米株安の解釈

■ 先週後半の株安は割高感に起因する水準調整と判断すべき

■ 株価調整が深まらないか、8日に再開する米議会の動向を慎重に見極めたい

 先週3日、4日と米国株が続落した。これまで株価上昇を牽引してきたハイテク株中心に売りがかさみ、ナスダック総合指数は2日に付けた過去最高値から4日の日中安値までの下落率は約10%となった。ブルームバーグによれば、2日時点で、ナスダック総合指数の予想株価収益率(PER)はおよそ34倍と2002年1月以来の高水準にあり割高感が強まっていたほか、相場の勢いを示す相対力指数(RSI、14日)は80.3と買われ過ぎを示す70を大きく上回り過熱感が高まっていた。S&P500株価指数の騰落率(2日終値から4日終値)をセクター別に確認すると、情報技術(7.1%下落)の下げが目立っており、金融(0.8%下落)や資本財サービス(2.6%下落)など金利上昇や景気回復期待の高まりが追い風となるセクターへの影響は限定的である。また、向こう12カ月一株あたり利益(EPS)は回復基調に転じているほか、米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和の長期化観測が強まっており、株式を取り巻く投資環境はむしろ改善している。この間のその他資産の動向を確認すると、米10年国債利回りは3日につけた0.60%台前半から4日には0.72%台前半まで急上昇、金先物価格は1トロイオンスあたり1900ドル台で小動きとなっており、リスク回避の動きが強まっている様子はうかがえない。4日の米国株が取引終盤にかけてやや持ち直していることも踏まえれば、ここまでは割高感に起因する株価調整の範囲内と冷静にみておくべきであろう。 

 しかしながら、調整幅が一段と深まる可能性もくすぶっている。7月末に期限切れとなった失業保険の特例給付は個人消費を下支えするとともに、一部は株式投資に流れていたとの指摘がある。大統領令により週600ドルから300ドルに減額して延長されたものの、これまでと比べれば力不足だ。また、中小企業の給与を補填する6600億ドルの特例措置は8月初旬に申請期限が切れ、1000億ドルを超える資金が未消化となっているほか、航空会社への雇用支援策も9月末で期限が切れる。所得や雇用の支援策が縮小されれば、割高な水準でも株式を買い進めてきた原動力が損なわれることとなる。追加経済対策の規模では、1兆3000億ドルを掲げる共和党と、2兆2000億ドルが必要と主張する民主党では溝がある。8日に再開する米議会で、追加経済対策を巡る議論が停滞するようであれば、それを手掛かりに株価水準の調整が一段と進む可能性があり、警戒しておきたい。

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