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応挙はハチワレワンコ推し。「動物の絵」展レポート1

東京の府中市美術館で始まった「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」のオープニングデイに行って参りました。
9月18日、三連休の初日、しかし、東京は台風到来の予報。マーベル映画のシン・チーじゃない、チャンスーがやって来るよ!

悩みました。というのも府中市美術館へはいつも車で行くのですが、駐車場から美術館までは200メートルぐらい離れていてちょっと歩かなければいけない。大雨大風の中、ずぶ濡れになるのも嫌だなぁと。
でも、雨雲レーダーで見てみると、土曜の昼間は晴れ間がありそう。逆に夕方からは大雨決定のようなので(結果的には台風が温帯低気圧に変わり大丈夫だったのですが)、これはもう朝イチから行くしかない。

府中市美術館は毎年秋、日本美術の大きな展示会をやっていて、それが楽しみなんですよね。今年はなんと言っても春の「与謝蕪村展」が最高でした。
美術館に着くと、私と同じように開催を待ちわびていたのか、台風の中でも来ている人がちらほらいました。
学芸員さんや会場係の人たちもいそいそと動いていて、初日に来てみるのもいいもんですな。

ロビーでは、応挙と芦雪のコロコロわんこがお出迎え。
「狗子」と書いて「くし」と読む、やっぱりこのワンちゃんたちが人気なのですね。
かく言う私も、トーハクで買った応挙のわんこのマウスパッド、ボロボロになっても愛用していますけど。

会場に入るといきなり、若冲の「象と鯨図屏風」がどーんと展示してあり、とにかくサイズの大きい絵が好きな私はテンションが上がりました。
この美術館の特別展はいつもそうですが、展示数がかなり多め。今回は前後期でトータル183品だそうですが、前期だけでも100を超えていたのではないでしょうか。
だから、鑑賞時間は2時間ぐらい見て、ご飯食べてから行ったほうがいい。
ただし、同日であれば途中入場と再入場ができます。半分ぐらい見て、1Fの眺めが良いカフェで休憩し、そのあと残りを見るということも可能。
私は特別展を見てから、カフェでランチを食べつつ休憩し、コレクション展を見ました。

<↓カフェのプレートランチ。玄米がおいしかったです>

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展示構成としては、「ふしぎ」「かわいい」「へそまがり」というこれまでの展覧会で提示してきたテーマをもう一度なぞりつつ、日本画と西洋画を対比させ、日本画が動物の生態やその愛らしさを主題としてきたのに対し、西洋はキリスト教の価値観ゆえか、動物は人間に劣るものと考え、あくまで人間に付き従うものや狩猟の対象として描いてきたことを示していました。
それが印象派ぐらいから変わってきて、ゴーギャンの動物の描き方がひとつの転換点となり、最後に展示されていた「翼のある馬」というシャガールの絵で、日本画の描き方とのリンクを感じて面白かったです。

特集展示されていたのは、この2つ。

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1)もしも三代将軍がジャイアンだったら…恐怖! 家光公の下賜画

この府中市美術館の展示がきっかけになり、徳川三代将軍・徳川家光の描いた画伯すぎる絵がちょっとしたブームになっていますよね。
私もここの美術館の「へそまがり日本美術」展<写真上>であんまりな鶏図を見たときは、笑ってしまいました。
今回も前期だけで6点が展示され、お好きな方にはたまらない充実ぶり。
今年、話題になった「ピヨピヨ鳳凰」もいました。これ見たら、若冲なんて泣いちゃうよ!

でもね、こんなこと言ったら、シャレのわからないやつと思われそうだけど、まぁ、家光の画って、見て感動できるものではありませんよね。
仙厓義梵のようにヘタウマを狙ってわざと描いたものは面白いけれど、家光は全力で上手い絵を描こうとしてコレなわけじゃないですか。

それが怖いというか、今回展示されていた画も全国あちらこちらの大名に下賜されたものらしいですが、参勤交代で江戸にいるときにもらったのかなぁ。もらったほうも困るじゃないですか。「お上手ですねぇ」とも言えないし、まず、なんの動物が描いてあるのか分からなかったかもしれない。
「と、鳥? 鳥は鳥でもなんの鳥だろう?」
そんな状態で無理やり褒めどころを見つけるのも大変ですよね。大名のお歴々、冷や汗描いたんじゃないかなぁ。
これはもうジャイアン・リサイタルですよね。欲しくもないのに絵の才能がない将軍の作品を押し付けられ、もらったからには褒めなければいけない。江戸時代だから、下手したら切腹もの。藩邸に持って返ったら、もちろん一ノ間の床の間に飾って平服しなければなりませんね。
そんな不条理極まるシチュエーションをぜひ三谷幸喜さんに映画化してほしい。

今、大河ドラマでも再注目されている最後の将軍、慶喜の描いた絵はそこそこ上手いですよね。やはりそれは教養と客観性があって絵とはこう書くものだと分析できる人だったからだと思うのですが、リーダーなんですから当然。そう考えると、子供のような絵しか描けない三代将軍、いったいどんな人物だったのかと考えるだに恐ろしい。
しかも、それを恥ずかしがらずに大名に与えてしまうとは。家光、恐ろしい子…!

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2)応挙のコロコロわんこはアイドルグループ。センターは“ハチワレ”のあの子!
みんな大好き、子犬たちの画も複数展示されていました。
4匹、5匹と集まって、じゃれあうワンコ、コロコロと丸いその体とつぶらな瞳、小首を傾げカメラ目線でこちらをじっと見つめるその濡れた目。これはもうアイドル・グラビアですね!
その中で、フォーカスが当てられている主役のワンコは、どれもハチワレのワンコなんですよね。さては応挙、ハチワレ推しだったんだな。
え?お前がマウスパッドを持っているトーハクの朝顔狗子図杉戸は白犬が主役じゃないか?って。いやいや、出版社の編集者だったとき、実際にアイドルグラビアを作っていた私にはわかります。この絵だって、一見、左の白犬がメインに見えて、主役はその視線を受ける右のハチワレなのです。目線を受けて微笑んでいるほうが作者の推しです。

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それに比べると、弟子の芦雪は白犬推しだったよう。主役として描かれているのは白いワンコ。有名な「白象黒牛図屏風」に描かれているのも白犬ですもんね。

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こんな感じで、本当にまともに絵を見ているのか?という感じのふざけたレポートですが、次の記事では私が気に入った展示作品ベスト3について書きます。


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