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とあるスポーツチームフロントによる回想録【獅子吼】vol.5 ホームゲーム運営

前回初めてのホームゲームについて触れました。
今回はその続きと、ホームゲームの裏側について書いて行きます。

バレーボールのホームゲームは通常土曜日・日曜日の2日間連続で行われます。
通常は同じ体育館を金曜日から3日間借り切って準備をするのですが、この大会では土日を連続で取ることができませんでした。
土曜日をAGF鈴鹿体育館で。翌日の日曜日には津市一志体育館での開催でした。
当初甘く考えていたのですが、これが本当に大変なことで・・・

土曜日、無事に初めての大会を終えてホッとするのも束の間。即座に後片付けが始まります。津の体育館に移す物。そのまま処分する物。など大混乱の中、移動の準備が始まります。
のぼり・横断幕はもちろん、椅子やコート周りなど全てを片付けて、夜の内に津市の体育館に移動し今度は一から設営しなければなりません。

資金的に余力があれば、2会場準備をしておいて、並行して準備すれば良いのですが人手も資金もそんな余裕はありません。
金曜日に半日かけて準備した会場を、違う場所へ移動して椅子ならべから再設営ですから何となく大変さは伝わるのではないでしょうか。

体育館は24時間やっているわけではありませんので、準備にも限度があります。
流石にその日の内に準備することができず、準備途中のままで解散となりました。

翌日、早朝から集まったのですが、実は開場時間になっても準備が終わっておらず、装飾をしている状況でした。これも普通はありえない事ですね。
試合を観にきてくださるお客様を準備が間に合わずにお迎えするわけですからありえないです。入場するお客様の横でギリギリまで作業を続けなんとか、試合前に仕上がった会場です。

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ただ事実、私たちの当時の裏側はこんな感じでした。
試合のほとんどが自分たちではできない。これが現実です。
受付・駐車場の整理・コート作りなど当日のほとんどの作業を三重県バレーボール協会に頼っています。この時から、これはなんとかしなくては!と思いながらも今もほとんどを協会に頼ってしまっています。

前回色々と課題を書かせていただきました。
確かに初日にそう思ったのです。ですが2日目、準備から手伝った後は更に根本的な課題も見えてしまいました。
ですがこの部分、即座に変えるには私たちの組織があまりにも脆弱であり、協会の皆さんの好意に頼る他ないというのが現実でした。
少しでも裏方で汗をかいてくださっているスタッフの皆さんに感謝をお伝えする場はないか?
そう考えて、翌年の2019シーズンで導入したのが「グランドフィナーレ」です。
シーズン最終ホームゲームに、スタッフ・選手・チアなどホームゲームに携わっていただいた皆様全員が一緒にコート上に立って、観客の皆様にご挨拶をさせていただく場です。

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全員と言いましたが、それでも警備関係や、チケットなどどうしても動けない人たちもたくさんいて、実際には私たちの試合を一つ行うのに数十名の協会の方々が支援してくれています。

私たちが真に興行としての試合運営を続けていくならば、この部分の改善は今後も継続的に必須になると考えています。
同時に今のVリーグ、少なくともV2,V3はチームだけで試合を運営できているところはごく僅かだと思います。
つまりVリーグは非常に多くの地元バレーボーラーの皆さんの支えによってかろうじて運営をしている。そんな現実があります。
今、Vリーグのチームが各地に存在し、試合が運営されているのは、その地域のバレーボール協会の、バレーボールを愛する人たちの下支えの賜物に他ならないのです。
本来は、チケットを買って入場してくださるファンの皆さんがいる→そのお金で会場とスタッフを整えることができる→よりサービス向上を図ることができる→お客様の満足度が上がりリピーターとして応援してくれる→より来場者が増える。

こういう循環に持っていく必要があります。
口で言うのは簡単で、多分どのチームもわかってはいても中々実現はできないので少しづつ、1歩1歩前に進めている。という段階が今です。

当時、こういった現実を直視する2日間を共有して以降、ホームゲームがチームだけが創っているものではない。選手のためのものでもない。選手・ファン・スタッフ・行政・スポンサーなど関係者全てが一緒に創りあげるものだ。ということを知りました。
ですので、観て楽しんでいただく。から参画していただく。ことに注力していくようになります。
応援も会場全体が、参加していただけるように。

これは正解ではなく、私たちはこの方向を選んだ。という事です。
もちろん他にも選択肢もありましたし、他の方向で成功なさっている事例もたくさん調べました。数ある中で、今の私たちに一番合っている方向性だと感じたわけです。2019-20シーズンの後半からコロナショックと共に、私たちの方向性には大きな禍をもたらしました。参画型のイベントはコロナ禍においては実現不可能だからです。昨シーズンは全試合無観客となり、約1年半ぶりの有観客試合を目指しwisコロナとも呼べるシーズンが間も無く幕を開けます。
新しい形の試合運営が求められることでしょう。

しかしながらこれからもVリーグは地元のバレーボール関係者の皆さんの尽力によって繋がっていくのだと思います。
そしてバレーボールを愛するファンの皆さんのお陰でチームは存在し、コート上で全力でそれに恥じないプレーをしてくれる選手たちがいて、成立しています。

運営者として、その全てに深い感謝をしています。
今年もまた皆さんと同じ会場で感動と興奮を共有できることを心より楽しみにしています。

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