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夕暮れの公園で、影の話を

公園で、友人と性愛の話をした。昨年末に起きたお互いのすれ違いからはじまって、半ば喧嘩のようになり、その原因を紐解くうちに、それぞれの性愛に関するコンプレックスの話に移っていった。

それぞれの価値観を受け入れるようなやさしい時間ではなかった。けれど、背景に持っているものの話を聞いたときに、その人の存在が自分の中で濃くなった実感があった。「だからあなたはあのときこう思っていたのね」と、私と全然別のものとして、その人がいまここに「生きている」という感覚が立ち上がる瞬間があった。

公園のベンチで暮れゆく空を見上げながら、光がひときわ強く差し込んだとき、セックスや欲望やコンプレックスは影のようなものかもしれないと思った。表に出てくることはあまりない。けれど、光に照らされた時に確かにそこに存在している。実体のある人間にはかならず影がある。昔読んだ、幸運と引き換えに影を失った男の小説の結末はなんだったっけ。

人と関わることの難しさをときほぐしていくのなら、性愛について考えることからは逃れられない。自分の実体にもっとふれていくために、私は私のコンプレックスや欲望にもっと関心を持っていく必要がある。当たり前のことだけど、欲望もセックスもたったひとりではできないことだと思うから。

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