおいに強調しておきたいところです。(*引用太字)
「図書新聞」12月19日付第3476号
特集「20年下半期読書アンケート(1)」で、Books隆文堂の鈴木慎二さんがベスト3冊のうちの1冊にカエターノ・ヴェローゾ『熱帯の真実』を選んでくださいました。訳者の国安さんや担当編集鈴木の名前まで挙げていただき、たいへん光栄です。
2003年の雑誌『ユリイカ』で細川周平さんが本書を紹介/批評したときから、邦訳を心待ちにされていたそうで、あまりにも長い間お待たせしてしまって心苦しいかぎりですが、喜んでいただけてよかったです。
その細川さんのテキストをご厚意によってアルテスのnoteに公開しました(下記参照)。4回に分けて掲載しています。本書の読書ガイドとして必ずや得るもののある卓見に満ちていますので、ぜひご一読下さい。
『サウンド&レコーディング・マガジン』2021年1月号
評者はおなじみ横川理彦さん。
クロード・レヴィ=ストロースが描いた『悲しき熱帯』に対する“ブラジル・ネイティヴからの文化的な返答”というのも強く意識しながら書かれた本書。
カエターノのキャリアとともに多岐にわたる内容を紹介しながら、訳すのが難しいと思われた文章が〜定評のある訳者により、こなれて読みやすくなっていることを高く評価したい。
〜文学/映画/音楽に自身のアイデンティティを重ねていく。その様子が実に生き生きと描かれた、必読の傑作ノンフィクションだ。
と絶賛していただきました。横川さん、どうもありがとうございました!(*引用太字)
『intoxicate #148』(10月9日より配布)
評者はICC(国際コミュニケーションセンター)の主任学芸員を務めてらっしゃる畠中実さん。
この「自伝的ブラジル音楽文化論とも言うべき大著」には「美術に関心のある人も引き込まれるトピックも多くある」ことに触れながら、
それ[ブラジルの社会的、思想的背景]が不可避的に個人史とオーヴァーラップしてしまうのは、著者がサンバの改革としてのボサノヴァを同時代に体験し、自身がその中心的な存在として、ブラジルの文化革命を体現していたことの証左であろう。
と評文は締めくくられています。
畠中さん、大著を丁寧に読んでくださって、ありがとうございました!
●特集
細川周平さんの『熱帯の真実』評(『ユリイカ』誌)をnoteで公開!
カエターノ・ヴェローゾ『Verdade Tropical(熱帯の真実)』の刊行から6年後の2003年、『ユリイカ』誌の2月号「カエターノ・ヴェローゾ特集」に、音楽学者・細川周平さん(現・国際日本文化研究センター名誉教授)による『Verdade Tropical』評が掲載されました。その当時、原書を通読してこれほど深く的確に読み取った方が他にいたとは思えませんし、それから17年以上経ったいまも本書の読書ガイドとして最高のテキストと言っていい素晴らしい内容です。
本書の編集中にもたびたび参照していたこの原稿を、今回細川さんと『ユリイカ』編集部のご厚意により、アルテスのnoteで公開させていただきました。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。
『ブラジル特報』9月号
『熱帯の真実』にボリュームたっぷりの解説を書いて下さった岸和田仁さんは、日本ブラジル中央協会発行の機関誌「ブラジル特報」の編集人でもあります。その2020年9月号で、本書の刊行に合わせてカエターノを大特集。翻訳者の国安真奈さんと、もうひとつの解説を執筆して下さった中原仁さんのおふたりが原稿を寄せています。
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