「虎に翼」の寅子はある意味恵まれているのか?バリバリ働きたいワーキングマザーが目指す理想とは?今話題のトラつばをシングルマザーが見て

当方は旧帝大を卒業後に外資ITで総合職として働くシングルマザーである。特に出世はしていないが順調に昇給はしており、一般的にはバリバリ働いている部類だとは思う。(バリキャリを名乗るほどキャリア構築に成功はしていない)
そんな私だが、朝、小学校に行く息子を送り出してから、もしくは子どもが寝てから、朝ドラ「虎に翼」を見るのが日課となっている。
最近の「裁判官編」でのワーキングマザーとしての寅子にモヤモヤしているので、今日は思い切ってnoteを書いてみることにした。

~ここからしばらくはドラマ前半までの感想です、飛ばして大丈夫です ~
寅子の女学生時代から結婚、妊娠までは非常に共感できる部分が多く、夢中になって見ていた。女子部の友人たちそれぞれの抱える事情、特に梅子の葛藤には泣けた。「お母さんのおむすびが一番おいしい」という梅子の息子のセリフとその後の梅子の複雑な笑顔は、今思い出しても涙が出てくる。
寅子が妊娠後、仕事量の調整ができずに退職を選ぶあたりは、時代の苦労を感じた。0か100かしか選択肢がないのか・・・と。(同じ感想はあさイチのアナウンサーも言っていた)
今の時代なら、時短にするとか、休職するとか、他にも選択肢はあるのに。寅子がやむなく退職し、同級生であり同僚でもあるよねと分かりあえずに決裂していった様子をものすごくもどかしく感じた。
寅子が仕事を辞めて、平穏に家事をやる時間での「地獄の外には平和があった」的な描写(正確な文言は忘れてしまった)には非常に共感できるものがあった。私自身、日々、息切れしながら仕事と家事と育児をまわしており、自分も仕事を辞めて家のことだけをやりたいと思うことが何度もあるので(現在進行系)、 寅子の挫折感と安堵感が入り混じった複雑な思いが自分のことのように感じられた。
戦中の話は泣いてしまうエピソードが満載だった。出征前の優三のやさしさ、直道の死、花江の涙、優三の死を隠した直言。本当に辛い時代だったと思う。現代は現代で色々と大変なこともあるけれど、戦時とは比べ物にならないほど恵まれていると改めて感じた。自分がひもじい思いをすることもなく、子どもにもひもじい思いをさせずに、清潔で安心した環境を与えられていることは、どんなに幸せなことかと感じる。特に昨今の世界情勢では現在でも戦争や紛争の影響を受けている子どもたちがいるので、日本の平和がありがたい。
~ここまで飛ばして良いです~

少し本題から遠回りしてしまったが、タイトルで言いたかったことに戻そう。
ドラマの中で、寅子は女性初の弁護士、裁判官として、子どもを育てながらキャリアを確立していった存在として描かれている。その周辺では、キャリアを諦めざるを得なかった多くの女性達のそれぞれ違う立場も描かれている。
しかし、ドラマの展開が「裁判官編」になってからは疑問が多い。
どうやら寅子のキャリア構築は、「子育てをする女性としてキャリア構築をした」というより、「女性が男性のロールを得た」という方向性のようだ。

裁判官編での寅子は、夫を失くしたいわゆるシングルマザーの身である。
だが、家庭のことはほぼせず、自分の時間やエネルギーをほぼ仕事に全振りできていて、ある意味幸せだな、と、同じシングルマザーの身で思う。

寅子は幼子がいる身だが、家事と育児は実母のはると義姉の花江に任せきりで、仕事をして帰ったらご飯を作ってくれている母と義姉がいる。子どももグズったりして手を煩わせることがない。
もちろん寅子も家事の手伝いはするが。あくまで「手伝い」だ。
他にも、上司の多岐川から急に夜7時に来いと呼び出されてもすんなり行ける、とか。
前日に全国出張を言い渡されても急に出張できる、とか。
これは、現代でバリバリ働くワーキングマザーから見てもかなり特殊な状況に思う。たとえシングルマザーでなくても、共働き世帯でも、急な呼び出しや急な出張に応じることができるワーキングマザーはかなり少ないだろう。

