ECB理事会プレビュー いずれ追加緩和との見方

■ ECBは政策据え置きの見込みだが、追加緩和を巡る手掛かりが示されるか声明や会見に注目

■ いずれ新型コロナウイルス対応の追加緩和に踏み切らざるを得ないとの見方が強い

 10月29日、ECB(欧州中銀)理事会は政策据え置きを決定すると市場は見込む。ただ、欧州では9月中旬以降、新型コロナウイルスの感染が急拡大しており、1日当たりの新規感染者数は3月の感染第1波をはるかに超える。こうしたなかスペインやイタリアでは既に緊急事態宣言も発動されている。さらにECB理事会を直前に控え、域内第1位、第2位の経済大国であるドイツ、フランスで全土に感染対策の都市封鎖(ロックダウン)が宣言され、12月初めまで約1カ月間の外出禁止など厳しい行動制限が課されることになった。

 9月のECB理事会ではリスクは下振れ方向にあるとしつつも、四半期ごとに公表する経済・経済見通しにおいて、メインシナリオの今年の成長率見通しをマイナス8.7%からマイナス8.0%へ上方修正した(2021年は5.0%の見通し)。ただ、先行きの不透明感が強いことから、新型コロナの感染状況が軽微な場合、深刻な場合を加えた3種類の見通しをECBは公表した。現在の状況を踏まえれば、深刻な場合(2020年成長率:マイナス10.0%、2021年:0.5%)に該当する可能性が高い。こうしたなか物価は8月以降、2016年以来の前年比低下に転じており、ECBの目標(2%に近いが下回る)の達成に向け、量的緩和策であるパンデミック緊急購入プログラムの規模をいずれ拡大せざるを得ないとみられる。だが、ドイツ連銀バイトマン総裁が新型コロナ対策は経済を予想以上に押し上げる可能性があるとして、追加緩和は不要と発言するなどECB内で意見が割れている模様。本日の理事会声明文やラガルド総裁の記者会見で追加緩和実施に向けて何らかの示唆があるか、市場は大いに注目している。

 欧州復興基金創設や欧州共同債発行への期待を背景に9月1日にユーロドルは1.2011ドル、ユーロ円は127円07銭と2018年5月、2019年3月以来の高値を付けたが、新型コロナの感染拡大で、足元は1.17ドル台前半、122円台前半へ下げている。今回の理事会で早期の追加緩和が示唆されると、ユーロドルは1.16ドル、ユーロ円は121円辺りを意識するとみている。

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