旅行者行動の心理学(佐々木 土師二 著)(関西大学出版部 2000年)
ツーリズムは人間行動であり複合科学的な側面
用語
・トラベラー(Traveler): 上位概念、一般旅行者
・ツーリスト(Tourist): 下位概念、観光旅行者
旅行者行動の心理学的側面
旅行者モチベーションの分類
目的地の魅力的側面
旅行モチベーション構造の分析
・因子分析による旅行ライフスタイルの6因子
1:文化的関心
2:快適性(リラックス)
3:親しみ(利便性、同じ言葉)
4:活動生
5:オピニオンリーダーシップ(自己計画)
6:知識探究
・クラスター分析による分類
第1クラスター:家族旅行者(家族と一緒に過ごす)
第2クラスター:活動的休養者(精神的・知的に豊かになる)
第3クラスター:高齢者(歴史的風景を訪れる)
・新奇性(新しいことへの刺激)
旅行者の新奇性を知ることが目的地選択の予測に役立つ。新奇的環境に対する欲求は他の旅行動機と相互作用する。(他の動機と目的地がどの程度適合するかにも影響される)
旅行者モチベーションの一般的枠組み(マスローの欲求階層)
1-1:生理的要素
外部指向:新奇的な状況への欲求
内部指向:食べる、飲む、リラックスなど
1-2:安全と安心
外部指向:他人の安全への気遣い
内部指向:自分の安全による行動
1-3:愛と所属
外部指向:他人と一緒にいたい、所属したいという欲求に影響する行動
内部指向:愛すること。人間関係を維持し強化する
1-4:自尊
外部指向:旅行の誘因力や権威に影響される行動
内部指向:技能の発達(例スキー)など内的に影響を受けた行動
1-5:自己実現
自分自身を成長させたいなどの欲求によって動機づけられた行動
上記は、Fodness, 1994の因子分析や多次元尺度構成法の結果によっても類似傾向が見られ証明された。
旅行者モチベーションの2側面
旅行目的地の魅力要因
目的地属性
旅行者の意思決定メカニズム
目的地選択の2段階の中で初めは促進的態度が強く「満足の最適化」を求めているが、選択肢が狭くなり決定を求められる段階では「リスク回避」の姿勢が強くなる。(Crompton, 1992)
定常的行動場面(Behavior setting)
場所×時間×定常的行動パターンの3要素。
流れ(動線)はその場所・地域の空間的構造の特徴や歪みを明らかにでき。その魅力要素を物語り来訪者の関心などを推しはかる素材になりうる。
訪問地にはその旅行者によって行われる典型的な行動がある。「〇〇があるところ」という固定的イメージで見られることが多く、旅行者はそのイメージに惹かれて訪問することが多く重要なテーマとなる。
旅行目的地の選択が訪問地内の経験につながる場合もあれば、訪問地の空間認知を経て間接的につながる場合もある。
旅行経験の評価
旅行者行動における評価は、
・個別的印象か総括的印象か
・旅行の途中か終了後か
の組み合わせで考えられる。
本物性
現代人は自分が安住している非本物的な環境から遠ざかり、どこか別の時代、場所を求めて探索の旅に出る。バックリージョンだと思われるところが実は旅行者を招き寄せるためにセットアップされたフロントリージョンであるということもありえる。
フロントから始まりバックで終わる連続的な形も想定される。
本物性欲求が強い旅行者は、演出的なものに不満足を感じる。
本物の経験の特徴
・地元の人による
・個人的な親密さ
・現実世界で起きているまま
・普通では近づきにくい
本物ではない経験の特徴
・旅行者サービスを仕事をしている人による
・職務的サービスとして行き届いている配慮
・人為的に設計
・誰でも近づくことができる
満足の成立プロセス
旅行者の満足の成立は、旅行前の「期待」が訪問地内や過程での実際の「経験」としてどれだけ実現されたかということが評価にあわられる
旅行者行動の類型化
クラスター分析(インディアナ州立公園の来訪者)
1知識獲得型:広い範囲から情報を集め、家族中心の休暇を好む
2経費意識型:教育や歴史などに興味がなく、集団での旅行は好まない
3計画万全型:あちこち移動せずにリラックスすることを求める
クラスター分析(フロリダ公立案内センターの自動車旅行客)
1退職者、学歴が高い
2子供のいない世帯、学歴が最も高い。レストランで出費する
3子供がいる世帯、旅行の計画が短い
4子供がいる世帯で学歴が低い。娯楽や土産の出費が多い
5ティーンエイジャー
クラスター分析(米国、ドイツ、英国、日本の4000データ)
1冒険派:自信が強く新しい活動や異文化を好む。男性が多い。
2心配派:意思決定力に自信がなく、国内旅行が多い。女性高齢者
3夢想派:冒険よりもリラックスを好む、50歳以上の女性が多い
4節約派:所得は中位で教育レベルは低め。
5耽溺派:良いサービスには出費し所得が高い。
商品としての旅行
コアサービス:(航空会社の場合)出発から目的地までの飛行
周辺的サービス:機内食、チェックイン、スタッフ対応など
旅行商品は、単一ではなく出発してから移動、宿泊、お土産など複数
上記のエコツーリズムは、資源、旅行産業、地域社会、旅行者という4者の相互利益のバランスを表しており、単に旅行者(需要側)だけでなく供給側の視点が含まれている点が評価されている。
エコツーリズムの細分化として、
・自然に対する関心度(ハード(専門的)〜ソフト(一般))
・身体的努力の程度(ハード〜ソフト)
SERVQUAL尺度では、サービスの質を数値化するために、知覚スコアと期待スコアの差分をとる。
旅行商品のライフサイクル
商品というからには、旅行商品にも導入、成長、成熟、飽和、減衰を辿る
旅行行動の枠組みの一般化