★『三月ひなのつき』──石井桃子
忘れていた大切な風景を思い出す。桃の季節がくるたびに。
子どものころに出会った「もの」に込められた意味というものは、私たちが感じている以上に日々の生活すべてに大きな影響を与え続けているのかもしれない。
「もの」は所詮は「もの」でしかない、という考え方もあるだろうし、「もの」の価値イコール価格という感覚に私たちはあまりにも慣れすぎている。
大切なものを手に入れるときでさえ、まず価格から決めていくという手順は、合理的かつ仕方のないこととして、私たちの生活習慣になり切っている