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【母方ルーツ#6】 釜石への祈り 前編


母方祖母のルーツにはこんな口伝がありました。

「いつか釜石へ行くことがあったならば、菊池〇〇の像を見てきて欲しい」



祖母が曽祖母から聞いていたという話で、明確な情報は全くわからぬまま何となく私の代まで伝わってきた言葉です。

母方祖母のルーツは岩手県にありますが、母はもちろん、祖母も釜石へ行ったことはありません。

曽祖母は岩手で生まれ、幼い頃、両親とともに北海道に渡っています。

では、菊池〇〇とは誰なのでしょうか。
一体何の銅像なのでしょうか。


ルーツの一つ菊池姓


戸籍を取得することで岩手県での本籍地と、7代前の先祖の名前まで確認することができました

母の母(祖母)の母(曽祖母)の母(高祖母)の旧姓が菊池であり、
菊池市蔵(五世祖父)、さらには菊池力蔵(六世祖父)まで判明しました。

釜石に銅像があると聞いていたにも関わらす、本籍地は東和賀郡という、釜石よりもずっと内陸、現在の北上市にあたる場所です。

釜石に繋がる何かヒントになる記載ははないかと、いつものように戸籍を一つ一つ読み込んでいきました。


釜石とのつながり


以前別の記事にも書きましたが、当時は養嗣子として家を出入りするケースがしばしばみられます。

市蔵(五世祖父)の息子の一人が釜石村の猪又家の養嗣子となっていることがわかりました。
また、市蔵自身も、死亡届は上閉伊郡釜石村で提出されています。

本籍地とは別の場所、つまり釜石村で生活していたことが想像されます。

それがいつからなのかは戸籍の情報だけではわかりませんが、これは有力な情報と言えそうです。

実際に取得した戸籍
本籍地  岩手県東和賀郡藤根村
五世祖父菊池市蔵  (文政12年生ー大正2年没)

六世祖父菊池力蔵  (生年不明)

この戸籍も、よくぞ残っていてくれたというほど、たくさんの情報を含んでいました。

七世代前の先祖のお名前も判明した上に、生まれは文化11年、西暦で言うと1811年です。

明治19年式戸籍内で確認できる最古の年号はおよそ文化、文政です。

その前は享和、これはなかなかお目にかかれないようです。


では菊池〇〇とは、誰なのでしょう
菊池市蔵か力蔵あたりを指すのでしょうか。

そもそも何の銅像なのか。

銅像が立つくらいだとすると、それなりの功績を残した人物であることは想像に難くありません。

いよいよ私の先祖にも偉人登場するかも知れないと、心躍ります。

実際に現地に行って調査してみたいところですが、そう簡単に行ける距離ではありませんし、何の情報も持っていない中でぶらぶら釜石を捜索なんてことも現実的ではありません。

先祖調査をしている方々によると、図書館リファレンスサービスを有効活用している方を多く見かけたので、私もこのサービスを利用することにしました。

県外者であっても、その県に関することであれば調査依頼ができるというのです。
何という便利なサービスでしょう。

ダメもとで調査依頼してみることにしました。


岩手県立図書館 リファレンスによる回答


【質問】
家族の伝承で、釜石に先祖の銅像がある(あった?)と聞いています。
 菊池姓との関りを知りたく、何か情報をいただけますでしょうか。

【既知事項】
・菊池姓の先祖(可能性としては、菊池市蔵、八重蔵、一)
・釜石鉱山関連で何らかの功績を残した?
・時期は明治期以前か。
問い合わせ内容

実に曖昧な質問を投げかけたものです・・・

こんな質問を投げかけ、一週間。
回答のメールが届きます。

【回答】
当館所蔵の釜石鉱山関連資料を調査いたしましたが、
ご質問について記載されている資料は確認ができませんでした
お時間をいただきまましたが、お力になれず申し訳ございません

釜石関連資料において、「菊池(地)市蔵」らが明治三陸津波の死者を追弔するために鋳造した銅像について記載のある資料を参考までにご紹介させていただきます。
なお、お探しのご先祖様と同一の方かという点については確認できませんでした。
予めご了承ください。
リファレンス回答


お力になれず申し訳ありません、と謝罪の言葉が綴られていたものの、
「菊池(地)市蔵」らが明治三陸津波の死者を追弔するために鋳造した銅像についての情報を参考として提供してくださったのです。

明治三陸津波…追悼…

「お探しの先祖と同一の方かという点については確認できませんでした」との文言が添えられていたけれど、直感的に、先祖である菊池市蔵に違いないと、確信に近い感覚を覚えました。

しかし、同時に全く予期していなかった回答にしばらく呆然としてしまいました。

「明治三陸津波の死者を追悼」した先祖がいる・・・

これはもう少し調査を進めなければなりません。

急に厳粛な気持ちになり、またまたミッションを仰せつかった気がしてきました。


続く。

#先祖 #ルーツ#釜石#追悼
#三陸海岸 #祈り




【参考資料一覧】
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『釜石市誌 史料編4』 釜石市誌編纂委員会‖編 釜石市 1963年
『釜石市誌 通史』 釜石市誌編纂委員会‖編 釜石市 1977年
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『釜石村の町立ての事 正福寺の門前町』 野田 宗義‖著 野田宗義 2014年
『新天地釜石村の創造 鎮守の神々の配祀』 野田 宗義‖著 野田宗義 2014年
『釜石・大槌さんぽ 「鉄のふるさと」を訪ね歩く』 岩手県沿岸広域振興局経営企画部産
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『かまいしの想い出を未来へ』 eネット・リアス(悠々クラブ)‖制作  eネット・リアス
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『あぁ、わが街に砲弾の雨が降る 釜石を二度も襲った艦砲射撃で千人の命が! 』千田 ハ
ル‖文 村上 伊三雄‖絵 ツーワンライフ 2015年
『ふるさとの歴史』 大幹会‖編  大幹会 1968年
『岩手の庚申塔』 岩手県立博物館‖編集 岩手県文化振興事業団 1992年
『陸中海岸の石仏』 続 小島 俊一‖著 熊谷印刷出版部 1986年
『郷土史への招待』 昆  勇郎‖著〔昆勇郎〕 2009年
『かまいし千夜一夜 企業城下町物語』 菊池 弘‖著 岩手東海新聞社 1984年
『くろがね風土記 釜石に於ける日本近代製鉄の歩み』 杉本 春夫‖著 せせらぎ書房 
2014年
『狼火挙る 釜石鉱山労働騒動実記』 荒木田 忠太郎‖著 釜石 1952年
『田中時代の零れ話』 村井 信平‖著 村井信平 1955年
『遠野菊池党』 入内島 一崇‖著 入内島一崇 2005年

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