痛覚、そして癒し。
例のイベントにとうとう2日間とも行ってしまった。何故なら2日目は展示に加え、パフォーマンスや催しがあるとのことだったから。
美術的演出はもちろん、問題提起のパワーが強烈。大事なことだと思う。様々なジャンルの方々からもっと注目されていいイベントかもしれない。
「花を加えることによって雰囲気がぐっと明るくなった。」と、作者。インスタレーション作品「鎮魂の祈り」の一部。
「鎮魂の祈り」の全体像。ここはかつて大勢の患者が布団を敷いて雑魚寝していた場所。ここに渦巻いているであろう様々な人々の積年の思いや感情等を癒し、浄化する意図で医師が作った作品である。現代美術愛好家なだけあって、なかなかのセンスではないか。洗練されたヴィジュアルながら、本来の表現意図も伝える要素をしっかり押さえている。やや宗教的な匂いも感じるので最初の印象は穏やかでないが、そこにしばらく佇んでいると、不思議と心が静かになってくる。まさにこの作品のテーマカラーの如く、自分が白くなっていく感覚だ。
向かって左側にあるモニュメント。遠目では箱型の造形物だと思っていたが、接近してドキリとした。…なんと薬箱の集合体であった。ここで闘病していた方々の苦しみの記憶が伝わってくる。
この窓にもかつては鉄格子がはめられていたのだそう。
3名によるパフォーマンス「鎮魂の祈り」が始まる。観客には塗香が振る舞われ、私もそれをひとつまみ、手と首に擦り込んで客席に加わる。まず観音経があげられる。それから祝詞、舞踏が続く。シンギングボウルの妙なる音色と融合して場がさらに涼やかになる。これはあくまでも芸術的表現、パフォーマンスアートである。仏像を美術として愛でる文化があるのなら、経文や祝詞を音楽ないし文学として愛でることもあっていいのではないだろうか。
作品の中には本来の意図「鎮魂の祈り」がしっかりと込められている。
タイトルは「Geshichte(ゲシヒテ)」。看護士と作業療法士によるインスタレーション作品。問題提起の意図がダイレクトに伝わってくる。
明るい水色が逆に不気味だ。毛羽立った白い縁取りに生々しい歴史を感じる。
2日目も素通りできなかった。かつての「保護室」。現在このように鉄格子を少しずつ切っているのだそう。しかし、切る前は鉄格子がこんな間隔でびっしりはまっていたのかと思うとなんとも切ない気持ちになる。
さて新棟へ移動。うってかわってこちらは安らぎのフロア。ここは足湯コーナー。カブトチェアに座ってゆず紅茶を飲みながらゆっくり温まることができる。他にも無料のマッサージ体験があり、これもまた気持ちよかった。
これも作品かと思ったら「青竹踏み」。1周したら心なしか身体が温かくなった。限られた空間にうまくレイアウトしている。
パワフルな版画作品や油絵、ステンドグラスで彩られた空間。新棟の展示は明るく柔らかく、救いがあった。
色とりどりの行燈。
エントランスではちょっとしたライヴも行われていて、和やかな雰囲気。
…ベーシストはここでも人材不足なのか?
詩の朗読をするグループ。思い切り声を出すということは氣が巡るし、気持ちが良い。言語による表現は直接的になるためなかなかハードルが高い。それでも勇気を出して声にする。
再び先程の旧棟に戻る。閉場時間が迫っているにも関わらず、来場者が途切れない。
この廊下も設立以来、どんな壮絶な日々を見守ってきたことか。
新聞社の取材を受ける院長。この企画はどのように掲載されるだろうか…。
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