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朝と夜の間をつなぐもの

空と海の微かな間を風が駆けていく。
風は駆けながらあらゆるものを撫でては去って行った。

触発されるようにあらゆるものが動き始める。

夜の帳が上がる。
鈴がそれぞれに鳴り出す。

塔の中で眠る彼らの白く柔らかな頬にも風が触れる頃。

彼らが誰かと重なる時間がやってくる。

重なった先には同じブレスレット。
どう足掻いても直に逢うことのないもの同士なのに、
不思議なくらいに重なった先に必ずある。


ブレスレットについた、小さな鈴と飾りを揺らしながら手首に巻いて留めた。
自分の体で、誰かの体で。この時だけの感覚共有。
相手も感じているかはわからないけども。

窓から入る風に気づいて顔を動かすと、光が影と一緒に揺らめく。

腰掛けていた椅子から立ち上がり、ノブを捻って出て目に入のるは、
さまざまな緑と間から降る陽射し、緑に反射した陽射しのかけら。
大きな枠が膜のようなもので間を埋めていて、上に向かって閉じている。
透明な膜らしきものでより反射が起きて、そこかしこが輝いているようだった。

軽やかに足を進めた先に葉が数枚落ちていた。
木からまた緩やかに翻りながら落ちた葉に手を伸ばす。
指先で枝を挟んだ向きのままに陽射しに翳すようにして持ち上げた。

自然、またブレスレットを見る形に。

つけた時よりも鮮明に「読めた」のは重なった先と共有できたせいなのか。胸の内で丸く読み上げられたその文字は、自分の地に新しく降る白の感触と似ている。
もしかしたら、「判る」かもしれないと思った頃。

風は塔の中にも吊るされた鈴を撫でて宙に交ざった。


帳を引く鈴の音が広がっていく。
いつか歩いた、広大な水の端が動いているような。
遠く、遠くに過ぎる景色を見送ると、体に力がいきなり入る。

勢いよく起きてしまった。
開いた瞼をもう一度閉じることが叶わないことを悟って、体を起こす。
周りはまだ帳の間にいるのか、起きていない。
着ている服、体も特に大きな違いはない。
髪のくせの強さや瞳の色の深さ以外にはあまり変わらない彼ら。

頭頂部から毛先にかけて、朝から夜に変わるような青の濃さ。
毛先は青よりも黒に近いものもいる。
いつか本で見た、あるいは誰かの鈴の音とともに伝えられた夜の空のような。

違和感。
不思議に思って違和感のもとへ目を向ければ、濡れた布の色がある。
ついで、目からゆっくり溢れるものに気づく。
そこでようやく自覚した。

感情が揺さぶられたわけではない。

絶対に重ならない先とわかりきっている。
誰が教えてくれたわけでもないが、なぜかそれだけはここにいる誰もが知っていた。

わかるために流すのか、それもまた違うのか。

窓から入ってきた風に、窓の前に掛かる薄い布が揺れる。
帳の間に見るそれを何か、まだ知らないまま。

窓から見える空は帳が薄まっていくにつれ、白み始めた。
白み始めた空に翳した手、その腕にあるブレスレットの鈴が揺れる。



鈴の音のひとつひとつ。
音に包まれた世界がひとつ生まれては、朝と夜の間を織って彼方と此方を重ねる。


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以前にクリエイターさんと組んで作った動画の中のお話です。
↓話を元に作った動画(むすびさんの作品に感動して作りました)


↓感動した展示作品の一部

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