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弱さと強さ『ぼくと満月』1万回再生に感謝を込めて(13)

自分のパフォーマンスではまだMV作品に耐えうる絵が描けない。
そう悟った僕は絵を描いてくれる人を探すことにしました。
知り合いからそのまた知り合いまで手を伸ばして、SNSでも僕のイメージに合った絵柄の人は居ないかと検索をかけたりもして。
数日間という決して長い時間ではなかったですが、その間中ずっと絵描きさんのことを考えていたと思います。



そんな中とある日、僕が路上ライブで歌っていた時のことです。
立ち止まってくれた中に美大で絵画を専門的に学び、現在は芸術家として活動をしているという方がいました。
絵を見せてもらうとそれは本格的な作品ばかりで、確か油絵の具や水彩絵の具、色鉛筆などと多彩な画材を使用して描かれていたと思います。

路上ライブで出会ったという運命的な縁もあり僕はオファーすることにしましたが、打ち合わせをしてみると僕の作品を一緒に作ってくれるという感じではなく、「自分は自分の描きたいように描きたい」という主張を強くされる方でした。
僕の描いて欲しい絵についてはほとんど受け入れてはもらえず、何より事前のやりとりではとてもMV制作に好意的だったのに、まるで描きたい絵が描ければいいという姿勢をあとで見たことがとても怖いと感じたのを覚えています。

この方とのお話はそこでお断りさせていただくこととなったのですが、その後も執拗に連絡が来るところにまで事態が発展してしまい、僕は人と一緒に制作オファーをするということの怖さを痛感することとなりました。
多分そのことが全て片付いた後から動いていたとしたら、僕は改めて他の人にオファーするのが怖く、もしかすると制作を諦めてしまっていたかもしれません。

でも僕はこの方との打ち合わせ終わりすぐに「別の人にお願いしたほうがいい」と判断して、当時僕の活動に多くの助言をくださっていたとある先輩に連絡を入れます。


今思えば誰かを紹介してほしいということやアドバイスをしてほしいという明確な内容とかよりも、単純にうまくいかなかったという泣き言を聞いてほしかっただけだったのかもしれません。
しかしその方はその日のうちに「思い当たる人がいる」ということですぐにパイプを繋いでくれました。
それがこのMV作品の絵を描いてくださった「MOFIN」さんその人なのです。


僕はすぐにMOFINさんの絵を見せてもらいました。
それは多彩で印象に残る作品ばかり、そして僕が見たことのないような絵がたくさんありました。
強いタッチの絵はある意味僕の作品の悲しさや憎しみのような部分をえぐり出してくれるんじゃないかとも直感的に思い、結論は短時間で出ました。
その人伝手ですぐオファーを出し、すぐにお会いする約束をさせていただいて、かなり早いテンポで引き受けてくださることが決まりました。

信頼できる人からの紹介、そして僕の歌をお送りしてすぐいただいた「描ける」というお返事、この人なら絶対いい作品が作れる、むしろこの人でダメなら本当にもう諦めるしかないと思いました。
何度もやり取りを重ね、時にはクリエイターの先輩として大切なことを僕に教えてくださいました。
描いていただいた絵はMVを見ていただいた通りで、そこには『ぼくと満月』の表面的なストーリーだけではなく、精神性やMOFINさんの楽曲解釈を持っての哲学も入り込んでいました。
経過もいただきましたが、ほとんどMOFINさんが独自で描き進めてくださって、それなのに何の不安もなかったのは信頼が勝っていたからだと思います。
その姿勢を見てプロだと思いました。
僕はまだアマチュアだと感じました。
今絵を描いている僕にとって、MOFINさんの見せてくれた姿勢が一つのお手本になっています。


MOFINさんという信頼できる方との出会い、またその出会いを作ってくれた先輩ミュージシャンのおかげでMVの絵が20枚できました。
原画を手渡しでいただいたあの日、僕の何倍も強い力で握手してくれたことを今でも鮮明に覚えています。
紛れもなく、愛で情熱でした。
時は2018年10月17日、僕のツアーが始まる前日のことでした。


絵という素材を手に入れた次は動画を作るという段階です。
実はここに関してはすでにもう人は決まっているのでした。

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