岩波文庫版「君たちはどう生きるか」の巻末には、吉野源三郎自身が書いた「作品について」という後書きが付されています。
その中につぎの一文があります。
おちゃめな書き方ですよね。
すっとぼけつつ、仄めかしています。
実は「別のかきよう」で書かれた作品が「作品について」が書かれた時点には既に存在していました。
それがこの作品↓
現在確認取れている限りでは、この「星空」は1948年が最も古い版で、一方「作品について」は1967年が最も古い。「星空」→「作品」の順。
どうしてこれが「書き直された『君たちはどう生きるか』」であると言い切るのかといえば、それは実際にこの作品を読んでみればわかって頂けると思います。作品内容的に「君たちはどう生きるか」の内容と様々なところでリンクしているのが明瞭にわかるからです。
それに、「君たち」読者ならば誰でも、この作品が「君たち」の7章「石段の思い出」と同じモチーフを用いて描かれていることに容易に同意して頂けると思います。
物語は「おじさん」が「純一」君に書いた手紙の体裁をとっています。
(「君たち」の主人公コペル君の本名は「潤一」)
お話のなかには「主観をまじえず客観的にみる」という言葉とともに、ずばりコペルニクスへの言及も。
このように、「君たちはどう生きるか」(と「作品について」)には様々な仕掛けと仄めかしがあります。多くの「君たち」読者さんがこうした仕掛けに気が付き、その謎を自力で解いていってくれたら、と願ってやみません。
「星空はなにを教えたか」は「君たち」との関連性を別にしても、それ自体大変すばらしい作品ですので、ぜひ多くの人に知ってもらいたいです。
残念ながら、現在この本は古本を手に入れるか、図書館で借りるかしなければ読むことはできないと思う。ジブリによる映画化をきっかけに復刊してくれることを強く願います。
次回はこの「星空はなにを教えたか」のあらすじを書いてゆここうと想います。
以下は、ずっとあとになってからの書き足しになります。
実は、この「星空」については、池上彰さんも謎掛けの形で指摘していることに気が付きました。マガジンハウス版『君たちはどう生きるか』で、池上彰さんは「前書き」を書いておられますが、それが謎かけになっていたんですね。
『私たちはどう生きるか』という戦後に出版された本のシリーズがかつて存在していて、その第一巻に「星空は何を教えたのか」が収められています。これを指し示したかったのでしょうね。
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