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★『月おとこ』トミー・ウンゲラー
ユーモラスでナンセンス…だけど、楽しく安心して読める
「行きて(生きて)帰りし」物語
『ゼラルダと人喰い鬼』はじめ、数々の面白い絵本を生み出したトミー・ウンゲラーのナンセンス?絵本です。
日本には『かぐや姫』という昔話があったり、月には兎が住んでいる、とか、「月」というと美しく妖しく神秘的なイメージですが、この月のお話はユーモラス&ナンセンスで、日本的な風情や余韻はありませんが、安心して楽しめるお話です。
![](https://assets.st-note.com/img/1671166604407-Vg3BM6jWLg.jpg)
さてこのお話のいうことには…月には「月おとこ」が住んでいます。
月おとこは月のように顔がまんまるで、全身青白く光っています。
そして「月おとこ」は月で退屈していました。
ある日、流れ星のしっぽをつかんで、そのまま地球に墜落します。
当然、地球は大騒ぎ。
月おとこは、地球人たちに発見され、「宇宙からやってきたインベーダー」(懐かしですね…)として捕まってしまいます。
ところがこの月おとこ、簡単に脱獄するのです。
その理由も、とても合理的で笑ってしまいました。
月おとこは、仮想パーティにまぎれこんで楽しむのですが、ふとしたことで科学者と出会って…。
大人が読むと、一見ただのドタバタ劇のようにも思えますが、月おとこが、好奇心にかられて地球にやってきて、そしてまた無事に月に戻ってよかったね、という立派な(?)「行きて(生きて)帰りし」物語です。
それは月の満ち欠けと同様に、物事がいろいろあってもあるべき場所にあるべき形で落ち着く物語であって、それは悪くいえば予定調和な物語、ともいえるのかもしれませんが、安心・安寧が約束された物語でもあります。
どんな危険なことがあっても、どんな苦しく辛いことがあっても、「無事に帰れる」「帰ることができる場所がある」という確信は、子どもたちにとって、一番安心できる心の拠り所ではないでしょうか。
物語の始めと終わりに、のんびりと(ちょっと窮屈そうですが…)お月さまにすわりこんでいる月おとこは、両方とも満足そうに、「ニッ」とほほ笑んでいます。
狭いけれど楽しいわが家…そう言っているようにも思えます^^
子どもたちにとって、日中どんな厳しいことがあっても、帰る家がほっとする場所であってほしいと願います。
そしてどんなドタバタ劇があっても、無事にお布団の中で眠りこけている子どもの顔を見ることほど、安心できることは、親にとってもまた、他にはない安寧なのだと思います。
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