見出し画像

ボランティア研修②その作品の名前は…

美術館ボランティアという生涯学習

前回とは打って変わって爽やかな晴空。水色のストライプシャツを着て、意気揚々と美術館へ向かった。今回からボランティアスタッフの名札を下げ、裏側の関係者用入り口から中へ入る。この時点で漠然とした始まった感がありワクワクだ。

アートボランティア・アートコミュニケーター「よりより」合同研修の第2回。今回は座学が中心で、まずはボランティア活動について、その成り立ちや歴史を簡単に学ぶ。やはり美術館としては、業務の支援だけではなく、あくまでボランティア自身にとっても学習の機会になることを大切にしているそう。“生涯学習”と言われると「まだまだ若いから縁遠い」なんて思いがちだが、じゃあ今自分が何か主体的に学んでいるかと聞かれても、正直答えられない。学びに早い遅いはないとも思いつつ、スタートが早ければそれだけ機会にも恵まれるはずだ。

その後は監視スタッフや受付スタッフとして働く方から、業務内容や来場者を受け入れるにあっての準備・心構えなどについて話があった。とにかく受付の方の声と話し方が素晴らしい…思わずこちらも明るい気持ちになる。
接遇についての説明では、実際にその場でお辞儀をして「いらっしゃいませ!」と挨拶を声に出して実践する場面も。この時だけ飲食店アルバイトの研修会場のような雰囲気だったが、これだけ丁寧に研修する場を設けるあたり、美術館側の気合いも感じられる。

そもそもボランティア募集は、2004年の開館に合わせたものから数えて4回目。コロナ禍の影響もあって今回は約7年ぶりとのこと。さらに美術館では全国から年間約300校の子どもたちを受け入れているそうで、とんでもない数!そこで今回は新たに“よりより”を別枠で募集し、館内や展示を案内してもらおうという考えのようだ。ちなみにアートコミュニケーターという肩書きについては、今後活動内容が変化する可能性も考慮して決めたそう。確かに、対話によってアートを深める行為にはできることが色々ありそうだ。

作品タイトルを自由に考える

今回印象深かったのは、最初にアイスブレイクとして各グループごとに取り組んだアートカード体験「タイトルはこれだ!」。内容としては、机に並べられた美術作品の描かれたカードから好きなものを一枚選んで、その作品のタイトルを自分なりに考えて理由とともに発表するというもの。なんだか試される感もあって妙に緊張しつつ、気になった作品が描かれたポストカードを手に取った。

その作品はおそらく絵画で、キャンバスの下の方に建設途中のビル群が精密に描かれている。ただかなりの遠景で、全体的に霧がかかったようにぼんやりしている。さらに上半分以上はもやもやした曇り空で、何も描かれていない。なんだかヨーロッパの曇り空のようにも見えるし、手前の森?が海?のようにも見えてきた…。

そこで自分が付けた作品タイトルは「途上の島」。まだ見えていない、描ききっていない部分の印象を言葉にしてみた。グループで発表した際の反応もまずまず。最後に答え合わせとして、実際の作品タイトルを確認してみると…

マヌエル・フランケロ
【無題】

………え、それってありなの?
クイズで解答候補に正しい答えがないとか、該当するものがない選択問題とか、そういう引っかけ問題じゃないかッ!!まあ趣旨として正解を当てるのが目的ではないとはいえ、肩透かしをくらったような。思わずグループの皆さんと笑ってしまった。
でも考えてみれば「無題」の作品は美術館でもまま目にするし、もちろんそれがダメという決まりなんてない。固定観念に捉われず、アートを自由に受け止める。早速アートコミュニケーターとしての洗礼を(勝手に)受けたように思えた。

2回目にして学びの深い研修となり、次回以降もより楽しみになってきた。帰りに行きつけの老舗喫茶でホットサンドとコーヒーのセットを注文。いつもパンの耳には少しだけ塩をつける。うん、理想的な休日だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?