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なぜ上野の森美術館は皇室ゆかり?隠れヒーローの存在から若手支援まで👑

精養軒、風月堂、あんみつ みはし、そして美術館と、上野といえば昔から食とアートの魅力でいっぱい。日本最古の博物館・東京国立博物館、建物が世界遺産に登録された国立西洋美術館などメジャーなカルチャースポットも目白押しです。その中で私が最近注目しているのは、『フェルメール展』、『進撃の巨人展』、『怖い絵展』などユニークな企画で行列を作ってきた上野の森美術館。実は上野のお山で唯一の私立美術館で、運営の総裁が代々皇族だったりと、さりげなく異彩を放っているのです。
ちょっとマニアックなアプローチ(;^_^A

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1.隠れヒーロー

 美術館の歴史や最新の取組みについて語ってくださったのは、上野の森美術館学芸員の岡里崇さん。
「美術館の運営を務める日本美術協会の前身は「龍池会」といって皇族の側近でもあった政治家・佐野常民が設立しました。知らなかった~!

 日本赤十字社を立ち上げたことでよく知られていますが(そうなんだ!)、美術工芸の振興にも熱心で、日本美術協会の初代総裁に有栖川宮熾仁親王殿下を戴き、皇室と密接な関係を作ることで発展の基礎を固めたのです」とのこと。☆ここから皇室ゆかりが始まったのですね☆

 この佐野さん、美術館のホームページには出てこなかったけど、メチャメチャすごい人なんじゃない? 

鈴木長吉作、佐野常民像2、725KB

《佐野常民像》 鈴木長吉作

 実は、出身地の佐賀には、七賢人の一人として記念館もある偉人。そもそも「龍池会」を立ち上げたのは、橋本雅邦が1本1銭で扇面に山水画を描いたり、狩野芳涯が郷里に帰って養蚕をして飢えをしのぐなど(えーっ!あの巨匠が養蚕だなんて(涙)川合玉堂ら巨匠らか師事した狩野派の先生ですよ~!作家の苦労は今も昔も変わらない。。。)、画家たちが貧窮のどん底にあるのを見かねてとのこと。
 内国勧業博覧会を実施して新進の作家を発掘し、帝室技芸員制度(かの有名な人間国宝制度の前身!!)を作ることで選出された作家に対しては制作費が受給されたり買い上げられたりするような仕組みをつくったそうです。

 「ん?どこかで聞いたような」と思ったら、そのスピリットってまさに上野の森美術館主催のVOCA展や大賞展に受け継がれているではありませんか!

2. 若手作家もバリバリ応援

 「VOCA展は、推薦制で40才以下の若手作家の未知の才能を紹介して約30年、上野の森美術館大賞展は、公募制で美術団体の枠を越えて有望な作家を顕彰して約40年ですね。それぞれどのような特徴があるのですか?」「VOCA展は、推薦制なので、振り返ってみると海外も含めて華々しく活躍している作家が多いです。大賞展は、公募なのですが、審査員が全員作家という特徴があり、オーソドックスなので大学の先生になっている方々が多いです。受賞作品を買い上げたり、入賞作家には、併設のギャラリーで展覧会として発表する機会を提供するということにこだわっています」と岡里さん。
 「ギャラリー展では、学芸員さんが作家を選んでキュレーションするとのことですが、破天荒だったり、印象的だった方はいらっしゃいましたか?」と聞くと、会田誠さんのお名前が!オープン直前まで徹夜で制作するなどがんばるのですが、間に合わず、会期中も展示したまま制作続行。あげくは、他の会場を巡回してもまだ制作を続け、完成したのが10年後くらいだったとか。これぞ元祖ライブペインティング?(いやいや、単に完成してないだけでしょ!)。でも、そんなキュレーター泣かせの作家達も温かくサポートしてきた甲斐あって、やなぎみわさんや山口晃さんなど錚々たるクリエイター達を輩出。正真正銘のパトロンじゃ~!

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3. 所変われば王室も。。。

奇しくも、ちょうど取材した時に開催中だったのが、王室つながりの『KING&QUEEN展』。イギリス王室に関係する人々のポートレートがズラ~リ。これを聞いただけだと、「なんかつまらなそう」なんて思っていませんか?ところがどっこい、激しくエキサイティングなのです。何を隠そう、あの『怖い絵』シリーズの著者・中野京子さんナビゲートの展覧会なのですから。美しく気品に満ちた肖像画の王族たちが辿った運命をキャプションから読み解きながら見ていくと、いつしか自分もそのドラマに巻き込まれたような気分で1人1人と向き合っている!

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《ジョージ4世》などは、「あらハンサム!」と思いきや、隣には同一人物とは思えないほど激太りした風刺画。。。 芸術に対する優れた支援活動で知られたにも関わらず、暴飲暴食がたたって「クジラ王子」とあだ名を付けられるほど太ってしまったとか。女性関係も派手で、彼の愛人だった人妻の肖像画も一緒に展示してあったり!アートには貢献したのに、トホホな王子。

☆《ジョージ4世》《消化におびえる酒色にふけた人》

《ジョージ4世》《消化におびえる酒色にふけた人》

 そんな感じでキャラの濃い王や女王に対面していると、日本のロイヤルファミリーって真面目で良かったな~とつくづく思います。来年の1月11日まで開催していますので、おすすめですよ。

3月12日から、2021年年のVOCA展がスタートの!果たして会田さんを超えるぶっ飛びぶりを見せてくれる天才は出現するのでしょうか?
またレポートしますね(^^♪

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