物語の後半に入り、おはなしは抽象的な話題が主体となってゆきます。
前の記事を読んでいない方はまずそちらを参照してください。
① ② ③ ④
おはなしはここで終わっています。
この作品は、単体でも非常に豊かな内容を持つものですが、「君たちはどう生きるか」の解釈をすすめる手がかりとしても非常に重要な作品です。
「君たち」と比較した場合、テーマとして何が残され、
何が削ぎ落とされているのかという事。
そこから「君たち」で本当に言いたかったのが何なのかをあぶり出せます。
そして「星空」において繰り返し描かれている<ふしぎな体験>について。
正月に<おとうさん>に連れ出されて見上げた冬の星空の体験と類似した描写が、「星空」には引用しなかった箇所を含め何箇所かあります。
いずれも、無限とも感じられる広大な時間という観測点から世界を見つめるという点でそれらの描写は一致しています。
こうしたものの見方は「水月観」と呼んでよいでしょう。水面に映る儚くもおぼろげな月を眺め愛でるように、世界をみつめるその見方という程度の意味です。
「星空」を要約する記事は今回でおしまいとしますが、次回からはこの「水月観」をテーマに「君たちはどう生きるか」を読み解いてゆく記事を書いてゆきたいとおもいます。
なぜなら、「君たち」の第一章の「へんな経験」とはこうした「水月観」を契機にした経験に他ならないからです。