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14arts|1894 Visions ルドン、ロートレック展(三菱一号館美術館)

開館10周年を迎えた三菱一号館美術館。その一号館が丸の内初のオフィスビルとして建てられた1894(明治27)年を軸に、東西の芸術家の作品を紹介する展覧会です。ちなみに1894年は、日清戦争やドレフュス事件があった年で、濱田庄司や荒川豊蔵、速水御舟が生まれ、カイユボットや高橋由一が亡くなっています。

ギュスターブ・モローのピエタ

会場ではじめに目にするのが、ギュスターブ・モローの《ピエタ》です。遠景に山々がみえる荒凉とした場所で磔刑後のイエスを抱くマリア。その地面近くには、イエスの死を悲しみ、祈る人々の頭部がぼんやりと浮かびます。神々しく絢爛なイメージのあるモローの意外な一作に、早くも来た甲斐があったなと思いました。

オディロン・ルドン—陰と陽

本展の2本柱のひとりであるルドンは、人面花やひとつ目の気球など奇妙な生物をモチーフにした木炭画や、鮮烈な色彩でどこか浮世離れした人物や静物を描いたパステル画を描いています。
「ルドンの黒」と称される木炭画の作品群は、静止した時のなか、端正で抑制の効いた黒がルドンの内面を映し出しています。岐阜県美術館から《蜘蛛》も来ていました。 脚が10本だから厳密には蜘蛛ではないのかも……。
パステル画には、新種の生物のような形をした花、あまりにも発色が良くて現実味のない花、神話的風景などが描かれます。黒の作品と同様に神秘性は帯びているのですが、作品には穏やかな平和な時間が流れ、みる者に幸福感を感じさせます。三菱一号館美術館所蔵の《グラン・ブーケ(大きな花束)》では、パステルを水で溶いて塗ったり、掻き落としたり、粉にして定着させたりと、さまざまな技法が使われているそうです。ルドン自身がパステルに魅せられ、色彩やその効果を意欲的に探求しており、そうしたプラスの感情やエネルギーが作品に表出しているのかもしれません。
《グラン・ブーケ》のフォトスポットもありますよ〜。

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アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック—光と影

トゥールーズ=ロートレックはムーラン・ルージュのポスターで人気を集め、娼館に入り浸って娼婦たちのプライベートな姿を共感をもって描きました。
彼のポスター作品は展覧会で目にする機会も多く、作品単体としては新鮮味は薄い印象です。今回はやや狭くとった展示室の壁面に、建物の図面を印刷したシートが一部貼られ、壁の両側に作品が連なっています。まるでパリの街中を歩いてポスターを眺めている気分になりました。描かれている人物は当時の人気スターですから、今で言うと駅構内の巨大ポスターやサイネージで人気アイドルが宣伝するようなものでしょうか。
一方で、娼婦が身支度をする様子やぐったりとベッドに体を預ける様子を描いたリトグラフには、彼と娼婦との親密な間柄が伝わってきます。トゥールーズ=ロートレックは、表舞台で輝く彼女たちも、舞台裏で疲れきった彼女たちも、愛していたのでしょう。

日本の洋画家たち

フランスに留学した日本の芸術家のコーナーでは、黒田清輝や山本芳翠、藤島武二、梅原龍三郎らが紹介されています。注目は山本芳翠《浦島》。肉厚な身体表現と金属や水晶の質感の画き分け、右手奥から左手手前へと行列が続く遠近表現など、学習の成果が遺憾なく発揮されています。

音声ガイドとグッズ

チケットは日時指定制で一般2,000円なのですが、音声ガイドがもれなく付いてくるので妥当な値段設定でしょう。音声ガイドは、専用アプリをダウンロードして会場でパスコードを受け取り、自分のスマホやタブレットで聞くことができます(イヤホンを忘れずに!)。アプリ配信期間中であればいつでも聞くことができるので、図録や絵葉書をみながら自宅でじっくり復習できますね。
グッズは作品を大胆にトリミングしたバッグやノート、ハンカチなどがとてもおしゃれでした。開館10周年ということで、一号館の建物やレンガ組みをモチーフにしたグッズも豊富です。
私はルドンの黒ごまジャムとヴァロットンのミルクジャムを入手。蓋にかぶせた布も作品の一部分を印刷したものです。さっそく黒ごまをいただきましたが、なめらかでトロッとしていて美味でした。

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