見出し画像

Thinking, Fast and Slow(ファスト&スロー)下

Thinking, Fast and Slow ファスト&スロー(下)
あなたの意思はどのように決まるか? (ダニエル・カーネマン 著)

エキスパートの直感
直感はどのように蓄積されるのか。
・恐怖や危険な体験や言葉は学習される。
・連想マシンは疑いを押さえつけるようになっている
・根拠のない直感に自信過剰になりがち

直感スキルの習得(例:チェスプレイヤーなど)
・規則的な環境であること
・規則的な環境で学ぶことができること
・システム2の前にシステム1が学習して判断可能

予測アプローチ
1. 内部情報に基づくアプローチ(自分の経験から探そうとする。自分達が見たものが全て)
2. 外部情報に基づくアプローチ(過去の類似のケースから探そうとする。何か基準から予測する)。

外部情報が正しいわけではなく、総合的に判断する必要がある

自信過剰
自分は他人よりも優れていると感じている。(他社の経営者よりも自社で買収して自社で経営した方がうまくいくと信じている)

意識決定についての楽観性
・楽観主義のメリットは失敗しても挫けない
・成功は自分のおかげ、失敗は他人のせい(ある程度は学習できる)
・自信過剰からくる楽観主義は成功につながる(直感が常に正しいわけではないのだけれど)
・団体において、懐疑的な見方が排除されると団体ごと自信過剰に陥る(不都合な要因を排除している)

心理的に感じる強さと物理的な刺激の強さの関係
・お金の欲しさの度合い(心理)とお金の量(物理)
・富の感じ方は、対数関数

「期待値」
・A: 100ドルもらう確率80%、10ドルもらう確率が20%
期待値=100×0.8+10×0.2= 82ドル
・B: 80ドルを無条件でもらう(期待値80ドル)

本来はAのはずだが、心理的にはBの確実な方を選ぶ。ベルヌーイの観察によると、リスク回避の心理が働く。

プロスペクト理論
人の判断は、不確実性がある判断のとき、条件や状況によって、合理的な価値判断ができない場合があるという理論

C:現在の富に上乗せして1000ドルもらった上で、
 C-1:50%の確率で1000ドルもらう。
 C-2:確実に500ドルをもらう

D:現在の富に上乗せして2000ドルもらった上で、
 D-1:50%の確率で1000ドル失う。
 D-2:確実に500ドルを失う

CとDは全く同じ選択肢になっている。しかし、直感に従うとCではC-2確実な方を選ぶ、DではD-1のギャンブルを選ぶ。
(参照点:Cの場合は1000ドルが参照点になり、Dの場合は2000ドルが参照点になる。)

ベルヌーイの効用理論
・富の状態ではなく、富の変化によって効用を感じる
・プロスペクト理論は参照点を知らなければならない

リスク回避
・損失の2倍の利得が見込めないとギャンブルには乗らない
・人々は確率をそのまま鵜呑みにしていない。

保有効果
・損失回避性(選択には参照点を好む)
・しばらく保有していると判断が変わる
・どっちでも良いと言っていた人が、いったん保有した後に交換してほしいと依頼すると嫌がる

貧しい人は保有効果が働かない(必要にも関わらず、常に損をしている状態なため。常に支出が苦痛となる)

選択(滅多に起きない出来事)
・確率は極めて少ないが見返りがかなり大きい場合(システム1によって過剰に反応してしまう。宝くじなど)
・システム1はスイッチオフできない。

リスクポリシー
小さな損失を味わうと損失回避性に影響されるが、意図的にその情報を遮断することで(長期間保有)総合的に結果は良い。リスクポリシーを決めておくとはるかに良い選択ができる。

メンタルアカウンティング
・無意識に心理的な損得を計算している。
・友達からもらったチケットと自分で買ったチケットに心理的な価値が異なる
・ギャンブルで勝った金額の方が、普通にもらうよりも嬉しい。
・株は売らないことがデフォルトになっている。

選択(選好の逆転)
AとBを個別に単独に選択する場合と、AとBの並列されたものをどちらかを選ぶ場合で結果が異なる。

費用は損失ではない
現金払いとクレジット払いで料金を変えるかどうか。クレジット割り増しではなく。現金割引と表示した(金額が同じでも心理的には同じではない)。
「もらう」はギャンブルであり「失う」はリスク回避が働きやすいという影響。

ピークエンドの法則
ある事柄に対して記憶や印象に残っているのは感情が最も高ぶったピークの出来事と、その終わりごろの出来事だけで、それらが全体的な影響を決定づけるという法則。

最後に
人の直感は概ね間違ってはいない。しかし多くの誤認が発生している。
システム2は怠け者で、システム1のいい加減な判断がそのまま通る。(誤認や自信過剰など)。システム1はあまり学習しない。ゆっくりと捉えてシステム2に応援を求めるようにする。
個人よりも組織の方が優れている。フローや手順が整っており、直感に頼らないようになっている強み。(組織は意思決定や判断の工場)