いわゆる「外で働いて稼いでくる存在」と「家事育児を引き受け家庭を支える存在」という昔からの男性と女性の構図が、そのまま、寅子と、はる・花江なのだ。

私たち、仕事をしたい部類の女性が目指す構図はこれなのか?昔ながらの「外で稼いでくる男性」に置きかわりたいのか?
バリバリ働くために、実家から母を呼び寄せるか、専業主夫もしくは家事を主体となってやってくれるパートナーを探すか、家事育児をアウトソースしまくるしかないのか?
いや、それだけではないはずだ。

現在のワーキングマザーの実態として、
・仕事は定時で終わらせる。終わってなくても無理やり切り上げる。
・定時で終わらせたとしても、子どもを迎えに行き、夕飯を食べさせ始められるのは19時頃。食べさせ、お風呂に入れ、寝かしつけを21時~半頃までに終わらせなければならない。そして、夜のうち、もしくは早朝に、洗濯などの家事をしなければならない。学校給食がなくお弁当の用意が必要なら、その準備もしなければならない。
・家事はアウトソースもできるがごく一部。100% 外注は無理。作り置きを頼んだとして、少しは楽になるが、配膳し、食べさせて、片付けるまではこちらがやらなければならない。片付けの時間まで家事代行の方にいてもらえるならだいぶ楽だが、コストはかかる。その点、親やパートナーに手伝ってもらうと、一緒に食事もしながら片付けまで分担できるからめちゃくちゃ楽ではあるが、親がいつまで元気で頼れるかは分からない。そもそも遠方だとたまにしかお願いできない。パートナーも子どもの食事の時間に帰って来れるような人はなかなか珍しいのではないか。
・育児のアウトソースもやはり部分的。保育園や学校やシッターさんに夕方までは見てもらえても、子どもとのコミュニケーションの時間や、お風呂、寝かしつけ、学校・学童・習い事などの全体的な内容の把握とタスクの確認は絶対に必要。
・だいたいの子どもは突然病気になる。そして自分も毎日ギリギリでこなしているので疲労やストレスで免疫が低下しているのか、体調を崩しがち。体調を崩しても家事はあるので休むことに専念できず、治りも遅い。

このような状態での理想は、
・就業時間がフレックスで、子や自分の突発的な体調不良でも休めるホワイトな職場
・パートナーと家事育児の分担ができる
・パートナーも家事育児に関与できるホワイトな職場
という状況だ。

寅子のように、上司に突然呼び出されて夜に出かけてしまうようなパートナーでは、ワンオペでの家事育児が当たり前となり、なかなか困ったことになるだろう。

要は、男性も女性も、家族や自分のことをケアできる柔軟な働き方ができることが理想なのだ。

もちろん、寅子のように、家庭を放り出して男性的なロールをこなしていった先人たちのおかげで女性のキャリアの道が開かれてきたのは分かっている。

しかし、今は、もっと、男性も女性も柔軟に働ける環境が理想なのではなかろうか。

(警察や消防、医療関係者、インフラ維持の担当など、突然のコールが当たり前の職種はやはり大変だと思う。その方々とその周りのサポートのおかげで、我々の生活の安心が成り立っていることは本当にありがたい。これらの職種のご家庭は、女性が専業主婦か、もしくは親のサポートを得ているのだろうか。周りにあまりいないので分からない)

さて、今日のトラつばでは、寅子の母・はるが倒れるところで話が終わった。はるは大丈夫なのか。はるの看病とはるの分の家事は誰がするのか。寅子なのか、花江なのか。きっと花江なんだろうが、明日からもトラつばから目が離せないのである。

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