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~読むアロマ~「それから」夏目漱石

物語の世界観を香り(精油)で表現する「読むアロマ」。「読むアロマ」は、思わず手に取ってしまう美しい装丁のように、イメージを香りでデザインしたもの。物語と、精油が持つ香りや働き、様々なエピソードをつなげて、オリジナルのアロマブレンドを作ります。

新旧、ジャンル問わず、好きな物語、気になる話をランダムにピックアップして、作った香りのご紹介です。


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「それから」 夏目漱石

文豪です。私にとっては鴎外でも谷崎でもなく、文豪といえばこの方。「こころ」ではなく「吾輩は猫である」でもない。「それから」というチョイスが自分らしくナナメだなと思いますが(笑)

映画の松田優作&藤谷美和子主演のイメージと、内容はうっすら覚えている程度。四半世紀ぶりに読んでみました。

いや~、びっくりです。作品が書かれたのは1909年(明治42年)、今から110年も前。文体こそ古き時代のものですが、切り口は現代にも通ずるものばかり。「親からの価値観の刷り込みの苦痛」「働くことの意味。食べるために働くか、人生の目的のために働くか」「物質主義(お金)と道義(人としての在り方)の矛盾」などなど。

主人公代助は高等遊民、今でいう高学歴ニート。理想と現実、思考と行動、様々な矛盾を抱え込み、ぐるぐると迷宮入りしていきます。

そして、なんと!「それから」にアロマセラピーが登場するではありませんか!神経過敏気味の主人公は、世間の刺激に疲れると、甘みの軽い香りの花を活け、その下で香りを嗅ぎながらうたた寝をします。

「香りが噪ぐ(さわぐ)意識を吹いていく」「これが成功すると(略)神経が生まれかわった様に落ち着いて(略)」(本文より)


また、運命の女性三千代とのシーンでは、ふたりをつなぐ象徴に白い百合が使われ、むせかえる香りの中で秘めた想いを告げる場面が描かれます。まさに記憶と情動。香りが人にあたえる刺激そのままに情景を作り出しています。

漱石の時代に「アロマセラピー」という言葉はまだ存在しませんが、日本人は長く香りを使ってきた歴史があり、本能と知性を結ぶアイコン的な役割を担っていたのかもしれません。


<読むアロマ「それから」ブレンド>
・ティートリー
・ジュニパー
・ネロリ
・パチュリ
・イランイラン(ひらりと香る程度)


読み始めてすぐ、雨、日本家屋でパチュリをイメージ。代助の都会的なシャープさを出すのはティートリーとジュニパー。ほのかな花の香りはネロリ、白百合はイランイランで。ほろ苦いなかに、隠れるように匂う甘さが重みを出します。

自分のスタイル、哲学という縛りに、取り込まれていった主人公に解放とやすらぎを。そんな思いを込めたブレンドです。

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