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ロンドン ナショナルギャラリー展

上野の国立西洋美術館で開催されているロンドン ナショナルギャラリー展を鑑賞しました。海外での大規模な展覧会開催は今回が初めてということもあり、全61点が日本初公開となります。

ナショナルギャラリーは1824年に設立され、2300点以上を所蔵しているイギリスの国立美術館です。通常コレクションの由来が貴族や王室であるヨーロッパの中では珍しく、個人からの寄贈や当時の館長が購入したものが多くなっています。

今回の展覧会は、イタリアから始まりオランダ、スペイン、パリなどのヨーロッパ各地との芸術や歴史上の関わりがメインのテーマとなっており、最後にギャラリーの歴史という構成になっています。ここでは、印象に残った3点の絵画をご紹介いたします。

第1章 イタリアルネサンスの絵画収集
第2章 オランダ絵画の黄金時代
第3章 ヴァン・ダイクと イギリス肖像画 
第4条 グランドツアー
第5章 スペイン絵画の発見
第6章 風景画とピクチャレスク
第7章 イギリスにおける フランス近代美術受容

第1章 イタリアルネサンス絵画の収集
    「聖エミディウスを伴う受胎告知」
     カルロ・クリヴェッリ作

ギャラリーが設立された当初、イタリアルネサンス(※1)はとても重要な分野となっていました。この絵もその頃の作品です。奥行きのある白い2階建ての建物の入り口付近にマリアである若い女性が跪いています。通りには受胎の告知をするガブリエルと守護聖人エミディエス、そして背景には街の日常生活が描かれています。個人的には受胎の告知と言うと、暗い密室の中で光が差し込んでといった具合に厳かな雰囲気を想像してしまうのですが、ここではとても明るくカラフルに描かれて色合いを楽しむことができます。そして、マリアの受胎という宗教的な意味合いと日常生活の描写というアンバランさに注目してみることで、より面白さが増すのではないでしょうか。手前には立体的な野菜が描れており、いまにも飛び出してきそうで少しユーモラスさも表現されています。

※イタリアルネサンス・・・14世紀から始まった文化運動のこと

第2章 オランダ絵画の黄金時代
   「ヴァージナルの前に座る若い女性」
    ヨハネス・フェルメール作

フェルメールの作品は、鮮やかな青や黄色の色彩が用いられているのが特徴で、この絵にも鮮やかなブルーのドレスを着た女性が描かれています。その若い女性はヴァージナルに手をかけこちらを向いています。客人が来たのか、誰かが帰ってきたのか。恋人が帰ってきて振り向いたという説もあるそうです。通常フェルメールは左側から光が差し込む構図が多いそうなのですが、この絵は左側にはカーテンがかけられており、右から光が差し込んでいます。背後には、娼婦である若い女性、仲介人である女性、客とみられる男性が話している絵がか飾られています。
女性のドレス、光が当たるチェロは明るい印象もうけますが、全体的に落ち着いた雰囲気となっています。女性が弾いているヴァージニアの曲も音声で聞くことが出来、音楽を聴きながら眺めていると悲しさすらこみあげてきます。
ヴァージナルの手前にはチェロが置かれており、このチェロはだれが弾くのか、壁に飾られている絵画は何を意味するのか、自分なりに想像して鑑賞すると更に興味が湧いてきます。


第7章 イギリスにおける フランス近代美術受容
    「ひまわり」
    フィンセント・ファン・ゴッホ作

言わずと知れたゴッホの「ひまわり」。新宿のSONPO美術館に所蔵されていることは皆さん周知の事実ですね。この「ひまわり」なんと7種類あるそうです。全て色合いや形が違っていて、全く印象が異なります。特に背景の色彩の違いが興味深いです。
今回の作品は4番目に描いたもの。ゴッホはアルルの家にゴーギャンを向かい入れるために向日葵を描きました。2か月程で2人の共同生活は終わってしまいますが、その後、タヒチに移住したゴーギャンは自らもひまわりの絵を描いたそうです。その頃、ゴッホは既に亡くなっていたそうで、ゴーギャンが何を想いひまわりの絵を描いたのかとても気になります。

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今回の展覧会は国ごとにチャプターが区切られており、絵画と共にヨーロッパを旅をしているような気分になりました。特に第4章、第6章、第7章の風景画を鑑賞しているとそういった気持ちは一層強まります。遠い海の向こうロンドンに所蔵されている芸術を鑑賞できる機会は早々ありません。しかも、今はコロナの影響で完全予約制となっている為、比較的ゆっくりと鑑賞することができます。国立西洋美術館も長い改修工事に入るそうですので、この機会に足を運んでみていは如何でしょうか。
10月18日(日)まで。。






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