見出し画像

【開催記録】 第51回 アート対話カフェ 2023/11/25(土)

今回のアート対話カフェは、前半と後半で異なるテーマを用意し、参加者の皆さんに対話を行なって頂きました。


【前半】

前半では皆さんに、パブロ・ピカソの『ゲルニカ』を見て、発見したことやイメージしたもの、疑問に思ったなど、言葉にして頂きました。

この絵は何度も見たことはあるけど、「何が描かれているのか」とじっくり観察したことはないのではないでしょうか。皆さんの意見をご紹介いたします。

パブロ・ピカソ《ゲルニカ》

参加者から出た意見 

  • 戦争や暗い絵と感じたが、人とか馬の顔が上に向いていて、上向きの絵なのかな?燈とかに向かっているのも前向きなのかなと思った。

  • 色味の感じが暗くて閉塞的の中で、人の顔が長く、叫びが聞こえる。馬かな?馬も叫んでいるように見える。下にいる横たわっている人は、折れた剣を持っているので、死んだ人かなと思った。

  • 右側にある窓らしき人も叫んでいるのが、顕著かなと。牛らしきものの下にもいる人も叫んでいるように見えるし、異常な感じがする。

  • 色がないのが不思議で印象的。手が印象的に描かれている。それぞれの人物の描き方が違っている。それがどうしてなのか、分からないが。戦争という混乱の中で、いろんな訳のわからないことを描くのが、混沌としたものを表しているとも思う。その中で電燈や上を向いているのが救い。

  • 妖怪の大行列に見える。家から出てきて夜になってこれから騒ぎに行くという感じ。

  • 人の顔の表情で、口を開けて歯とか舌を見せている人は虐殺されて悲鳴をあげている。残りの人たちは、民衆を攻める兵士にも見える。口を開けている人は嘆き悲しんでいるようにみえる。ろうそくの左上は、太陽に見えるが、目にも見えて、希望ではなく「おてんとうさまは皆見てるんだぞ」ということで、虐殺しているのを全部見ている。なので目撃の太陽なのかな。

  • 剣を持っている人は兵士かもしれないが、他の人は逃げまどって、家畜小屋なのか、部屋なのか、どこかに逃げ込んできているように見える。戦いに巻き込まれた民衆が、嘆き悲しんだり、力尽きて倒れたり、動物も悲鳴をあげている。防空壕じゃないですが、弱い者たちがそこに入り、悲しんでいるようにみえる。衣服も女性は乱れているのも気になる。

  • 色がないっていうのは、夢の世界なのかなと思った。夢を見ているような世界を描くとき、自分が想像しているので、モノクロにしているのかな。ピカソにとっても、戦争の状況って、なかなか分からないんじゃないかなと思って、当時のピカソにはあったのではないか。戦争があると戦争のことを描いていいのかなという、絵をもって描く(抗議)するのは、大変だったのでは。

  • ぐったりした赤ちゃんとお母さんが手をあげている様子をみると、赤ちゃんが亡くなっているのでは。今の時代も戦争があるが、弱者である子どもや女性が被害者となる傾向がある。それがどの時代も共通しているのではと思う。

  • 花が見える。そこだけに植物があるのが気になっている。画面の真ん中にあるので、意味があるのだろうけど。私は意味は見いだせないですが。

  • 私は道端に咲いている花なのかなと思った。道路で人が殺されているというのを表しているのでは。

  • 花も色を塗ってない。この花に色がついていたら、すごく分かりやすいはず。だけど、塗られていないのは、見る人が見ないと分からず、そかも折れた剣のところにあるのも、何かメッセージがあるのでは。

  • 戦争って、分っているからの思い込みがあるのかもしれないですが、折れた剣の脇に花があるので、平和っていう小さな希望を表しているのでは。どんな惨状であっても、かすかな希望があるということでは?

