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イサム・ノグチの母はちょっと蝶々夫人西洋版?!略歴から読み解く『イサム・ノグチ 発見の道』展☀ 特に「光」の彫刻「あかり」にフォーカス💡

日本人を父に、米国人を母に生まれたイサム・ノグチ(1904-1988)は、東西の間でアイデンティティの葛藤に苦しみながら、独自の彫刻作品を数多く残した20世紀を代表するアーティスト。
東京都美術館で開催中(2021年月29日まで)の『イサム・ノグチ 発見の道』展も話題です。
彼が発明した「光」の彫刻「あかり」の集合体インスタレーションから始まる印象深い展覧会!

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ところで、みなさんは展覧会で作家さんの略歴を読みますか?
私も展覧会場では作品を見るのに夢中であまり略歴を読まないのですが。。。持ち帰った図録の略歴を読むと、ポイントの作品が、こんな人生のタイミングで生まれたんだ!ということや、人との出会いと別れなど、いろいろなストーリーが作品シンクロして浮かんでくることに気づいてきました。まるで大河ドラマのように✨
ここでは、略歴から広がったイサム・ノグチの世界の中から、特に注目したポイントをシェアします☀

イサム・ノグチの母はちょっと蝶々夫人西洋版?!

日本人を父に、米国人を母に生まれたということは大まかに知っていたけど。。。父親は、かの有名な野口米次郎で母親が作家で教師のレオニー・ギルモア。
なんと、ロサンゼルスでノグチが誕生した時、米次郎は既に帰国していた!
なので、しばらく母と祖母に育てられ、レオニーは、米次郎からの連絡を待って命名を保留。ノグチ3歳の時に一緒に日本へ渡った時に父から「勇(イサム)」と名付けられた!!実質、この時「イサム・ノグチ」が誕生する🎂 これだけ読んでも、孤独と波乱が付いてくる人生なのかな~と思ってしまう。
そして、この夫婦関係、男女の国籍が逆転した蝶々夫人では?!と思ってしまった。もちろん細かい部分は違いますが。。。去って行き、追われるのは日本人男性の方。。。この父あってのノグチ!そう、彼もイケメンでモテモテなのです!数多くの美女と浮名を流したことは、図録の略歴からも判明。
中には既婚だったあのフリーダ・カーロもいますよ!

「光」の彫刻「あかり」を発明したのはノグチ47歳の時

みなさん、これを聞いてどう思われますか?
私は、「あかり」ってけっこう遅めに出てきたのだなという印象。
今やよく知られていたり、その作家の代表作のように出てくる作品も、意外と作家の晩年に生まれたものだったり、なかなかブレイクしなかったりしたものだったりして驚くことがあります。

「あかり」は、47歳のノグチが岐阜で岐阜提灯を見たインスピレーションからひらめいた作品💡ブランクーシに学んだノグチは、それまで西洋彫刻の基本的な石など固い物質で彫刻を制作していましたが、ここにきて形も重さもない「光」を彫刻する境地を切り開いたのです!

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光そのものが彫刻となった超越的存在の「あかり」。展示風景より。

「光」の彫刻「あかり」を発明した年に女優・山口淑子と結婚

人生も光輝いた象徴的出来事ですね!👏
山口淑子さん超絶美人☀
この年は、2人でフランス、イタリア、インドそして来日とたくさん旅行もしています💛
でも、5年後に離婚。。。2人とも個性強かったのかな~?残念!
でも「光」の彫刻「あかり」はこれからです。そして、永遠の存在に。

翌年1952年から早くも「あかり」は展覧会に出品されはじめる

神奈川県立近代美術館にて早くも「あかり」を発表!その後、日本では高島屋、アメリカではブルーミングデールズ など百貨店でも続々展示。これは、「あかり」にはプロダクトデザインとしての性質があったからだと思うけど、ノグチは「アート作品」としての「あかり」も追及し続けて、提灯型の丸だけでなく、いろいろな形の「あかり」の試作品を作って挑戦しています♪ ノグチは、石の重さの対局にある軽さ/lightness を「私的ではかなく、不確か」と表現しています。そんなノグチさんがポエティックでステキ💛

1966年、62歳の時に「あかり財団」というのを設立しているから、石やブロンズの彫刻と並列して、やはり「あかり」ってアートとして重要だったんだな~。

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73歳の時にニューヨーク近代美術館で「あかり」に焦点を当てた展示開催

「ノグチ デザイナーとしての彫刻家」展だったとのこと!それでもこれは、かなり「あかり」がプロダクトデザインとしてだけでなく、アートとして認識されてきた出来事だったのではないかな。

82歳でヴェネチア・ビエンナーレに「アメリカ代表」として参加

まず衝撃だったのが、「アメリカ代表」として参加したのね!ということ。66歳から香川県の牟礼町に住まい兼アトリエを構えて制作活動していたのに~!まあ、70歳の時にアメリカのロングアイランドシティにもアトリエを構えているけど。。。ちょっと悔しい?!生まれがアメリカだったからかな~?!!

それはさておき、今や、ヴェネチア・ビエンナーレの日本館代表だと塩田千春さんや束芋さんなど若手が出ているイメージだけど、ノグチのような大巨匠が超晩年の82歳でアメリカ代表になっていることも驚き~。

そして、その時出品した白大理石によるらせん状の大きな滑り台は好評を得たのですが、「あかり」は厳しい評価を得てしまったとのこと!
われらが「あかり」~!残念!

その際ノグチは、「西洋では人々は形のあるものに慣れ親しんでいる。形のあるものがなく、空間と光の輝きのみ、あるいは雰囲気の知覚、私たちの感覚に直接ではなく、直線的ではなく、文字通りの意味でなく触れるだけの知覚が存在するという考え方は言いにくいけれどもさっぱり理解されなかった」とコメントしています。(今展図録195ページ)

要するに、1986年の西洋では、光の「インスタレーション」が理解されなかった!意外ではないですか?概念が親しまれていないものは、理解されないのですね。。。
でも、光の彫刻以外にも、「噴水の彫刻」を創ったり、大地に彫刻したりと、誰もやったことがなかったようなことを次々とトライしていたノグチは、「最初理解されないことはよくある」くらいに達観していたのではないかな!!

ノグチは1988年に84歳で亡くなっています。

2021年の展覧会は、150灯の「あかり」のインスタレーションが入口

そしてノグチが亡くなってから30年以上経った今、『イサム・ノグチ 発見の道』展と題する個展@東京都美術館では、150灯の「あかり」のインスタレーションがゆっくりと明滅しながら最初に私達を迎えてくれる!

まさにアートとしての主役♪
この感動をシェアしたい鑑賞者たちが、撮影した写真を無数にSNSに投稿しています。
やったねイサム・ノグチさん☀


【展覧会基本情報】
場所 東京都美術館
会期 2021年4月24日(土)~8月29日(日)
会場 企画展示室休室日
観覧料  一般 1,900円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 65歳以上 1,100円

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