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★『ウエズレーの国』ポール・フライシュマン

子どものみなさんへ──夏休みは、空の碧さと、海の深さ、そしてどこまでも続く満天の自由を知るだけでいい!

子どものみなさん! 夏休み楽しんでいますか?
コロナ禍の中、思うように行動できない毎日は、選択肢・選択権を多く持たない子どものみなさんにとっては、文字通り、とても息苦しい日々かもしれません。

ただ、今までしていたことが、たとえできなくなっても、夏休み、という学校中心の時間の流れから少し離れた日々は、きっと、まだ知らない何かを、自分の中に発見できる、そんな自由と可能性に満ちた時間なのだと思います。

この絵本の主人公、ウエズレーも、新しい自分を発見し、新しい世界を自分の手で作り出す、そんな夏休みを満喫した男の子です。

『ウエズレーの国』ポール・フライシュマン

ウエズレーは元々際立った個性をもった男の子ですが、それだけに、学校でも地域でも「浮いた」存在です。しかし彼は、それで特別困っている様子も、傷ついている様子もありません。少なくとも表面に見えている限りは、彼は自分のスタンスをもった男の子です。

ウエズレーの両親も、息子のそんな様子を見ても、特別に干渉することも、心配することもありません。

「いまにきっと、やくだつさ」

思えばこれがウエズレーにとっても、魔法の言葉だったのかもしれません。

夏休みが近づいたある日、ウエズレーはそんなお父さんの「魔法の言葉」を聞いて、突然、自由研究のテーマがひらめきます。それは、

「じぶんだけの作物をそだてて、じぶんだけの文明をつくるんだ!」

という企画です。
思い立ったら、即、行動! まず、ウエズレーがとった行動は。。。

お話なので、ラッキーな偶然もあり、現実の流れより、ずっと早い時が流れます。

しかし、一人の男の子が自由な発想で、作物を育て、それを基に必要なものを自ら作り、自分が心から憩える自分の国「ウエズランディア」を立ち上げ、そしてそこはやがて彼一人の世界ではなく、多くの友だちとシェアできる場所になります。

上手くいきすぎ…と感じるとすれば、それは大人の感じ方なのかもしれませんね。

穿った見方をすれば、このお話は、文字通り、ウエズレーの心の中で展開された、彼の想像によって創造された「物語」なのかもしれません。

いずれにしても、一人の男の子の、ひと夏の創造(想像)を、どう評価するのか、という視点ではなく、ウエズレーの両親のように、ただ子どもの幸せそうな顔を見ることができることに、心から幸せを感じられれば、それでもう他に、望むことなど無いはずです。

この絵本は、このように、子どもの中にある自由な発想の展開に驚き、親子で一緒に楽しめる作品ですが、実のところ、私がこの絵本に惹かれたのは、
もっと単純なことでした。

それは…この絵本の表紙に描かれた空の碧さです。

個人的な思い出の中の夏休みは、とにかく、どこまでも深く碧い空に、真っ白な雲が浮かび、一日中、海で泳いで、夜は星を見ながら眠る、そんな自由で夢のような、昭和の夏休みです^^

今思えば何の有用性も、成長もない時間だったかもしれませんが、失敗もたくさんあったけれど、とても幸せな記憶です。

子どもたちには、夏休みは、空の碧さと海の深さを知り、そして、どこまでも続く満天の自由の感覚を、身体全体、心いっぱいに感じてくれるだけいい!

そんなふうに思うのです。

この絵本で描かれた空の碧さは、そんな楽しい時間、自由の予感を感じさせてくれる碧さでした。

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