  • 右横の人が建物が破壊されている断片に、人が鋭利なものが刺さっているように見える。その人を傷つけているようで、そのモチーフが気になる。

  • 全体的に生と死が描かれていて、どちらかというと死というのが多いですが、馬も嘆いている。こんな悲惨な目にあっても、それでも生きるために逃げて生きようとしている必死さが見えているし、花とか灯りとか、生きようとする生の部分が描かれているようにみえる。

  • 中央のところに白と黒じゃない、字のような、絵のような、活字、新聞記事のような。何かを表しているのが分からない。皆さん、どう見えますか?

  • 染色体に見える。遺伝子の並びのように見える。

  • 僕も新聞記事だと思いました。こういう悲惨なことを知るのは、記事でしか知ることができない。実際自分が体験はできないので、絵を描きつつ、ピカソは新聞記事でしか知りえた情報がない…ということだったのではないだろうか。


この様に、細かい部分まで観察し、できる限り言葉で描写して頂きました。
最後には、見て頂いた作品を紙に描き起こして頂きました。

細部まで観察し言葉にしたものは、自然と頭の中に残るものです。しかし、言葉にしていないもの(観察していないもの)を、表現ことは難しかったのではないでしょうか。

前半では参加者同士で異なるイメージ(言葉)を互いに交換しあうことで、記憶に定着するだけでなく、より観察が深まる、といった体験をして頂きました。



【後半】

後半では、ピエール=オーギュスト・ルノワールの作品を使い、参加者同士で対話を行って頂きます。こちらも作者名やタイトルは明かさずに始めていきます。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》
(1874)


参加者から出た意見 

  • 劇場のバルコニー席から観劇している場面では?
    服装が豪華なおめかしをしているのと、男性も女性もオペラグラスをもっているので、観劇をしているのかなと思った。手すりが女性にあるので、2階席、バルコニー席と思った。

  • オペラグラスをもっているので劇場かと思ったんですが、男性が上を向いているので、360度のパノラマで見える最新の劇場か。野球のようにモニター画面で見ているのが女性では?

  • 二人の関係性が気になった。女性の姿勢は寄り添ってはないので、夫婦?でも男性は、オペラグラスと目の間が離れているので、これからオペラグラスをはずし遠いところにいる女性を見ようとしているのか?

  • 男性の方は遠方にいる女性(ダンサー?)を見ているよう。一緒の空間にいるのではなく、女性にとってはよそにうつつを抜かす困った夫。女性が手にもっているのは隠しもっている銃を持って打つ機会を狙っていたりして…。

  • 男性がパートナーの後ろにいて、見えてないと思って他の女性を品定めをしているが、女性はそれが分っていてそれについてあきらめ、割り切って付き合っている。それが寂しいのかな。先ほど拳銃といったのは、お財布に見えて、お金で割り切っているけど、やっぱり心は寂しいと思っているのでは。

  • この女性、まだそんなに歳ではない。あきらめるにはまだ早すぎる。これから恋をしてもいいし、きれい。口の結び方から、自分の美貌には自信があると思うので、やさしい顔立ち、人生あきらめたのではないのでは?

  • 女性は、オペラグラスでみんなに見つめられているのが分かっているのでは?女性は男性をとりこにする、売れっ子ダンサーなのでは?みんなの羨望の象徴では?男性は、それを象徴しているものとして描かれているのかな。

  • 男性は周りを見ているけど、女性はおとなしそうにも見えるけど、意志を感じさせているので、他の男性と恋をしているのではないでしょうか?
    二人に親密な感じがないというのと、女性を見ていないというのと、女性はそれを分かっていて、だったら私は他の人と恋をする!という感じ。

  • 胸元の花とその下にも花、頭にも花がある。これは、もしかしたら作者が隠喩というかメタファーとして、正式な妻なのか、彼女なのか、それを象徴するのが、胸元の花。男性は他の女性にもちょっかい出しているが、頭や下にある花は、それら別の浮気をしている女性たちが、はじっこに描かれているのではないでしょうか



今回のアート対話カフェも参加者の様々な視点から意見交換を行なって頂きました。ご興味ある方、ぜひ一度ご参加ください!
次回もお楽しみに。

お申し込みはこちらから。

https://www.kokuchpro.com/group/adcf/